みんなの医療社会学 第十回

日本の公的医療保険と医療費助成制度

─日本の医療保険制度について教えてください。
明石 医療保険は日常生活をしていく上で欠かせないものです。日本では生活保護受給者など一部を除き、日本国内に住所を有する全国民が何らかの公的医療保険への加入が義務付けられており、これを「国民皆保険制度」といいます。
 昭和36年4月に国民健康保険法が全面施行され、わが国の医療保険制度において皆保険が確立されました。この制度により「誰でも、いつでも、どこでも」保険証(被保険者証)さえあれば医療を受けられるよう保障されています。

─公的医療保険にはどういうものがあるのですか。

明石 勤務先などによって異なってきます。人数的に最も多いのが市町村国保です。
 自営業や農業を営む方が対象で市町村が運営、加入者は約3566万人です。
 国保組合は開業医や税理士、建設関係など同種の業種または事務所に従事する者が対象で、約343万人が加入しています。
 組合健保は大手企業のサラリーマンが対象で、加入者数は約2995万人です。サラリーマンのうち勤務先が組合健保に加入していない中小企業の場合は政府管掌健康保険(政管健保)に加入することになります。もともとは社会保険庁が実施していましたが2008年からは全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)として承継され、約3483万人が加入しています。
 共済組合は国家公務員や地方公務員、私立学校共済などで加入者数約912万人。
 2008年から75歳以上の老人を対象とした後期高齢者医療制度が始まり、約1389万人が加入しています。

─世界の状況はどうですか。

明石 アメリカは皆保険になっていません。高齢者と一部の貧困層に公的保険があるのみで、国民は民間保険に入ります。その保険の種別によって受けられる病院や医療の中身に制限があります。
 イギリスは税方式で国民は保険料を払いません。窓口負担も原則ありませんが、待ち時間が長いなどサービスは悪く、必要があればすぐ入院できるといった日本では当たり前のことが全然できていません。一方プライベートなサービスや医療機関を受診すると全額自費です。
 フランスは日本と同じように国民皆保険ですが、償還制で一旦窓口で全額支払ってから後で返還の手続きをとるなど、日本のように便利な制度は世界ではまれなのです。

─窓口負担について教えてください。

明石 保険診療を受けた時窓口で払う金額ですが、義務教育就学前までが2割負担、以降69歳まで3割負担、70歳から74歳が2割負担(現役並み所得者3割)、75歳以上1割負担(現役並み所得者3割)となっています。
 患者の自己負担分を増やすと公的医療保険制度からの支出が減らせるし、また受診抑制により医療費の減少、無駄な受診を抑制できると政府は窓口負担を故意に上げてきました。特に小泉首相当時は患者、保険者、医療機関の三者が「損」を分かち合う「三方一両損」を唱えた小泉改革がおこなわれましたが、国や保険者は損をせず見事に国民と医療機関がだまされてしまいました。
 窓口負担が大きいと受診抑制につながったり、医師も本来必要な検査などがしづらくなったりして病気の診断が遅れ、重症化につながりかねません。重症化すると結局医療費は増大してしまうのです。窓口負担も大きく保険料も高いとなると、普段保険料を払わずに何かあったら自費で全額払えばと思う方もいるようですが、重病で入院にでもなったらとても払える金額ではありません。
 また、国民健康保険の未払いが多いのですが、払わない人が増えるとその分払っている方の保険料が上がるという悪循環を起こしています。

─福祉医療費助成制度とは何ですか。

明石 医療保険における自己負担の一部を助成する制度があります。それが福祉医療費助成制度です。
 いずれも障害の程度や所得によって制限がありますが、兵庫県では表1のとおり6つの助成があります。就学以降の助成は全国でも少なかったのですが、県の財政が厳しい中、医師会の要望を受け入れ実施していただき大変感謝しています。市によってはさらに上乗せの助成をしているところがあります。
 助成についての詳細はお住まいの市町の福祉医療担当課にお問合せ下さい。

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明石 恭治 先生

兵庫県医師会常任理事
明石クリニック院長


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目次 2011年10月号