未来への視点 ロマンのあるスイートをお届けします

モロゾフ株式会社
代表取締役社長
山口 信二さん

 

―今年創立80周年を迎えたモロゾフですが、記念の商品もお作りになりましたか。
山口 商品では、復刻版のチーズケーキとプリンがあります。プリンは来年で50周年、チーズケーキも42年目を迎え、味も当時を再現し、長年ご愛顧いただいたお客さまに喜んでいただいています。また、焼菓子主力商品のひとつ「オデット」のパッケージは「オデット姫」のデザインを復刻しました。同じく主力商品の「アルカディア」とともに、ニューヨークでデザイン賞を受賞した伝統の商品です。「懐かしい」とご好評いただいています。
―「バレンタインにはチョコレートを」というアイデアもモロゾフが最初ですね。来年でちょうど80年になるそうですね。
山口 モロゾフは創業当時からチョコレートとキャンディで商売させていただいていました。神戸は海外の文化が集まってきた街で、当時、チョコレートは主に外国人の方にお買い上げいたいていました。当初からハート型のチョコレートなどを作っており、ヨーロッパには愛の日にチョコレートを贈る風習があることを知り、創業翌年からバレンタインデーに提供し始めました。当時のカタログや英字新聞に掲載した広告などから、当社が「バレンタインにはチョコレートを」とアピールしてきた様子がよくわかります。次第に業界全体に広がり、今では国民的行事に成長してくれました。本当にありがたいことだと思っています。
―企業テーマ「ロマンのあるスイート」とは?
山口 当社は「ライフスタイル マーチャンダイジング」という基本的な考え方を持ち、バレンタインデー、ハロウィーン、クリスマスなどイベントに力を入れています。特にハロウィーンも当社がいち早く提案してきました。今ではいろいろなイベントが開催され、各メーカーさんも仕掛けるようになり、盛り上がってきました。パーティーを楽しんだり、贈り物の習慣を大切にしたり、こころ豊かな生活の提案をしていくのがロマンのあるスイートです。
―チョコレートとキャンディで始まったモロゾフが、カスタードプリンやチーズケーキを開発したきっかけは?
山口 ドイツ、スイス、フランスを始め、ヨーロッパ諸国は夏でもあまり暑くならず、湿度も高くはありません。ところが日本の夏は高温多湿で、チョコレートには向きません。創業当時は、夏にはやることがなくて、甲子園浜に海の家を作って商売しながら、皆で浜で泳いでいたという逸話もあるくらいです(笑)。そこでいろいろ考えた結果が、それ以降の商品開発につながりました。
―どういう経緯でカスタードプリンを発売することになったのですか。
山口 当時、社長の葛野友太郎の縁で、東京西新橋の日本石油ビルで喫茶店を営業していました。偶然、そこの担当者がプリンを焼くレシピと技術を持っていて、「焼いてみましょう」と始めたところ、大きくて美味しいと好評。そこで量産化を考えたのが始まりです。関西で発売したところ、女子学生を中心に人気が出て、全国に広まりました。
―チーズケーキは?
山口 こちらも偶然です。葛野が工場や見本市の視察のためベルリンに行った際、空き時間ができてしまったため動物園を見に行こうとしたそうです。ところが戦時中で閉鎖になっていて、仕方なく近くの喫茶店でチーズケーキを食べたところ、その美味しさに感動したそうです。帰って来て、ドイツ人の知り合いが焼いてくれたのですが、それも非常に美味しくて…、さらにデンマークチーズを扱う知人から紹介されたチーズを使って焼いてみるとさらに美味しくて…、それが商品化につながりました。以来、当社のチーズケーキはデンマークチーズにこだわり続けています。
―日本の行事に合わせたお菓子も作っているのですか。
山口 もちろん日本ですから、ひな祭り、母の日、父の日、孫の日、敬老の日などを取り上げています。日本の贈り物の文化でいえば、お中元やお歳暮、お年賀などもあります。
―和菓子に対しては?
山口 当社は、純粋な和菓子は作ってはいません。ただし、抹茶などの和の素材と洋菓子とのコラボレーションは行っています。柚子や生姜、七味など和の素材にはヨーロッパのパティシエやショコラティエたちも非常に興味を持っています。
―「神戸のモロゾフ」というメリットはありますか。
