
桂 吉弥の今も青春 【其の十六】
政治の話
この原稿を書いているのが六月、東日本大震災から三ヶ月が過ぎました。私はこの一週間ほど、とても辛い精神状態に陥っています。
落語家としてはありがたいことにお客さんも沢山来てくださるし、「楽しかったよ」なんて声をかけていただいている。好きな阪神タイガースも連敗癖からちょっと好転の兆しを掴んだようで、一安心。キャッチャーの藤井彰人という好きな選手も出てきた。ザックジャパンもいまだ負け知らず、新しい日本サッカーのスタイルを模索中だが見ていて楽しい。
辛く感じるのは、テレビやラジオいわゆるマスコミの仕事の時。震災から三ヶ月もたって、被災地の皆さんが異口同音におっしゃっているのが「国はあてにならないので、自分たちで何とかするしかない」ということ。なんと悲しい言葉だろう。日本に住んで、税金も納めて、まっとうに生きてきた人たちが大災害に遭った。原発の問題なんて、人災じゃないですか。それなのに最後は自分たちだけが頼りなんて、日本てなんという国だろうか。
そして、そんな情けない政治しか出来ない人たちのことを選挙で選んでしまった自分が情けない。また、チェックするべきマスコミがなんの力も発揮できなかったことが悔しいし、そのマスコミの片隅だけれども、色々としゃべってきた自分自身が恥ずかしいのです。
民主党が第一党になって鳩山政権が誕生したときに、「自民党政治が終わった、これで政治はごろっと変わる」。と桑原征平さんとラジオで叫んでいました・・・ちょっとも良くなかった。民主党の代表選挙で菅氏が小沢氏に勝った時も喜んでいたなあ。ああ情けない。
民主党だけじゃない野党の方々にもがっかりしていて、もう今、国会議員を総取っ替えしてもいいと思ってます、私。
落語『崇徳院』の中で旦さんが熊五郎に言うんです「こういう時に走ってもらおうと思やこそ、常日頃からお前はんには色んなことがしたあるはずや」と。自分の息子が恋患いをしてて命があと五日もたない、百人一首にある崇徳院の「せをはやみ・・・」という歌だけを頼りに相手の女性を探してこい!という場面なんですが。熊五郎は旦さんの世話になってたんでしょうね、仕事をもろたり、お金を援助してもらったり。
今まさに国は走らなアカン時なんちゃいますの。私たちは常日頃から色んなことしたあるでしょ、国会議員を養っているのは我々の税金ですよ。もっとフットワーク軽くいけへんのかなあ。
もう一つ腹立たしいのは、政治を主に担当してはるマスコミの皆さん。
私が考えたことを言います、例えば「国会議員は全員被災地へ行き、各地区の担当者を決めて、責任を持ってその地区の復興支援にあたる」「ボランティア基地のような政府の出先機関を被災地に置いて、県と連携する」「国会議員の給与を半分カット、被災地に送る」最後の給与半減案は、全額カットにしてボランティアでも議員を続けるという人だけ残ってもらってもいいんですが。こういう意見を言うとほとんどの方が「そんな意見は無茶苦茶や」とか「実現不可能や」とか言うんです。そういう言葉をおっしゃらなくても「素人は黙っとき」「政治を知らんなあ」という目をする。政治の素人なりに新聞読んで、本読んで、考えて言うてるのになあ。そうやって政治のプロとして報道してきた人たちにも、今のような永田町の現状を作った責任があると思うんです。極論すぎるかなあ。
毎日こんなことを考えて、辛く思うのもしんどくなってきました。政治のプロの皆さんに、国会も報道も任せることにしましょ。
私は落語家やから落語を一生懸命やりますわ。それが一番ええように思えてきました。
KATSURA KICHIYA
桂 吉弥 かつら きちや
昭和46年2月25日生まれ
平成6年11月桂吉朝に入門
平成19年NHK連続テレビ小説 「ちりとてちん」徒然亭草原役で出演
現在のレギュラー番組
NHKテレビ「生活笑百科」 土曜(隔週) 12:15〜12:38
MBSテレビ「ちちんぷいぷい」 水曜 14:55〜17:44
ABCラジオ「とびだせ!夕刊探検隊」 月曜 19:00〜19:30
ABCラジオ「征平.吉弥の土曜も全開!」 土曜 10:00〜12:15
平成21年度兵庫県芸術奨励賞