神戸市医師会公開講座 くらしと健康 66

定期健康診断ではわからない胃がん・大腸がん
オプションで検査を受けて早期発見を

─定期健康診断ではどのような検査をしますか。
楠瀬 働く人の健康を守るために、従業員が10人以上の事業所では年に1回または2回の定期健康診断と、その結果の報告が法律により義務づけられています。定期健康診断での検査項目は身長・体重・視力・聴力・腹囲の検査、胸部X線検査、血圧の測定、血液検査(貧血・肝機能・血中脂質・血糖値の検査)、心電図検査、尿検査です。定期健康診断は高脂血症や心疾患、糖尿病などの発見には役に立ちますが、この検査項目だけでは日本人に最も多いがんである胃がんや、近年増加傾向にある大腸がんを早期発見することは絶対にできません。しかし、胃がんや大腸がんの検診はオプションで受けることができます。受診されることを強くおすすめします。
─胃がん検診について教えてください。
楠瀬 胃がんを患う人は約10万8千人で、部位別がん罹患者数でトップです。また、胃がんで亡くなる方の数は年間に5万人以上で、部位別死亡者数で2位という多さです。胃がんは発見が遅れるほど治癒が難しいので、早期に見つけることが命を救うことになります。胃の検査はX線検査のほか、ABC検査があります。レントゲン検査ではバリウムを飲んで胃をレントゲンで数枚(通常7~8枚)撮影し、その画像により胃の異常を診断します。ABC検査とは採血をおこない、ピロリ菌抗体とペプシノゲンの検査で胃がんの発症リスクを判定するものです。ピロリ菌に感染していると胃がんになる可能性が高くなることがわかっています。ペプシノゲンは胃で働くタンパク質分解酵素のペプシンをつくる物質で、数値によって胃粘膜の健康度や胃の荒れ具合が推測できます。ピロリ菌・ペプシノゲンいずれか、あるいは両方が陽性と判定された場合、胃内視鏡(胃カメラ)による再検査が必要となります。ある統計によれば、胃がん検診を1万人受けたとすると、X線やABC検査で異常ありと診断される人は980人、そのうち771名が胃内視鏡による二次検査を受けて、最終的に胃がんと診断されたのは12名でした(図1)。また、胃がん検診では胃がんはもちろん、それ以外にも胃ポリープ、胃かいよう、十二指腸かいようの早期発見にも結びつきます。
─大腸がん検診について教えてください。
楠瀬 大腸がんはがんの中で胃がんに続いて多いがんで、10万人以上の罹患者がいます。食の欧米化にともないこのところ増加傾向にあり、がんの部位別死亡者数では男性でトップ、女性では3位で、年間4万人以上の方が亡くなっていますが、早期に発見して治療すればほぼ治癒が可能なので、何よりも検診を受けることが大切です。大腸がんの検診は検便でおこない、便に血が混じっているかどうかを判定します。便の検査のほかにセルフチェックも重要です。生活習慣では「①野菜や果物をあまり食べない②肉類を良く食べる③お酒をよく飲む④肥満である⑤運動をあまりしない」、症状では「①便に血が混じることがある②下痢と便秘を繰り返す③便が残っていると感じることがある④お腹が張っていると感じることがある⑤便が細い」に該当するものがあれば要注意です。便の検査では痔ろうなどでも陽性反応が出ることもありますが、もし異常と判定された場合は念のため内視鏡検査や触診などの二次検査を受けましょう。大腸がんは大腸の中でも直腸が最も多く35%、次いでS字結腸が34%と肛門に近い部分で多く発生する傾向があります。ですので、触診による診断はがんの発見率を高めます。触診ではおしり穴に指を入れますので抵抗がある方も多いですが、大腸がんの発見には重要な診察ですので、嫌がらずに受けましょう。
─ほかにどのようながん検診がありますか。
楠瀬 肺がんについては、健康診断の胸部X線検査で検査しますが、異常がある場合は痰を調べる喀痰検査を受けることになります。乳がん検診はオプションでマンモグラフィーによる検査を受けることができます。がんは生命にかかわる重大な病気です。どのようながんでも早期発見・早期治療が大切ですので、健康診断の際には積極的にがん検診も受けましょう。また、検診で少しでも陽性の判定が出たら、すぐに専門医による精密な検査を受けるようにしましょう。

図1)胃がん検診受診者1万人あたりの罹患者

図1)胃がん検診受診者1万人あたりの罹患者

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楠瀬 直孝 先生

神戸市医師会理事
楠瀬外科医院院長


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目次 2013年3月号