脳・頭頸部だけではなく、脊髄や肺、肝臓、前立腺などの体幹部に適応可能となる「定位放射線治療装置トゥルービーム」

あればいいのにが実現 期待のがんセンター

神戸低侵襲がん医療センター
理事長・病院長
藤井 正彦さん

 

「切らないがん治療」に特化した「神戸低侵襲がん医療センター」が4月1日、ポートアイランドにオープンする。日本の放射線科をリードする神戸大学医学部附属病院の杉村和朗病院長を中心に、地域連携の一環として進めてきた計画が実現したものだ。小さくみつけてやさしく治す国内有数の期待のがん治療施設とは?藤井院長にお聞きした。

 

―放射線治療を受けるがん患者さんはまだ少ないようですね。
藤井 日本では患者さんが「がんになったら手術」と考える傾向があり、まず外科系の診療科を受診します。放射線科の歴史はまだ浅く、内科系でも、「ファーストチョイスは外科」という考えを持った先生も多くおられます。ですから現在の高精度の放射線治療について、患者さんをはじめ他の診療科の先生方に対して、市民講座や学会などを通し広く知っていただくことが重要と考えています。
―新しい医療センターにはどういった治療装置が備わっているのですか。
藤井 脳腫瘍への高精度治療や呼吸で動く肺や肝臓の腫瘍をロボット技術で追尾し照射する定位放射線治療装置サイバーナイフG4、CTのように360度方向から腫瘍を狙い撃つように照射する強度変調放射線治療装置トモセラピーHD、照射効率を高めて治療時間が短縮した体幹部の高精度放射線治療装置トゥルービームというタイプの違う3つの最新機器を備えています。
―高額医療で、私たちには手が届かないイメージもありますが…。
藤井 今回導入する3台の装置は高精度な放射線治療が可能な最新機器ですが、保険適用ですので患者さんは最大で3割負担です。更に、高額療養費支給申請も可能ですから「敷居が高い治療」とは考えないでください。
―受診するためには特別な紹介が必要なのですか。
藤井 当センターは民間医療機関の一つですから、大学病院だけでなく、一般病院やクリニックからの紹介、また、がん患者さん自身の意思で受診されることも可能です。更に、人間ドックや検診でがんの疑いを指摘された時には直接相談できる窓口も設けています。
―放射線治療だけの病院ですか。
藤井 放射線治療では、抗がん剤との併用が非常に有効な手段です。平均的に約6割の患者さんで併用されています。抗がん剤は副作用を心配されるかも知れませんが、体力を落とすことなく治療できる副作用対策もどんどん進歩しています。当センターでは専門の腫瘍内科医という薬物療法のエキスパートも勤務して万全の体制を整えています。
またカテーテルによる治療、代表的なものとしては肝臓がんに対する動脈塞栓法やラジオ波治療などの専門家もいます。手術以外のがん治療についてのスペシャリストがそろっています。
―どの程度のがんならば放射線治療が適切なのでしょうか。
藤井 がんの場所や進行の程度によりケースバイケースです。早期の小さながん、例えば2センチ程度の肺がんで、放射線か手術かどちらを選択するかという場合、若くて体力があり手術に対して何ら問題がない患者さんならば、手術をお勧めします。
また、ご高齢であるとか、他の病気を持っておられて手術に耐えられない場合などは放射線治療をお勧めします。1回当りの線量を増やし回数を減らすことで入院や通院の期間を短くして、手術と同じ効果が得られるようにします。いずれにしても、患者さんにとってどの治療が一番良いかを考えて選択します。
放射線治療では、がんは徐々に小さくなるものですから、「切ってがんがスッキリ無くなった」という安心感が持てないというイメージはあると思います。しかし放射線治療は既に、手術と何ら遜色なく、更に上回るようなデータも出ています。様々な条件を鑑みた上で、患者さんが放射線治療を望まれる場合は、最適な治療を提供させていただきます。
―進行したがんには難しいのですか。
藤井 放射線は全身に照射はできませんから、進行して広範囲に転移している場合には、腫瘍内科での抗がん剤治療を行いながら、患者さんの予後にとって大切な臓器、例えば脳や脊椎などにポイントを絞って放射線を当てるという方法を取ります。どんな状態の患者さんが来られても、当センターのあらゆる治療技術で出来るだけのことをやらせていただこうと思っています。また、ポートアイランドという立地を生かし、大学病院をはじめ、中央市民病院や先端医療センターとの連携で患者さんにとって最も良い治療法を選択できる体制を整えています。
―このセンターにおける他の特徴は。
藤井 特徴の一つは、歯科口腔外科の専門医を置いていることです。頭頸部がんの患者さんや抗がん剤治療を受けられる患者さんは、むし歯や歯槽膿漏があると、治療がきっかけで急激に悪化する恐れがありますから、事前に口腔ケアをすることで安全に治療を受けていただけます。
もう一つは入院中からリハビリテーションを並行して行うことです。特に頭頸部のがん患者さんの場合は、治療に伴って嚥下の筋肉が萎縮して、急激に飲み込む力が落ちて体力低下や誤嚥につながりますから、リハビリの専門医と言語聴覚士、管理栄養士などのスタッフがチームとなって入院中にケアします。高齢者が放射線治療で入院中に足の筋力が衰え、自宅に戻った時には車いす生活や寝たきりになってしまうことを回避するために運動療法を受けていただきます。がん患者さんへのリハビリは極めて重要で、体力が落ちないことが気力を維持させて患者さんの治療意欲を高めることにつながります。
―4月に向けて人的準備も万全ですか。
藤井 医師、放射線技師、医学物理士などのスタッフは、神戸大学や大阪大学、国立がんセンター中央病院をはじめ、全国の医療機関のスペシャリストが、当センターで治療に携わりたいと集まってくれました。最も懸念していた看護師の採用についても、開設に当たって必要な人数を確保することが出来ました。そのほかにも、薬剤師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師、社会福祉士など。80床という規模に対して必要十分な専門スタッフを揃えることができたと思っています。今後は、稼働状況に応じてスタッフの増員や診療時間を延長していく予定です。
ただし、高精度の放射線は効果も高い反面、必要箇所に確実に当てなくては正常な部分に障害がが出る危険性もあります。まずは安全を第一に、段階的に進めていかなくてはならないと考えています。
―がん患者さんにとっては朗報ですね。一人でも多くのがん患者さんのために、よろしくお願いします。

ポートライナー「市民広場駅」と高架でつながる「神戸低侵襲がん医療センター」

ポートライナー「市民広場駅」と高架でつながる「神戸低侵襲がん医療センター」

病室からは階上庭園を望むことができる

病室からは階上庭園を望むことができる

360度方向から腫瘍を包みこむように照射することで、がんに厳しく体にやさしい「トモセラピーHD」

360度方向から腫瘍を包みこむように照射することで、がんに厳しく体にやさしい「トモセラピーHD」

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藤井 正彦(ふじい まさひこ)

神戸低侵襲がん医療センター 理事長・病院長
1957年生まれ。淡路島出身。1982年神戸大学医学部卒。米Emory大学留学、兵庫県立がんセンター、高知医療センター、三木市民病院などを経て神戸大学放射線科准教授。本年1月神戸低侵襲がん医療センター理事長兼院長に就任。神戸大学客員教授兼務。専門は放射線診断と腹部IVR。趣味は音楽鑑賞とゴルフ、水泳。好きな言葉は「おかげさま」。

 

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神戸低侵襲がん医療センター

住所 兵庫県神戸市中央区港島南町5-5-2
TEL.078-304-7780
http://www.k-mcc.net


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目次 2013年4月号