山口 神戸には美味しいものがあり、ファッショナブルな街というイメージではプラス効果はあると思います。当社がアイデンティティをどこに置くかといえば、やはり神戸です。風と光と土と水、つまり神戸の風土なんです。港があり、六甲山があり、この空気がある。この神戸の風土に包まれて、港に集まる世界中の恵みを使ってお菓子を作っているというアイデンティティ。これからも持ち続けるつもりです。
―神戸っ子としてうれしいことです。新製品の開発は神戸で?
山口 本社のマーケティングセンターに、製品開発、商品企画、デザイン、販売促進、店舗設計などそれぞれのスタッフがおり、私が統括しています。チョコレート、焼菓子、洋生菓子、プリンなどの開発のプロがいます。
―製造拠点は全国に持っていらっしゃいますが、品質保持のためには配送にも気を使うのでしょうね。
山口 もちろんです。配送テストを何度も行い、適正な温度で配送されていることを確認しています。品質保証部門だけでなく、各工場に検査室と専門スタッフを配置し、製造当日に検査を行うことを徹底しています。
―東日本大震災での影響は?
山口 仙台の若林区にあった工場は閉鎖せざるを得ない状況でした。当初は、船橋の工場も被害があり、原料の調達ができなかったため、神戸で製造し、配送しました。被災地では「またプリンを食べられるなんて思ってもいなかった」と非常に喜んでいただきました。水や米とは違って、お菓子が無くても生きられますが、甘いものは脳を活性化させ、辛いことを忘れさせてくれます。人間にとっていいものを提供する仕事をしていて良かったと改めて思いました。
―さて、神戸生まれ神戸育ちの山口社長ですが、子どもの頃からモロゾフに親しんでいたのですか。
山口 中高生のころ、バレンタインデーにモロゾフのチョコレートをもらう機会があり、大事に食べたという思い出があります。チーズケーキやプリンは大学生になってから、同級生の女子学生たちの間で話題になっていた記憶があります。
―そのモロゾフに、なぜ就職を決めたのですか。
山口 まず私は食べることが大好きなこと。そして、神戸に本社があることも魅力でした。そして、商品がおいしく素敵であり、人事の方々がいい人たちだと感じられたためです。
―今後のモロゾフについて。
山口 2019年の創立88周年を目指した長期ビジョンを掲げ、それを3ヵ年ごとの3つのステップ「チェンジ」「チャレンジ」「クリエイト」に分割して取り組み、筋肉質の会社を造ろうとしています。今年で内部改革の方向性は決まりました。当社は百貨店に軸足を置いて成長してきましたが、難しい面も出てきています。一方、伸びているチャネルもあります。新たに大きな市場となってきた通販や駅ナカ、空ナカ、道ナカなどの新販路もしっかり開拓しようとしています。東京駅や羽田空港に新しい商品を投入し、東京のJR赤羽駅では「モロゾフグランTOKYO」を新展開しています。お陰さまでいずれもご好評をいただいています。また自社サイトでのインターネット通販も開始しました。ネットでしか買えないオリジナル商品も展開しています。さらに、既存のブランドをどうブラッシュアップしていくかを今考え始めているところです。
 3つのステップを経て、90周年、100周年への礎を築いていくことが私の役割だと思っています。
―ありがとうございました。

 

2012年バレンタイン商品

2012年バレンタイン商品

 

日本初の「バレンタイン」商品カタログ(1932年)モロゾフ(株)所蔵

日本初の「バレンタイン」商品カタログ(1932年)モロゾフ(株)所蔵

 

80周年記念復刻 パッケージの「オデット」

80周年記念復刻
パッケージの「オデット」

 

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山口 信二(やまぐち しんじ)

モロゾフ株式会社 代表取締役社長兼マーケティングセンター長
兵庫県出身、甲南大学経済学部卒。1981年モロゾフ株式会社入社。2011年4月~代表取締役社長兼マーケティングセンター長。商品企画、販売促進、店舗設計を統括し、モロゾフブランドの価値向上に取り組む。新たなブランド「モロゾフグラン」の育成にも力を注いでいる。


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目次 2011年12月号