ヨーロッパクルーズなど多数のツアーで人気のアドリア海。写真はギリシャ・サントリーニ島。

「心に届く旅」をお届けします

株式会社阪急交通社
代表取締役社長
生井 一郎さん

テレビCMや新聞広告でおなじみの旅のブランド「トラピックス」が好評の阪急交通社。メディア販売ではリピーターが約半数を占めるという。その人気の秘密はどこにあるのか。社長の生井一郎さんにお話を伺った。

価格を上回る内容を

─「価格競争より価値競争」へと提唱していますが、成果はいかがですか。
生井 2002年から価格競争より価値競争へという方針を打ち出しましたが、当時はまだまだ数の方が強い時代でしたのですぐにうまくはいきませんでした。でも、続けているうちに必ず質を重視するようになると言い続けてきて、現在では、価値の部分をちゃんとご提供できる体制に整ったと思います。今も昔も一番初めにお客さまの目を惹くのは、残念ながら価格です。しかし、今の時代は価格だけでは絶対に勝負できません。価格を見ながらそれに見合う内容、更にもっと上質の提案ができなければお客さまの支持をいただけない時代になりました。
─阪急交通社といえば「トラピックス」という方も多いと思いますが。
生井 「トラピックス」は発売から四半世紀の時をかけて、この春、海外旅行にご参加いただいたお客様の数が延べ一千万人を越えました。それだけのお客様にご利用いただいた訳ですから、相当な支持をいただいているのではないかと思います。
 また「トラピックス」は周遊型で、いろいろなところを観てまわる内容で、どちらかというと忙しい旅です。そこで、ゆとりを重視した「クリスタルハート」や個人旅行のニーズに応える「e-very」、お客様のあらゆるご要望に対応する「ロイヤルコレクション」、そして「阪神航空フレンドツアー」とさまざまな旅のブランドをご用意しています。また、私どもが得意とする旅行先はヨーロッパで、欧州方面への周遊旅行の送客数では国内ナンバーワンです。
─この頃はクルーズ船など、こだわりの旅が人気だそうですね。
生井 私も同世代ですが、団塊の世代の方々が今年で65歳くらいになり、やっと組織から離れて自分たちの好きなことをはじめ、その中に旅行が含まれているのではないかと思います。この世代の方々は、みなさんで同じ行動をとらないのです。私自身がそうですからよくわかります(笑)。多様化の時代ですね。でも自分が納得すれば、費用を惜しまないというこだわりの年代でもあります。この年代の層が厚いので、これからは旅行業界にとってプラスだとみています。ですから多様化に合わせた対策をとっていかなければいけない。「トラピックス」のような団体旅行の周遊型だけではなく、さまざまな目的をお持ちの、むしろ個人型とも言えるでしょう。そうなると旅行会社ももっと勉強していかなければならない、お客さまの心に響く旅の提案をできるよう、日頃から社員に言っております。

ヨーロッパ旅行とメディア販売の先駆者

─生井社長は昔、添乗員も経験されたそうですね。
生井 品の良い添乗員でしたよ(笑)。添乗員の経験は今に生きています。前述のとおり、私どもはヨーロッパ旅行がナンバーワンになったのですが、当初は敬遠されがちなオフシーズンに多くのお客様にご参加いただくこと。そしてヨーロッパ方面で日本一を目指すこと。この2つを追求する過程で試行錯誤を繰り返した結果「トラピックス」ができあがり、新聞などを活用したメディア販売を拡大したのです。ですからヨーロッパは阪急交通社のDNAとも言えます。
─新聞広告やインターネットにも力を入れていますが、そのメリットは何でしょう。
生井 スピードですね。新聞はダイレクトにお客様のもとに届きますので、一番効果が大きいですね。インターネット予約はいま全体の3割以上占めるようになりましたが、身近なので時代に合っていると思います。今後ももっと増えてくると思いますが、実際は新聞や会員向けの情報誌経由でネットに来ているお客さまも多いと思います。ですからクロスメディアが重要です。メディア販売を重視しているのは、お客様のニーズに対応してきた結果です。最初の数年は赤字でしたが、結果的に今は大黒柱に成長し、9割近くがメディア販売になりました。

時代を読む感性を

─競争相手もたくさんありますが、阪急交通社が選ばれる理由はどこにあるのでしょう。
生井 行き先はもちろん、食事や添乗員も含んだ内容にご満足いただき、またリピートしていただいているのでしょうね。私は常々、「お客様と目線が一緒でなければいけない」と言っています。そのためにも、長いタームで考えれば、一番は企業論理ではなく、お客様目線で物事をすべて考えることです。お客さまのおっしゃることや希望を理解して、できるだけツアーに反映していく。最大限それをおこなってまだご不満をいただくようでしたら、その部分を改善していくのです。たとえヒット商品でも同じような内容ではいけない、質をどんどんアップしていくのです。そうすれば満足度が向上していくと思います。
─これから阪急交通社をどのようにしていきたいですか。
生井 どこまでいっても常にお客さま目線で、お客さまに選ばれる会社でありたい。そのためには自分たちでいろいろ経験を積まないといけないと思います。社長がこうだからといって、社員が「その通りです」というのではダメですね。企業は常に新しい風を取り入れなければいけないのです。新入社員には「時代を読む感性を身につけて」とよく言います。時代の流れは速いですから、昨日と今日では言うことが違っても、それくらいでいいと思うのです。でも芯がブレてはいけません。そのバランスが大切ですね。
―ありがとうございました。これからも心に届く楽しいプランをお願いします。
インタビュー 本誌・森岡一孝

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美しい自然や市街地などがのこるクロアチアは憧れの観光地のひとつ。写真は世界遺産・ドブロヴニク旧市街。

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トラピックス」のヨーロッパツアーはやはり人気。写真はパリ・エッフェル塔。 

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兵庫県内13ヶ所の出発地がある「四国八十八ヵ所お遍路の旅」。うるう年の今年は「逆打ち」のお参りができるため特に人気。

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生井 一郎(なまい いちろう)さん

株式会社阪急交通社
代表取締役社長
1947年東京都出身。慶応義塾大学文学部卒。1971年株式会社阪急交通社に入社。2000年より取締役(旅行事業本部 西日本営業部長)、2008年に取締役副社長(代表)、2010年4月より取締役社長(代表)。


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目次 2012年7月号