桂 吉弥の今も青春 【其の二十六】

「ゴール」と「スクエア」と「ホームラン」

六月三日日曜日、埼玉スタジアムでのサッカーブラジルワールドカップ最終予選オマーン戦を応援。六万人超のサポーターが一体となった前半十一分に本田圭佑がゴールをゲット!私も周りのサポーターと飛び上がって大喜び。
サッカーの試合はいくらでも観戦している、ドイツのW杯も弾丸ツアーで見に行った。しかし最終予選はいまだ不参加。「他の試合と何が違うの、本戦を見に行ったことある人が何故予選を見に行くの?次の日も朝から仕事があるのに理解できへんわ」という家族の声。なるほど理屈だ。しかしサッカーW杯となれば違う、必ず予選は勝ち抜かなくてはいけない。チャンスは四年に一回。負ければ日本は八年間サッカーの国際舞台から消えることになる。この絶対に負けられない戦いが見たいのだ、次も試合があるさという余裕が微塵も感じられない真剣勝負を。
「ボールは丸い」というサッカー好きの人にはお馴染みの言葉がある。サッカーには絶対は無い。ボールはどちらに転ぶか分からない。強いチームでも負けることはあるという例えだ。本田のゴールが決まるまでのじりじりした感じ。もどかしさを打ち消すために手を叩き大声を出したり足踏みしたり。そんなサポーターの気持ちを背負ってイレブンが戦っていた。二点目が入ってほっとして、三点目で勝利を確信してやっと心から笑えた。「これが最終予選か、うんやっぱり行って良かった」と噛み締めながら深夜バスで大阪へ帰ってきた。
四日からは繁昌亭で「劇団スクエア」との三日間興行、私の落語と彼ら男四人のコントのコラボレーション。役者が繁昌亭の高座に上がるのは初めて、彼らはめちゃめちゃ緊張していた。自分たちに何ができるのかと真剣勝負のコントを二本、私もその気持ちに応えるような落語を二席。普段の繁昌亭とは違う気持ちで三日間を終えることが出来た。
私の師匠の頃は落語家と役者の交流は盛んだった、芝居の小屋で休演日に落語会をやらせてもらったり、役者が落語に挑戦したり。私達四十代の人間ももっと交わろうよという気持ちで私の大好きな劇団スクエアに声をかけたのだ。「やって良かったっすね」最終日の打ち上げは朝方まで。これからも広がりが出てくると思う。
八日金曜日、甲子園でオリックス戦を観戦。小学六年の息子はすっかりタイガースファンになって今では私より選手に詳しかったりする。試合開始からずっと弱い雨が降っていていつ中止と声がかかってもおかしくない状態。鳥谷のエラーで一点を取られ、攻撃では平野がバント失敗、走塁ミスと大ブレーキだった。雨の中ずっと我慢していたファンの前で金本智憲が決勝の逆転3ランを放った。
「まだ阪神の選手のホームラン見たことないねん」と息子。「もうアニキにホームラン打ってもらわんんと、風も今日はライト向きや」と私。このまま負けたら暴動が起きるのではないかという球場の雰囲気を目の覚めるような打球が切り裂いて行った。ファールかホームランか?審判の右手がぐるぐる廻る、大歓声。充実の一週間、私の声はかれました。

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KATSURA KICHIYA
桂 吉弥 かつら きちや

昭和46年2月25日生まれ
平成6年11月桂吉朝に入門
平成19年NHK連続テレビ小説
「ちりとてちん」徒然亭草原役で出演
現在のレギュラー番組
NHKテレビ「生活笑百科」
土曜(隔週) 12:15〜12:38
MBSテレビ「ちちんぷいぷい」
水曜 14:55〜17:44
ABCラジオ「とびだせ!夕刊探検隊」
月曜 19:00〜19:30
ABCラジオ「征平.吉弥の土曜も全開!」
土曜 10:00〜12:15
平成21年度兵庫県芸術奨励賞


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目次 2012年7月号