神戸市医師会公開講座 くらしと健康 48
日焼けだけではない紫外線の健康影響
夏本番、お出かけの際にはご注意を
―まず、日焼けの症状について教えてください。
八田 皮膚に日光が当たると、程度の差はありますが誰にでも反応が起こります。日頃紫外線にあまり当たっていない人が、海水浴などで急激に強い紫外線を浴びると数時間後から皮膚は赤くなり、ひどい場合は腫れたり、水ぶくれができたりすることがあります。肩や背中にでると、仰向けに寝ることができないほどヒリヒリ痛みます。この状態は10~24時間後ピークに達し、数日間続き、それが治まるとメラニン色素の沈着により皮膚の色が黒くなってきます。
―どのように治療しますか。
八田 やけどの治療に準じます。軽い場合は冷却や抗炎症剤の外用で十分ですが、重症例では抗炎症剤(副腎皮質ホルモン)の内服を行うことがあります。
―日焼けの原因は紫外線ですか。
八田 はい。太陽光線は波長の長い順に、赤外線・可視光線・紫外線に分けられます。紫外線も波長の長い順に、A・B・Cに分けられますが、これは作用の違いや地表に達するか否かで区別しています。太陽光線は波長の長いものほど深部に達します。
可視光線は皮下組織まで達しますが、際立った反応は生じません。紫外線Aは表皮から真皮まで到達し、皮膚の色素沈着や光線過敏症に関与しています。浴びてすぐに影響はでませんが、後で黒っぼい色素沈着を起こすのは紫外線Aの働きです。日焼けサロンで使われるのは、この波長の紫外線です。紫外線Cは殺菌灯に使われますが、地表には入ってきませんので人体には影響ありません。
ここで問題になるのが紫外線Bで、ほとんどが表皮で吸収されるため皮膚へのダメージが大きいのです。紫外線Bを浴びると直後から皮膚が赤くなり、水ぶくれを形成するなどの症状をきたします。
―紫外線には日焼け以外の危険もあるのでしょうか。
八田 長年日に当たっていますと、シミやしわ、場合によっては皮膚がんが発生することがありますが、これも紫外線Bの影響が強いのです。紫外線Bが表皮細胞に吸収されると、細胞内のDNAが傷つきます。それに対し、表皮細胞にはその傷を自然に治そうとする修復機能があります。
しかし、繰り返し損傷を受けているうちにメラニン色素による防御反応の産物としてシミができたり、突然変異を起こしてがん化したりすることがあるのです。ちなみに、成層圏オゾンが10%減少すると地表の紫外線Bが20%増え、皮膚がんが約30%増加するといわれています。
もう一つ、光線過敏症が挙げられます。これは、体内に何らかの形で取り込まれた物質と紫外線の相乗作用で、日焼けと同じような症状をきたす反応です。原因物質としては植物、食品、医薬品、化粧品、香料などが知られていますが、近年、特に抗菌剤・血圧降下剤・抗糖尿病薬などの薬による光線過敏症が増加していますので、十分注意ましょう。同じように日光を浴びても昨年に比べ日焼けの度合がきついという方は、光線過敏症の可能性がありますので、皮膚科医の診察を受けましょう。
―紫外線を防ぐためにはどのようにすればよいでしょうか。
八田 真夏よりむしろ4月、5月の紫外線量が多く、紫外線の強さも6月をピークに4~8月に強くなっています。晴れた日には、4月ごろから紫外線対策をしておかねばなりません。
ただ、紫外線の強さだけで、日焼けの度合いを推し量れません。日光は反射しますので、コンクリート・アスファルト・砂・水面・雪面などの照り返しで浴びる量が数倍増加することがあり十分注意が必要です。
また、18歳までに生涯浴びる全紫外線量の2分の1を浴びるといわれていますので、乳幼児期より無駄な日焼けをさせないようにしてください。帽子・日傘・長袖の衣類で防御しするのはもちろん、日焼け止めクリームを上手に使い、スキンタイプ(肌質)や照射時間を目安に使い分けすればよいでしょう。
SPFは紫外線Bの、PAは紫外線Aの防止効果の度合を示しています。特に肌が赤くなりやすく黒くなりにくい方はSPFの値の高いものを、光線過敏症の人はPA+++をお勧めします。
八田 晋 先生
八田皮フ科院長