神戸 旧居留地ものがたり Vol.7

技術と情報のちから

神栄株式会社 代表取締役会長
神戸商工会議所 副会頭
新 尚一さん

―1887年創業の神栄㈱の歴史は、まさに旧居留地の歴史ともいえます。当時の本社は栄町のどのあたりにあったのですか。
 当時、居留地内は外国の商館ばかりでしたから、創業の地は栄町3丁目、現在の市営地下鉄海岸線みなと元町駅の山角です。
―会長が関学を卒業されて入社された1964(昭和39)年当時の本社は?
 トアロードにありました。戦時中は製糸工場があった綾部に本社も疎開し、戦後の物資不足から、工場を解体した部材で建てたものでした。
―この場所に本社が移ったのは?
 神栄80周年記念行事として、1967(昭和42)年に旧居留地77番館のこの場所にビルを建て本社を移転しました。私の入社3年目でした。
―本社ビルは阪神・淡路大震災で倒壊したのですか。
 建設した当時の耐震基準でしたので鉄筋が少なく、3階と4階の間がエレベーター部分を残して潰れて傾き、7階建てのはずが6階建てのビルになってしまいました。震災後、取り壊して3年かけて再建しました。
―45年前に比べると、旧居留地は変わったのでしょうね。
 ハイカラで明るくなりましたね。特に震災後は、都市条例に基づいて整備され、ビルの前に出ていた看板もなくなり、歩道も広くなってスッキリしました。大丸さんが中心になって旧居留地を広げて、オシャレな街にしていただいていると思いますね。
―会長は、電子機器、食品、水産など色々な部門の責任者を経験されていますが、最も苦労されたのは?
 入社後は貿易部輸入課に配属されていたのですが、1985(昭和60)年に立ち上げられた電子機器部に転属になりました。電子など全く知らない素人ですから専門家に話を聞きながら、なかなか大変でした。
―生糸を扱う会社が何故、電子機器に参入したのですか。
 戦後、貿易分野を広げて輸入を始めましたが、当時はまだ製糸工場で生糸を作っていました。また、戦後需要をにらんで、コンデンサの製造も本格化していました。その生糸の水分検査のために湿度の研究を始めたところ、コンデンサに巻くフィルムが湿気によって伸び縮みすることに気付き、これを湿度センサーに利用できないかと製糸工場の横で研究開発を始めたのです。その後、製糸工場は全て閉鎖することになり、電子機器部がスタートしました。
―センサーは事業として成功したのですか。
 家電メーカーさんの部品として使っていただいていますので、直接皆さんの目に留まるものではないのですが、湿度センサーは日本国内シェア約60%を占めています。快適な空間制御をしようと、部屋の空気が汚れてきたら知らせるインジケーターや花粉センサーも開発しています。
―現在、神栄が特に力を入れているのはどういう部門ですか。
 衣・食・住と電子部品という4本柱で、医療、健康、快適、安全・安心をテーマに事業展開しています。製糸から始まり、電子部品も作るというモノづくりのDNAが生きていますから、商社でありながらモノづくりをする会社として、今後もモノづくりを主体とした商社になろうとしています。
―研究者、技術者が必要ですね。
 ポートアイランドに研究開発と品質管理のセンター(R&Dセンター)を置き、特に食の安全に関しては残留農薬や品質の検査を徹底しています。
―「食」はどういうものですか。
 主に冷凍野菜・冷凍食品ですが、惣菜加工業者などに卸しますので、これも皆さんが小売店で直接目にする製品ではありません。メインは中国産ですので、消費者の不安があるからこそセンターで徹底した検査をして絶対に大丈夫というスタンプを押さない限りは出しません。
―中国とは長いお付き合いなのですか。
 生糸の取引の頃からで、国交断絶の時代にも中国との貿易が認められる企業に指定されていました。現在は売上の40%程度が中国関連です。
―神戸商工会議所の副会頭も務めておられますが、低迷する経済についてどうお考えですか。
 資源がない日本は貿易立国といわれ、海外から持ち帰った原料を国内で製品にして輸出していました。次第にコストが合わなくなり、部品を日本で作って中国や東南アジアなど海外で製品にしたものを持ち帰るようになりました。ところが海外で日本と同じ品質のものが作れるようになりました。日本に製品を持ち帰る必要もないという流れの中で、技術を提供してロイヤリティーを持ち帰る時代になってきたと思います。
―商工会議所としては?
 私は国際ビジネスを担当していますので、これからのマーケットを探しています。インド、インドネシア、ロシアなどを回りましたが、世界の国々がどうなっているのかを知れば、まだまだ新しいマーケットは開拓できると思います。
―神戸では今年はスパコン「京」も稼働します。優秀な頭脳が集まってくることが期待できますが、神戸の経済にはどう生かせばよいのでしょうか。
 世界トップクラスの「京」にはトップクラスの研究者が集まってくるでしょうし、高度先端医療には素晴らしい先生方が集まってくるでしょう。そこには世界中からトップクラスの生徒たちも集まり巣立っていきます。世界中の研究者が集まれば一つの大きな街ができます。医療機関での治療のために日本に来る人が増えれば、それが観光につながると思います。
―神栄として、世界に向けての新しい取り組みは?
 大きな震災に遭った神戸は防災では世界トップクラスのノウハウを持っています。地元の企業として神戸市とも協力して、地震で困っている国へそのノウハウを持って行けないか? また、日本より一歩遅れて高齢化が進むだろう中国へ、日本からノウハウを持っていく橋渡しはできないか?など考えています。
―大変な時期ですが、神戸の活性化と神栄の発展のためにこれからも力を発揮してください。ありがとうございました。
インタビュー 本誌・森岡一孝
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新 尚一 (あたらし しょういち)

神栄株式会社 代表取締役会長
1941年生まれ。1964年関西学院大学商学部卒業。同年神栄株式会社入社。2000年代表取締役社長、2008年代表取締役会長に就任。2002年社団法人神戸貿易協会会長。2004年神戸商工会議所副会頭。趣味はゴルフ、テニス、読書。


蜷川実花「月刊MEN向井理」展
Nika Ninagawa Photo Exhibition

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 〒650-0037
 神戸市中央区明石町40
 大丸神戸店
会  期: 2012年3月28日(水)~4月9日(月)
*会期中無休
会  場: 大丸ミュージアム<神戸> 【大丸神戸店9階】 
主  催: 神戸新聞社
協  力: 月刊MEN向井理製作委員会、
株式会社ホリエージェンシー、NEO株式会社、
有限会社ラッキースター、写真弘社
企  画: NPO法人CAPSS(芸術文化事業支援機構)  
企画協力: 仔羊同好会
入場時間: 10時~19時30分(20時閉場)
*最終日は16時30分まで(17時閉場)
入場料: 一般700円(500円)、大高生500円(300円)、
中学生以下無料
※( )は前売り・団体(10名様以上)
料金 <税込み>


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