兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第四十八回

社会保険診療報酬支払基金の仕事と
レセプトから見える医療費の課題

─社会保険診療報酬支払基金とは何ですか。

斉藤 社会保険診療報酬支払基金(以下、支払基金)とは、主に被用者保険における診療報酬の審査と支払をおこなう専門機関で、公正に事業をおこなうため独立した第三者機関となっています。被用者保険とは協会けんぽ、健康保険組合、共済組合などを保険者とし、職場に勤める人とその家族、つまりサラリーマンや公務員などの世帯が対象となる公的医療保険です。

─審査と支払の流れについて教えてください。

斉藤 医療機関にかかると診察代やお薬代などを支払いますが、それはその医療にかかった全額ではありません。3割負担の場合、患者さんが窓口で支払うのは医療費の3割で、残りの7割は医療機関が支払基金に請求をします。1か月分をまとめて請求しますが、その明細書をレセプトといいます。近年ではレセプトが電子化され、オンラインで請求します。支払基金ではこのレセプトを一つずつ審査し、保険者に医療費を請求して医療機関に支払います。

─審査はどのようにおこなわれますか。

斉藤 審査の件数は全国で年間約10億件、兵庫県支部だけでも1か月に約353万件(2015年1月分)もあります。ちなみにこの「件数」とは、1か月のうち1人の患者さんが1つの医療機関にかかると1件となります。同じ病院で違う診療科にかかった場合でも1件ですので、例えば内科と眼科にかかった場合はまとめて1件とカウントされます。しかし、外来と入院は分けられますので、1か月のうちに外来で通っていた病院に入院した場合、2件とカウントされます。支払基金ではこれらのレセプトをコンピュータでチェックするだけでなく、スタッフによる確認作業もおこない、保険診察ルールに適合しない診療がおこなわれていないか厳正にチェックしています。兵庫県支部では、168名の審査委員で審査します。うち医科では135名が審査を担当していますが、審査委員は基本的に専任ではなく、医療機関に勤務する医師や開業医が務めていますので、土日や夜など、病院や診療所の診察時間外に支払基金へ来てチェックをおこないます。専門知識を有する医師がチェックすることで、保険ルールのみならず、医療内容についても適正かどうかが審査されているのです。

─医療費について、レセプトの状況から浮かび上がる課題はありますか。

斉藤 医科について、医療費のうち入院費が占める割合が大きくなっています(図)。全国集計での支払基金の平成26年12月審査分のデータでは、請求件数約4330万件のうち入院が占める割合はわずか1.8%ですが、請求金額約8780億円のうち入院が43・2%と4割以上も占めています。全医療費のうち80万円以上かかっている人の医療費が2割以上、10万円以上かかっている人の医療費が4割以上を占めていますが、そのほとんどが入院で使われています。

─高額な入院費は、どのような影響を与えるのでしょう。

斉藤 入院などで医療費が高額になった場合、窓口支払額の一定額を超えた分の金額を支給する高額療養費制度が利用できます。安心して医療が受けられるという意味では有効な制度ではありますが、本来患者さんが負担すべき医療費を税金等で肩代わりする訳ですので、それが増加すると税負担が増えてしまいます。現在、被用者保険が扱う年間の医療費は約10兆円ですが、そのうち患者さんの自己負担は12%、保険者負担は49%で、残りの39%が税金で賄われています。税金の負担があまりにも大きくなってしまうと、現在の保険制度が成立しなくなってしまうという指摘もあります。今後何らかの対策が必要になってくるでしょう。

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斉藤 清治 先生

社会保険支払基金兵庫支部/医療顧問 審査委員長


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目次 2015年4月号