名谷にある神戸大学大学院保健学研究科のキャンパス

専門知識と技能でチーム医療をリード

神戸大学教授
大学院保健学研究科長 
三木 明徳さん

医師と協力してチーム医療を支える医療専門職。その育成に努める保健学研究科の三木先生に、進化する医学と保健学、他学部との協力・連携などについてお話しいただいた。

医学と保健学が担う役割は違う

 本来、医学と保健学の担当領域は違います。前者には患者さんの診断や治療、病因の解明など、後者には健康の維持・増進、病気の予防、患者さんのケア、社会復帰支援などの役目があります。保健学のアイデンティティーをはっきりさせるために、平成20年に大学院は医学系研究科から独立して保健学研究科になりました。

時代の要請「チーム医療の確立」を目指す

 根底には「チーム医療」という時代の要請があります。昔は「お医者さんを看護婦さんが補助する」という医療で十分でした。しかし、どんどん医療が進化を続ける現在、医師だけで医療はできません。看護師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、薬剤師などが、医師のイコールパートナーとして協働するチーム医療が求められています。互いに役割を理解し、ディスカッションを重ねた上で、責任と誇りを持ってそれぞれが役割を果たさなければならないチーム医療では、医療専門職者にも、幅広い知識と高度な技能が求められます。
 超高齢社会に突入した日本では、地域や在宅における保健・医療の整備と充実が求められています。ここでは医師ではなく、看護師などの医療専門職者が中心となって活動しなければなりません。これも時代の要請といえるでしょう。

医療専門職とは?

 神戸大学医学部保健学科には看護学、検査技術科学、理学療法学、作業療法学という4つの専攻があります。看護師や臨床検査技師は皆さんもよくご存知でしょう。理学療法士と作業療法士の違いは・・・。どちらも身体的、精神的障がいを持つ方の社会復帰をお手伝いします。そのうち、理学療法は運動療法や、電気・磁気刺激などを使った物理療法で運動機能を回復させます。また、呼吸器や循環器などの内臓に病気をもつ方にも様々な療法を行います。一方、作業療法では、手芸や陶芸などの作業を通して運動機能を回復させますし、精神的な障がいを持つ方にも社会復帰に向けたお手伝いをします。音楽療法や園芸療法もその一つです。

地域との連携で暮らしを守る

 保健学研究科教授の高田哲先生がセンター長を務める「地域連携センター」が核となり、私たちは教育や研究を通して、地域の皆さんの健康や環境づくりを応援しています。兵庫県や神戸市の教育委員会と連携して、就学前の発達障がいを持つ子どもとその家族への支援、ハイリスク児を持つ親御さんへの育児指導などを通して、障がいを持つ子どもたちが暮らしやすい社会づくりをお手伝いしています。保健学研究科では国際保健にも力を入れていますが、海外で保健活動を行うだけが国際保健ではありません。日本に住む外国人に対しても様々な医療支援を行っています。この他にも、市民講座やセミナーを開いて、地域の皆さんと共に健康な街づくりを行っています。

他研究科との協力・連携は不可欠

 神戸大学の医学研究科や医学部附属病院との連携は当然ですが、それ以外の研究科とも連携しています。例えば、発展途上国から保健学に関する協力要請が多く寄せられています。私たちは保健・医療の知識や技能は持っていますが、相手国政府との関係構築や制度などについては素人です。ですから、そのプロである「国際協力研究科」との連携なしではこれらの要請に応えることができません。工学系の「都市安全研究センター」とも災害医療や災害保健の領域で連携しています。また、ポーアイにある「統合研究拠点」ではいくつかの融合プログラムが走っていますが、そのうち、「システム情報学研究科」と連携して、独居老人の監視システムなどの開発に取り組んでいます。さらに福祉機器の開発には「工学研究科」の支援が不可欠ですし、「連携創造本部」を通して民間企業との協働も行っています。

学生時代の仲間は人生の宝物

 もちろん他大学とも連携しています。学部1年次では、看護、検査、理学・作業療法の学生がチームを組み、病院で実際の仕事や他職種の仕事に触れる「初期体験実習」を行っています。最初は保健学科だけで始めましたが、これに医学部医学科が加わり、さらに神戸薬科大学も仲間入りしました。この初期体験実習は学生がチーム医療を理解する上で大切な場です。それだけでなく、実習の打ち上げは全員が揃ってバーベキューで盛り上がり、交流を深めます。学生時代の仲間は一生の宝物です。チーム医療を活かせるかどうかは、職種を超えて、どれだけ多くの仲間を持てるかにかかっています。

趣味は楽しく、人生の糧にもなる

 大学に入学した頃、たまたま見つけた高神覚昇さんの「般若心経講義」という文庫本を読んで、「仏教ってこんなに面白いのか」と思い、たくさんの仏教解説書を読み漁りました。そして大学の6年間で、京都や奈良の主なお寺はほとんどすべて回りました。当時、京都にある仁和寺の門跡さんが父の従兄で、色々な話もしてくれました。私のお師匠さんである溝口史郎先生(現神戸学院大学理事長)とも一緒にあちこち巡りましたよ。その後、2年間ドイツに留学したときに、日本文化やその基になる仏教について質問され、持参していたお寺や仏像の写真を見せながら、下手なドイツ語で説明しました。その時、日本人なんだから日本の文化や歴史をちゃんと知っておくべきだと痛感しました。
 今は香川県の実家で畑仕事を楽しんでいます。最初学生たちは収穫だけを手伝い(?)ましたが、今では植え付けなども含めて年に数回やってきます。讃岐うどんツアーも兼ねて、参加者は毎回十人を超えます。中には子連れで来る社会人学生や卒業生もいます。これを「さぬき明徳塾」と呼んでいます。趣味は楽しくもあり、人生の糧にもなります。若い人達はいいですよ。一緒に遊んでくれるうちが花ですものね。

保健医療を担う教育・研究者や高度医療専門職者を育成する

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医療専門職者に必要な幅広い専門知識と高度な技能を学ぶ

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インドネシアの学生と地域医療について共に学ぶ

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「子どもの家」絵画交換プログラム

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20120706101

神戸大学教授 大学院保健学研究科長  三木 明徳さん

神戸大学教授
大学院保健学研究科長 
三木 明徳さん

三木 明徳

神戸大学教授
大学院保健学研究科長 
香川県三豊市出身。神戸大学医学部卒業。同大学院修了後、医学部解剖学第二講座を経て、1995年から医学部保健学科、2008年から大学院保健学研究科教授。2001年〜2007年まで医学部保健学科長。2011年より保健学研究科長。専門は解剖学。形態学をベースに理学療法で使う各種物理刺激が生体に及ぼす影響を研究している。


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目次 2012年7月号