直島の景観を損なわないように建物の大半が地下に埋設された「地中美術館」

安藤忠雄と直島

瀬戸内の島々を舞台に、国内外の現代アーティストたちの作品が集まる「瀬戸内芸術祭2013」。この、海とアートの祭典でも重要な舞台となる直島に、安藤忠雄のミュージアムが開館した。

有るものを生かして、無いものを創る

ベネッセホールディングス会長・福武總一郎の発案による、直島の再生プロジェクトがスタートしたのは、1988年。福武は建築家・安藤忠雄を呼び寄せ、島の自然の中に美術館と現代アートを点在させた「ベネッセアートサイト直島」を展開する。
島内に数々の美術館を建築してきた安藤忠雄の、直島プロジェクトの最新作である「ANODO MUSEUM」が3月9日オープンした。ミュージアムは直島本村地区、築100年の古民家に造られた。歴史が刻み込まれた古い民家の門をくぐると、安藤の世界が広がる。自然光のみで照らされた内部には、光の教会(大阪)、地中美術館(直島)など安藤がこれまで手掛けてきた建築の資料や、直島プロジェクトの概要等を展示。
「小さな空間に大きなメッセージを込めている」と安藤は話す。地中に埋め込まれたコンクリートのシリンダーにはまるで、瞑想するための空間のように冷やかな空気が満ちている。ミュージアム周辺は既存の古い建物にアートを融合させた「家プロジェクト」が展開する地区。そこには「あるものを生かして、ないものを創る」という一貫したテーマが込められている。

福武が直島プロジェクトに際し提唱したのは「文明に対するレジスタンス」である。過度な都市化に対し、地方から世界に発信する大きなメッセージ。
プロジェクトスタートから25年、年間40万人が訪れる「文化の島」となった直島。過疎等によって活力を失っていた島は活気づき、また島民たちはアートにふれ、自分たちでも民宿やレストランなどを営み、人々を迎え入れるようになった。
「かつてシーボルトが桃源郷と絶賛した、美しい瀬戸内の海。地方都市に新しい文化があると、世界に発信することができる」と、福武とともにプロジェクトを行ってきた安藤は話す。
直島へは、岡山県・宇野港からフェリーで約20分。島内には「ベネッセアートサイト直島」「家プロジェクト」等をめぐる循環バスが運行し、アートを歩いてめぐる人や、自転車でめぐる人も。ゆったりした島の時間が流れている。

 

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古民家に造られた「ANODO MUSEUM」

古民家に造られた「ANODO MUSEUM」

「ANODO MUSEUM」内部は、射し込む自然光のみで作品が展示される

「ANODO MUSEUM」内部は、射し込む自然光のみで作品が展示される

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香川県知事らものぞんだテープカット

香川県知事らものぞんだテープカット

安藤忠雄

安藤忠雄

福武總一郎

福武總一郎

ANODO MUSEUM

■開館時間 10:00~16:30 ※入館は16:00まで
■休館日 月曜日 (祝日の場合は開館、翌日休館)
■鑑賞料 500円 15歳以下無料
■お問い合わせ TEL.087-892-3754
香川県香川郡直島736-2
公益財団法人福武財団

 

ウォルター・デ・マリア「タイム/タイムレス/ノー・タイム」(2004年)

ウォルター・デ・マリア「タイム/タイムレス/ノー・タイム」(2004年)

クロード・モネの「睡蓮」シリーズを自然光で鑑賞する部屋

クロード・モネの「睡蓮」シリーズを自然光で鑑賞する部屋

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地中美術館

クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの作品を、地中に造られた安藤忠雄設計の建築の中で鑑賞する。
■開館時間 10:00~18:00(10月~2月は17:00まで)※入館は各1時間前まで
■休館日  月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
■鑑賞料  大人2,000円 15歳以下無料

 

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施設をとりまく海岸線や林の中にもアート作品が点在する「ベネッセハウス ミュージアム」

施設をとりまく海岸線や林の中にもアート作品が点在する「ベネッセハウス ミュージアム」

ベネッセハウス ミュージアム

美術館とホテルが一体となった施設。「ミュージアム」、「オーバル」「パーク」「ビーチ」の4棟からなる。美術館部分にあたる「ミュージアム」には収蔵作品に加え、アーティストたちが自ら場所を選び、制作した作品等がある。
■開館時間 8:00~21:00 ※入館は1時間前まで
■休館日  年中無休
■鑑賞料  大人1,000円 15歳以下無料
(「ミュージアム」棟以外は入場無料)

 

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李禹煥美術館

自然石と鉄板による作品を主とする李禹煥。周囲の自然や建築と響き合う李の作品と対話する。
■開館時間 10:00~18:00(10月~2月は17:00まで)
※入館は各30分前まで
■休館日  月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
■鑑賞料  大人1,000円 15歳以下無料

 

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目次 2013年4月号