1月31日より全国ロードショー『繕い裁つ人』Ⓒ2015池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

オール兵庫県ロケを実施! うつくしい街の、実直な職人の姿を描く『繕い裁つ人』1月31日公開!

 オリジナル脚本で監督をつとめた『ぶどうのなみだ』(2014年)が第38回モントリオール世界映画祭特別招待作品となるなど、今、世界で注目を集める若手監督・三島有紀子。三島監督が新作では職人をテーマにした「仕立て屋」の女性を描く。原作は、大人の女性たちに大人気の、池辺葵によるコミック『繕い裁つ人』。主演に中谷美紀を迎え、あたたかくも切なく、また幸せに満ちた映画作品が完成した。
 今回、三島監督は作品全般において、オール兵庫県ロケを敢行。中心となるのは神戸市内で、市江の服を唯一扱うお店は、東灘区に実在する雑貨店「ナイーフ」、市江が何度も出かける喫茶店は北野のカフェ「サンパウロ」で撮影された。また物語の重要なシーンで塩屋の異人館「グッゲンハイム邸」、神戸女学院の図書館や、神戸どうぶつ王国(旧神戸花鳥園)が印象的に登場。もちろん旧居留地の街並みやメリケンパーク、モザイクなどおなじみの風景もたびたびスクリーンに登場し、神戸市民としてはまるで映画のストーリーが自身のごく身近で起きているようで、感動もひとしお。
 三島監督に、作品やロケ地・神戸への思いをうかがった。

ロケハンでますますシーンのイメージが広がった

―ロケ地として神戸・兵庫県を選ばれたのはなぜでしょうか。
 わたしの父はスーツしか着ない人でした。オーダーメイドで作ったスーツを数着にタキシード1着、それを生涯大切に着ていまして、たびたび娘のわたしに職人の技のすばらしさを伝え、「僕は職人さんたちの誇りをまとっているのだよ」と言っていたものです。そんな父がスーツを作っていたのが、神戸にあるテーラーでした。
 そんな思い出もありましたし、仕立て屋の映画を撮るならぜひ神戸で撮りたいと。プロデューサーもそれに賛同してくれました。東京から離れて撮ると予算もかかりますし、撮影期間が16日間という短いものでしたから大変でしたが、スタッフも関西の人間が多く、合宿のように皆で寝泊まりして団結して撮影に向かいました。
 私は大学が神戸でしたから、「ナイーフ」さんはもともと知っていたお店でしたし、ロケハンの最中に「サンパウロ」さんを見つけて、イメージが広がったりしました。

―今回は、原作がコミック作品ということですが。
 ずっと仕立て屋の映画を作りたいと取材したり脚本を書いたりしている時、池辺葵さんによる原作コミックと出会いました。ちょうど5年前ですが、主人公の南市江のキャラクターにとても魅力を感じ、これを映画化したいと思いました。映画化にあたっては、原作の物語に忠実にというよりは、池辺さんが生んだ市江という人物の人生を旅する時間を作りたい、市江の人生に寄り添いたいという気持ちで作りました。市江という人間がどんな人生を送ってきたのか、どんな人物なのかを深くさぐるために、キャスト・スタッフ皆で神戸に生きる市江の人生を旅していました。
 だから、実際にテーラーや洋裁店を取材した時に聞いた印象的な結婚式のエピソードも、原作にはないのですが、市江ならどうするのか…を考え、映画に盛り込んでいますので、そこも楽しんでいただけたら嬉しいです。

“美しいもの”はすべて神戸から教わった

―監督にとって、神戸とは。
 わたしにとって最初の神戸のイメージは、父がスーツを作っていたテーラーで幼い頃ごちそうになった、おいしいお菓子のカスタードクリームの味でした(笑)。父のオーダーメイドスーツもそうですが、神戸は異国文化が当たり前のように存在しています。そこには、マイスターと呼ばれる職人の技がある。わたしは、「美しいもの」はすべて神戸から教わったような気がします。
 阪神・淡路大震災から20年を迎えますが、20年前に多くのものを失った神戸の姿も知っています。そんな神戸が、美しく復興しているのを目にして、人々の力強さを心の底から感じました。今回の映画の中で、いわゆる観光地のような神戸だけでなく、地元の人々が愛している神戸の風景をたくさん撮影しましたが、それは、今残っている神戸らしい場所を、記録に残したいという思いで撮影したということもあります。神戸の風景を、地元の皆さんにはぜひ、映画館の大きなスクリーンで見ていただきたいです。
 オリジナリティのある文化を持つ神戸。そんな街自体が、その人を包みこみ、その人に力を与えることがあるとわたしは信じています。映画では、神戸に今も息づく職人の生き様を描きました。ストイックに洋服作りに打ち込む市江も、小さな悩みや願いを秘めて毎日を過ごしています。神戸の皆さんにはこの映画をご覧になって、明日もがんばってこの街で生きていこう、と思っていただけたら嬉しいです。
(ストーリー)
 「南洋裁店」という小さな看板がかけられた、古びた洋風の一軒家。店主の南市江が仕立てる服は、すべて昔ながらの職人スタイルを貫く一点もの。神戸のデパートに勤める藤井は、市江にブランド化の話を持ちかけるが、まるで“頑固じじい”のような彼女は、まったく興味を示さない。祖母(一代目)が作った服の仕立て直しとサイズ直し、あとは先代のデザインを流用した新作を少しだけ。南洋裁店の服は、世界で一着だけの一生もの、市江はそれで満足だった。だが、南洋裁店に通いつめる藤井の言葉に、市江の心は初めて揺れ動いていく。出演は、中谷美紀、三浦貴大、余貴美子他。

神戸の街を中心にオールロケで撮影された

神戸の街を中心にオールロケで撮影された

〈公開映画館〉
神戸国際松竹
シネ・リーブル神戸
OSシネマズ神戸ハーバーランド
※他、1月31日から全国順次ロードショー
※県内では、他に、MOVIXあまがさき、TOHOシネマズ西宮OS、宝塚シネ・ピピア、塚口サンサン劇場で公開

20150109301

三島 有紀子(みしまゆきこ)

大阪府出身。18歳からインディーズ映画を撮り始め、神戸女学院大学卒業後、NHKに入局し、大阪局と東京を拠点にドキュメント作品を数多く手がける。11年間の在籍を経て独立。2015年公開の『繕い裁つ人』は、オリジナル脚本で監督をつとめた『しあわせのパン』(2011)、『ぶどうのなみだ』(2014)に続いて、職人をテーマに描いている。


ページのトップへ

目次 2015年1月号