神戸市医師会公開講座 くらしと健康 58 

重篤化すると生命に関わる危険な熱中症 暑さを避けこまめな水分・塩分の補給を

─熱中症とはどのようなものですか。
 地球温暖化や都市部でのヒートアイランド現象により、近年、熱中症が増加しています。記録的な猛暑だった2010年には、国内で53,843人もの熱中症患者が救急搬送され、死者も1731人に達しました。高温多湿な環境下で、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温調整機能がうまく働かなかったりすることにより、体内に熱がたまり目まい、筋肉痛、こむら返り、大量発汗、吐き気、倦怠感などの症状が現れます。そのような状態の総称を熱中症といいます。重症になると意識障害やけいれんなどがおこり、生命に影響します。環境条件だけでなく、睡眠不足や体調不良、暑さに体が慣れていないなどの個人の体調により熱中症の発生が高まります。また、屋外だけでなく、室内や就寝中にも発生します。死亡例の半分以上は自覚症状をほとんど訴えていませんので注意が必要です。
─どのような方がかかりやすいのですか。
 暑い中でのスポーツ中や労働中の人のほか、近年は65歳以上の高齢者の熱中症が増えています。高齢者は暑さに対する感受性が鈍く、体温調節機能が落ちていて、体内の水分量が少ないのでかかりやすいのです。また、5歳以下の幼児、肥満の人、普段から運動をしていない人、暑さに慣れていない人、心臓病・腎臓病・糖尿病・下痢といった病気、睡眠不足など体調の悪い人も熱中症になりやすいので注意しましょう。
─具体的な症状と、対応を教えてください。
 脱水すると汗が出ませんので、汗をかかないからといって軽症だということはありません。熱中症の症状は、現場での応急処置で対応できる軽症をⅠ度、病院への搬送を必要とする中等症をⅡ度、入院・集中治療が必要な重症をⅢ度と、3段階にわけられています。Ⅰ度の症状は大量の発汗、めまい、失神、立ちくらみや、発汗に伴うナトリウム(塩分)の欠乏による筋肉痛やこむら返りがおこります。この場合、すぐに涼しい場所に移動させ、衣服をゆるめ、体を冷やし、水分や塩分を与えます。誰かが付き添って見守り、改善されない場合や悪化する時は病院への搬送が必要です。Ⅱ度は頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感などの症状があります。この場合、自分で水分や塩分をとれない場合は病院への搬送が必要です。Ⅲ度では意識障害、けいれん、手足の運動障害などの症状があり、呼びかけに応じない、体にガクガクとした引きつけをおこす、真っ直ぐ歩けないという状態です。さらに高体温なので体に触れると熱いのがわかります。軽症の熱中症だと思えても、糖尿病や高血圧の人は低血糖発作、心筋梗塞や脳梗塞などの症状と見分けがつきにくいので、疑わしい場合は、すぐに病院へ搬送してください。
─かかりやすい時期や時間帯はありますか。
 もちろん7~8月に多いですが、梅雨明けから猛暑になる時期は、体が暑さに慣れていないため特に多くなります。時間帯では、統計によれば午前10時頃、午後1~3時に多くみられます。ただし、夜中就寝中や夏以外でも熱中症になる可能性はあるので、常に注意しましょう。
─熱中症を予防するための対策を教えてください。
 まず暑さを避けること、それからこまめな水分・塩分の補給ですが、特に高齢者や障害者の方などはのどの渇きを感じなくても水分補給の必要があります。スポーツドリンクは糖分が多く、ナトリウム濃度が低いので、注意が必要です。経口補水液やみそ汁、スープなども利用すると便利です。睡眠不足などを避け体調の管理にも努めてください。室内や夜間でも注意が必要です。すだれなどで直射日光を遮り、換気して部屋に熱がこもらないようにしてください。高齢者は暑さを感じにくいので、温度計を用意すると良いでしょう。今年も節電が謳われていますが、無理にエアコンを使用しないのは危険です。扇風機を併用するなど上手に温度調節をしましょう。

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島 正彦 先生

神戸市医師会理事
ミナト診療所院長


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目次 2012年7月号