神戸市医師会公開講座 くらしと健康 57

重大な病気に結びつく脂質異常症(高脂血症)日本型食生活と運動で改善・予防を

─脂質異常症とはどのような病気ですか。
山根 脂質異常症とは血液中の脂質の状態が異常なことです。血液中における脂(アブラ)の成分が高い状態であることからこれまでは高脂血症とよばれていましたが、脂質には善玉と悪玉があり、善玉は低い状態が異常ですので、脂質異常症とよぶようになりました。脂質異常症は健康診断で3割くらいの方に発見される病気で、特に男性に多くみられます。ただし女性も閉経を過ぎた更年期になると男性並みに増えてきます。年代的には中高年というイメージがありますが、30~40代でも多くの方に健康診断の血液検査で数値異常がみられます。
─どのような症状がありますか。
山根 遺伝的な脂質異常の方にはまぶたの黄色腫、アキレス腱が太くなるなどの症状が出ることがありますが、ほとんどの方は自覚症状がありません。しかし、進行するといわゆる動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、下肢動脈が詰まって下肢が壊死するなどの大きな病気につながります。一部がんとの関連性を示すデータも出ています。
─コレステロールとは何ですか。
山根 コレステロールは脂の一種ですが、細胞膜やホルモンの原料になるなど人間の体にとって必要不可欠なものです。コレステロールには善玉コレステロール(HDLコレステロール)と悪玉コレステロール(LDLコレステロール)があります。コレステロールは肝臓で合成されますが、それだけでは全身に運ぶことができないので、LDLという粒子の中に包み込ませて運搬します。これがLDLコレステロールです。LDLはたどり着いた血管にコレステロールをくっつけていきますが、これが過剰になると血管に沈着し、血管を傷つけます。逆にHDLという粒子はLDLより少し小さいのですが、体の中を循環して余分なコレステロールと結合します。これがHDLコレステロールで、肝臓へ運ばれて行きます。つまりLDLはコレステロールを全身に運び、HDLはコレステロールを回収する役割があるということです。
─中性脂肪とは何ですか。
山根 中性脂肪はVLDLなどの粒子の中に含まれ、コレステロールと一緒に運ばれています。中性脂肪はコレステロールのように細胞などの成分にはならず、基本的にはエネルギー源ですが、代謝で消費されない分は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。悪玉コレステロールのように直接血管を傷つけることはありませんが、血液に中性脂肪が多いと動脈硬化を起こしやすいといわれています。また、肝臓に中性脂肪をため込んで脂肪肝になり、やがて肝硬変や肝がんへと移行するケースが最近増えてきているので注意が必要です。
─診断・治療はどのようにおこないますか。
山根 診断は血液検査でおこないますので、定期的に健康診断を受けましょう。治療の基本は食事療法と運動療法です。ただ、コレステロールは人体に必要な量を体が作っていくという性質がありますので、LDLコレステロールを食事で下げることは難しいことが多く、その場合はお薬を使って治療します。HDLコレステロールを上げるには有酸素運動が有効です。スポーツや散策など、毎日継続して運動をすることが望ましいですね。中性脂肪を下げるためには食生活の見直しが重要です。
─予防や改善にはどのような食生活を心がけるべきですか。
山根 卵や乳製品などはLDLコレステロールを上げますので、控えましょう。中性脂肪はカロリーの高いもの、脂もの、糖分を摂ると上がり、アルコールも脂肪肝と結びつくので良くありません。脂っこい食事やお肉、甘い物、お酒、ファーストフードは控えましょう。一方で中性脂肪を下げるのには青魚に含まれるEPAという成分が有効で、実際に中性脂肪を下げるお薬にも含まれています(図1)。欧米化した食生活を改善し、野菜や魚を中心とした日本型の食生活をおすすめします。
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山根 光量 先生

神戸市医師会理事
山根クリニック院長


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目次 2012年6月号