新幹線からビールまで[発信!デザイン都市 ものづくりの力(1)]

視覚・聴覚・力触覚をそなえたロボット遠隔操縦システム「FST」

視覚・聴覚・力触覚をそなえたロボット遠隔操縦システム「FST」

旭光電機株式会社 取締役・技術部長
和田貴志さん

動きを感知して無駄なく開け閉め進化する自動ドア

―「神戸発・優れた技術」の認定企業に選ばれた旭光電機ですが、どういった分野が得意なのですか。

和田 自動ドア用センサーとコントローラーは弊社が日本で初めて開発して以来、主力分野です。ビルフロントやプラットホームなどで使われています。鉄道関連電装品では、乗降用ドアコントローラーやブレーキ制御器向け電装品、さらに通路自動ドア用センサーとコントローラーは現在、東海道・山陽新幹線で100%採用されています。もう一つが船舶用電装品です。この3分野向けの製品は、大手機械機器メーカーに納品しています。

―新幹線の通路ドアは、身近な存在ですが、開発の経緯は?

和田 0系新幹線の時代、自動ドアセンサーはドア前に立つ人間の重量で開け閉めするマットスイッチ式でしたが、さまざまな不具合がありました。そこで、弊社社長の畠田忠彦が開発したのが光電遮断式です。投光機と受光機を設置し、V型センサーの光軸を人が通ることによって切れることを利用したもので信頼性が高く長年利用されてきましたが、投光と受光を床面の一点で合わせる微調整が難しく、設置に時間がかかるという欠点がありました。そこで次に私が25年前に開発したのが、床面を基準にして光量の変化を感知する近赤外線反射型センサーです。それにより微調整の必要もなく設置するだけでよくなりました。

―自動ドア用センサーは開発当初から比べて進化しているのですか。

和田 エリアを細かく区切って、人を感知するエリアを設定したり、ドアに近づく人だけに反応して開くドアなど、多様化するニーズに応えて進化をしています。

―アサヒビールと共同開発された製品があるとか?

和田 新規分野のビールサーバー用周辺機器です。樽が空になると自動的に新しい樽に切り替わるオートチェンジャーはお客さまをお待たせしないと好評です。昨年来注目の「アサヒスーパードライ エクストラコールド」の温度管理装置は、氷点下3度まで冷やすとビールは凍ってしまいますから氷点下2度前後を保ちます。また、無線技術を利用して離れた場所でビールの温度を表示し、お客様には目でも楽しんでいただけます。

―樽が空になる直前に泡が飛び散る悩みを解決したというのは?

和田 まずチューブの両端に投光機と受光機を付け、中で液や泡が途切れたことを瞬間に感知して止めるビール切れ検知センサーを採用しました。この技術は、自動ドアで人を感知するセンサーを応用したものです。しかし、ビールの流れをどう止めるかが問題でした。金属弁を使って止めると、味に影響したり、ビールを美味しく保つため定期的に行われるチューブ内の清掃時に、清掃用スポンジが通らないという課題がありました。どうやって止めるか?と悩んでいたある日、洗車しているとホースが折れてつぶれ、水が止まりました。「これは使える!」と思いました。「キンク」と呼ばれる、チューブが折れ曲がる現象を逆に弁として利用した訳です。ところが、チューブの耐久性の問題に直面し…、そこから理想的な素材のチューブに巡り合うまでは、弊社とアサヒビールさん、チューブメーカーさんとの長い道のりでした。

旭光電機社の主力分野・自動ドアと自動ドアセンサー

旭光電機社の主力分野・自動ドアと自動ドアセンサー

アサヒビールと共同開発された製品、樽切れビールストッパー「ハッピーエンド君」

アサヒビールと共同開発された製品、樽切れビールストッパー「ハッピーエンド君」

視覚・触覚を感じながら操縦できる新型ロボット!

―ロボット開発はどういう経緯で始めたのですか。

和田 発端は阪神・淡路大震災時のがれき探索ロボットです。大阪大学(当時は神戸大学)の大須賀公一教授が研究されていた、がれきに埋もれた人を探し当てるロボットで、熱線スキャン型センサーを使って、がれきの中に埋もれている人が発する熱をロボットが感知するのですが、がれきの中に入ったロボットの位置が分からなくなる問題がありました。そこで5センチピッチで角度センサーを付け、データを処理してロボットの位置を特定する装置を開発しました。これは2005年の愛知万博に出展しました。

―現在は、どういうロボットを開発しているのですか。

和田 人の体に装着して、体が動くのと同じようにロボットを動かそうというシステムFSTを大学や他企業と連携して開発中です。アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の「シンクロ」のように、大脳からの指令をロボット操縦につなげるという方法も研究されていますが、今のところ動作を正しく認識する成功確率は85%だそうです。つまり100回の作業で15回は失敗してしまう、これは許されませんから、弊社では体の各部の動きをロボットに伝える方法をとっています。同時に、ロボットが見ている映像や、感じたものを人にフィードバックします。これは、たとえロボットが地球の裏側まで離れた場所にいても、操縦することができるものです。

―どういう場面で役立つのですか。

和田 例えば医薬品開発などで、人にとって有害な物質を扱う必要がある場合、防護服を着てとても動きにくい状態で作業します。更に万が一の場合のためにもう一人が防護服を着て待機するというほどです。また、京大の山中伸弥教授が研究開発するiPS細胞のように無菌を保つ必要がある場合、培養室に人は入れません。長い手袋をはめて、外から手だけを入れて作業しています。こういった場面で役立ちますから、活躍の場を今後開拓していく予定です。

―神戸の先端医療都市とも関わりがありそうですね。

和田 勉強会など参加させていただいていますし、神戸大学と連携した、神戸から新しい医療を目指そうというプロジェクトにも参画させていただいていますので、今後、何らかの形で弊社の技術がお役に立てるのではないかと思っています。

―スパコン「京」も活用できそうですか。

和田 弊社社員はほとんどが電子工学の専門家ですから、その分野に特化して研究・開発を進めています。今のところは、連携している大学との優れた研究を通して、「京」の高い演算能力が活用出来ると思っています。

―神戸発・ものづくりの担い手として、これからも期待しています。ありがとうございました。

「2011国際ロボット展」にて人間(右)の動きと同じ動きをするロボット(左)

「2011国際ロボット展」にて人間(右)の動きと同じ動きをするロボット(左)

人間(操縦者)の細やかな指の動きも正確にロボットに伝わる「ハンドモーションキャプチャ」

人間(操縦者)の細やかな指の動きも正確にロボットに伝わる「ハンドモーションキャプチャ」

20120203607

和田 貴志(わだ たかし)

1962年 神戸市生まれ。1986年 旭光電機(株)技術部配属、同年自動ドア用近赤外線センサ「パルサーチ」を考案(業界主流となる)。2004年 取締役技術部長就任、現在に至る。現在、産業機器用電装品設計や、経産省委託事業等に採択されて医療用機器、食品用機器、ロボット/宇宙/環境向け電装品の開発を指揮。


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目次 2012年2月号