4月に完成予定の新工場

未来をみつめて一世紀

石原薬品株式会社
代表取締役社長
竹森 莞爾さん

 

自動車を始め、家電製品、携帯、パソコン…、私たちが日々使っているものの中に、必ずと言っていいほど石原薬品の製品が使われていることは、あまり知られていない。多くの人材と資金を研究開発に投入し、日本のものづくりを見えないところで支え続けている。

 

―卸問屋がメーカーとして新たにスタートするきっかけは、つやだし剤「ユニコン」だったのですか。
竹森 明治33年「石原永壽堂」として創業し、今年で113年目を迎えます。昭和28年、日本楽器製造株式会社(現ヤマハ株式会社)から家具のつや出し剤の開発を依頼され、完成したのが「ユニコン」です。これがメーカー企業に移行するきっかけでした。その後、同社のモーターバイク用として発売したものが、自動車用液状つや出し剤の原点です。
―事業としての「工業薬品」「自動車用品」「電子関連」。3つの分野のバランスは。
竹森 30年ほど前までは、ほぼ3等分でした。しかしここ15年ほどで電子部門の売り上げの伸びが顕著になり、現在は全売り上げの約7割を占めるまでに至っています。
―ニッチな市場で高いシェアを占めているのですね。
竹森 はんだめっきの中でも、スズはんだめっき液では市場シェアナンバーワンです。そのほかにも例えば、自動車の再塗装の際、局部の最終仕上げに使うコンパウンド材市場ではシェアトップを占めています。このように当社は、非常に狭い分野であっても、その中で高いシェアを占めるというビジネスを狙っていこうという企業です。
―研究開発の人材と予算が重要ですね。
竹森 当社の売り上げナンバーワン商品の開発を手掛けたのは15年以上前のことです。合金めっきも20年以上前に手掛けたものです。開発にはかなりの時間をかけなくては、売り上げには結びつきません。ですから常に新しい製品を求めて技術開発を続けていなくては成り立ちません。現在は、これからまだまだ伸びるだろうと考えられる電子関連分野に重点的に人材と予算を投入しています。
―技術進歩が非常に速い分野ですから大変ですね。
竹森 もちろんです。各メーカーさんとの協力がなければ、とても当社だけでは付いていけません。スズはんだめっきを開発した昭和38年当時から、当社は製品納入先の信頼を得てきました。従って、ユーザーさんから、「次はこんな製品開発をして欲しい」という依頼をいただき研究を始めます。また現在進めている、ナノ金属を用いた電子回路の形成のように独自の研究開発もあり、これも既に大手メーカーさんにサンプリングしています。ですから当社のビジネスの基本は研究開発なのです。
―私たちの目には直接触れることがない製品ですが、例えばどんなメーカーの製品に使われているのですか。
竹森 自動車メーカーですと、皆さんにはお馴染みのトヨタ、日産、三菱の車で使われています。カー用品専門店や小売店を通じて販売されているツヤ出し剤や消臭・除菌剤、塗装補修コンパウンド、洗浄剤ほか整備工場やガソリンスタンドなどで使われている製品もあります。総合電機メーカーさんでは、こちらも皆さんがよくご存じの日本のほとんどのメーカーさん、その他石油元売会社さんにも、直接、間接問わず製品を納入させていただいています。またアメリカのガラス製品メーカー・コーニング社製で、スペースシャトルに使われているセラミック素材を加工して電子部品用などに供給しています。色々あるのですが、いずれにしても当社の製品は一般ユーザーさんが日常、目にするものではないですね。
―大学や研究機関との共同研究や開発もありますか。
竹森 神戸市内の大学ほか、全国の大学とも共同研究はしていますが、これらは技術開発が目的ですからすぐに製品開発に結び付くものではないです。スズめっきや合金めっきは、共同研究の成果を当社で製品にしたものです。
―製造工場はどこですか。
竹森 滋賀県高島市に工場を置いています。2012年10月1日に第一期工事に着工した、神戸西区の新工場が今年4月に完成予定で楽しみです。
―新工場の役目は。
竹森 第一期新工場では、開発中のナノ金属の新しい製品を中心に扱います。更に第二期工場では、現在は滋賀工場だけで製造している製品も一部移して、リスク分散する予定です。
―今、話題のナノ金属ですが、それを使ってどんな製品を開発しているのですか。
竹森 従来はポリイミド樹脂に多くのプロセスを経て貼り付けていた電子回路を、既に当社で開発した導電性銅ナノインクを使って、フレキシブルな素材にプリントして作ろうというものです。今後は、ディスプレイ、半導体、LED照明、太陽電池など、色々な場面で利用が可能になると思います。
―海外拠点もありますか。
竹森 海外展開を促進するための拠点として上海、バンコクに駐在事務所を置いています。また、国内同様、現地でのアフターサービスの充実にもつなげてます。
―企業姿勢といえば…、経営理念の「三つの開発」とは。
竹森 「自己開発」「商品開発」「市場開発」の三つです。
―メーカー企業として商品と市場の開発はもっともですが、自己開発とは。
竹森 各々が努力して自身のスキルや人間性を高めなければ、いいものは生まれません。最も大切なことです。
―最後に、勢いを失いつつある日本のものづくりについて。どうすればいいとお考えですか。
竹森 かつては「オンリーワン」を目指せと言われました。しかし今は、「ワールドワン」しか通用しません。ワールドワンを目指すという思いを持って新しいものを、時間をかけて開発していかなくてはならないでしょうね。それが結果的に社会に貢献することになると思います。
―神戸発!ワールドワン企業に期待しています。
ありがとうございました。

神戸本社

神戸本社

滋賀工場

滋賀工場

昭和初期の「石原永壽堂」。創業以来変わらぬ場所で歴史を刻み続ける

昭和初期の「石原永壽堂」。創業以来変わらぬ場所で歴史を刻み続ける

銅ナノインクを用いて形成した回路の例

銅ナノインクを用いて形成した回路の例

電子部品の接合に用いられるめっき液を開発

電子部品の接合に用いられるめっき液を開発

20130103503

20130103301

竹森 莞爾(たけもり かんじ)

石原薬品株式会社
代表取締役社長

1945年生まれ。兵庫県出身。大阪経済大学経済学部卒業。1968年に石原薬品株式会社入社。1997年に代表取締役社長に就任、現在に至る。2010年より神戸商工会議所化学部会長を務める。趣味はゴルフ。


ページのトップへ

目次 2013年1月号