灘の酒どころ、伝統の味 甲南漬・本みりん

明治3年創業の老舗・高嶋酒類食品㈱。甲南漬や味醂など、長年培ってきた伝統の製法や新しい商品開発について高嶋常務にお話しいただいた。

―灘の酒どころにあって、酒粕を使って創業した経緯は?

高嶋 はっきりした年代は分からないのですが、昔から、造り酒屋さんから酒粕を仕入れて売るという、酒粕問屋で商売させていただいていたようです。
アルコール分がある酒粕を使い、蒸して粕取り焼酎を作り始め、酒造りですから国の免許が必要になり、その記録が残っているのが明治3年。そこで、その年を創業年としています。

―その後、味醂、奈良漬けへと発展していくわけですね。甲南漬が、ほかの奈良漬けと違うところは?

高嶋 焼酎に、もち米と米麹を加えると甘さがどんどん増してきて、美味しい味醂ができます。その味醂をふんだんに酒粕床に使ったり、ふりかけたりするのが、他社にはない甲南漬独特の製法です。

―素材にもこだわりが?

高嶋 元々は、京都の桂瓜を使っていました。皮が軟らかく、歯ごたえが良い品種です。今は、その種を徳島へ持って行き契約農家で栽培しています。

―奈良漬けというのは奈良時代からあったものなのですか。

高嶋 奈良そごう建設工事の際に発掘された長屋王木簡に「粕漬け瓜」「醤油漬け瓜」などと書かれた文献が残っていました。おそらく「どぶろく」に漬けた漬物が奈良時代に始まったのではないかと言われています。夏野菜を年中食べようという保存食の一つだったのでしょうね。

―味醂も「はくびし本みりん」として販売していますね。「白菱」の由来や特徴は?

高嶋 明治27年、製造を開始した時に商標登録を取っているのですが、実はこの「白菱」の由来だけは私どもにも分からないんです。
特徴はまず、一般の味醂に比べて値段が2~3倍もする(笑)。焼酎にもち米と米麹を加えてできるのが味醂ですが、それを薄めることなく、醸造用アルコールや糖類などを添加することもなく、そのまま販売していますので、価格はちょっと高目ですが、とても深みのある美味しい味醂です。

―本社の北向かいの「こうべ甲南・武庫の郷」はレトロな雰囲気ですね。

高嶋 昭和5年に社長宅として造られた建物で、平成22年3月、国の登録有形文化財に指定されています。大広間などもあったのですが、阪神・淡路大震災で木造部分は潰れてしまいました。今は残った鉄筋部分を利用しています。本社ビルは何とか大丈夫だったのですが、味醂蔵をはじめ、木造の建物は全部、被害を受けました。

―武庫の郷には甲南漬本店をはじめ、色々な施設が入っていますね。その魅力は?

高嶋 元社長宅の1階は甲南漬資料館、2階のカルチャースクールは貸しスペースとして地元の皆さんにご利用いただいています。平介茶屋では、かまどで炊いた美味しいご飯と一緒にお漬物など召し上がっていただけます。応接間をパーティー会場に貸し出したり、クッキングルームや広場も自由に使っていただいたり、地域活動の拠点、地元情報の発信地として使っていただけたらと思っています。

―カルチャースクールには奈良漬けづくりの講座があるそうですね。

高嶋 はい、一番の人気講座です。毎年、自分たちで漬けて、お正月に持って帰っていただくというものです。毎年100人くらいの方が参加されるでしょうか。ふんだんに酒粕を使っていただいていますので、甲南漬よりも美味しい、マイ奈良漬けができています(笑)。

―酒粕は健康にも良いと言いますね。

高嶋 酒粕は悪玉のLDLコレステロールの値を下げてくれたり、お通じの改善をしてくれたり抜群の健康パワーを秘めています。しかも、ビタミンB群やアミノ酸など栄養やうまみの宝庫です。

―本店には、色々な灘のお酒も置いていますね。

高嶋 当社は全ての造り酒屋さんから酒粕を仕入れていますから、灘五郷あってこその高嶋酒類です。本店で販売するほかに、資料館では、震災で無くなってしまった酒屋さんも含めラベルを展示し、昔からの灘五郷を紹介しています。

―そのほかにも色々な商品がありますが、一番のお勧めは?

高嶋 奈良漬けの技術を使った魚介の粕漬けに力を入れています。お酒のあてに、ウニ、タラコ、紋甲イカなどお勧めです。

―最後に、こらからの高嶋酒類食品が目指すところをお聞かせください。

高嶋 弊社は、皆さんがよくご存じの甲南漬など自社商品の販売のほかにも、他社商品を扱う問屋業務も行っています。スーパーさんに「奈良漬けだけでなくほかのお漬物も卸しましょう」というところから始まり、日配商品なども扱うようになりました。意外に知られてませんが北海道から福岡まで6つのセンターを置き、全国のスーパーさんとお取り引きさせていただいています。自社商品販売と併せて、今後は問屋業務にも更に力を入れていこうと考えています。

―これからも私たちに美味しいものを届けてください。
本日はありがとうございました。

素材の旨さをひきだすこだわりの味 はくびし純米本みりん

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灘の香味豊かな酒粕と自家醸造のはくびし本みりんで味を整え、丹念に漬け上げた甲南漬

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平介茶屋のかまどで炊いたご飯と旬のお漬物

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ハイカラ文化の伝統と技が見られる資料館

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袋詰め定番『甲南漬 うり』芳醇でまろやかな旨みのある吟醸酒を搾った酒粕[吟醸粕]を漬け込み粕に使用

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もち米、米麹、焼酎という単一原料を使って、昔ながらの製法で手造りした本格味醂

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スパイスにこだわり、20種類以上の香辛料を贅沢に使った深いコクと味わいのビーフカレー

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高嶋 郁夫さん

高嶋酒類食品株式会社 常務取締役 
1945年生まれ。1977年髙嶋酒類食品入社、営業を担当。1989年営業部長。2009年常務取締役で現在に至る。


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目次 2012年6月号