わたしの神戸デザイン 第5回

「緑感」を感じるウエディングを

株式会社 クレ・ドゥ・レーブ 代表取締役 浅木雄三さん

―神戸ウエディングは全国的にも人気がありますが、その秘密は何なのでしょう。

浅木 神戸には「オシャレな街」のイメージがあること。山・町・海の魅力が詰まっています。神戸に住んでいたら当たり前になりがちですが、旅行に行って帰ってきたら神戸のロケーションの良さを感じますね。次に神戸は美しい女性が多いように感じます。ファッション誌でも神戸特集は人気があり、ファッションと神戸の結びつきは強いですね。町は狭くもなく広すぎることもなく、人も多すぎず少なすぎず。ある程度人のことを意識しながら生活がある。「神戸コンサバティブ」という雰囲気がウェディングのイメージとも重なるのではないかと思います。

―北野クラブは本格フレンチの老舗ですが、どういうきっかけでウエディングをやろうと考えたのですか。

浅木 北野クラブで仕事をしていたのですが、働き始めて3年ほど経った時に、昔から来られているお客様から結婚式をしたいというリクエストがありました。ちょうど、「レストランウエディング」という言葉が世の中に出始めたころです。それまでは圧倒的に結婚式=ホテルというイメージが強かったのですが、レストランで堅苦しくなくParty感覚で、親しい人限定で、美味しい料理でおもてなしをしたいというニーズが少しずつ増えていました。
 その頃は、担当者としてお客様とお話しているうちに、プランニングしながら当日をイメージし創りあげる仕事って楽しいなと感じていて、なんとか想いを形に出来るように一生懸命でした。
 その後、ゲストハウスウエディングという言葉も出てきたんです。まだ関東の方にしかなくて実際にそれをやっている所を見に行ったところ、当時28歳の僕は、“自分ならもっと良い感じの物ができる”と信じ込んでしまったのです(笑)。

―2003年会社設立から、2005年にsolaのオープンまで、コンセプトづくりなどで苦労されたことは。

浅木 いや、まさに地獄でしたね(笑)。できるというイメージはあったのですが、その過程は大変でした。とにかく重圧がすごくて、いま思うと30歳目前でよくやったなと思います。逆に何も知らなかったからできたのでしょうね。ただ、シンプルに「太陽のように暖かく空のようにおおらかに」そんな気持ちで仕事をし、お客様に対しておもてなしが出来ればと。でも本当にいろいろな人に助けてもらいました。開業前にお手伝い頂いた方々や一緒に働いたスタッフには感謝してもしきれないですね。

―夏に改装を予定

浅木 デザイナー選びはリサーチをかけて、実際の代表作品を見に行き、好きなテイストの人を何人かピックアップしました。最後の選ぶポイントは人柄です。会話のキャッチボールができるかどうかですね。今回の改装プロジェクトでは感性の高いデザイナーにお願いしました。今度も素敵な物ができますので乞うご期待ください!空間作りの仕事はやっぱり楽しいですね。

―結婚式のスタイルもいろいろと変わってきたのではないでしょうか。

浅木 そもそも「結婚式=パーティ」と考えています。二人のハレの日。ハッピーな空間で縁のある人たちに囲まれる時を過ごすことに、形式的なことを優先するより、ハートを優先させる。そのハートを形にする事に対してそもそもタブーなんてない。お二人に縁のある方々が参加し笑顔に包まれる瞬間。ゲストの事を考え準備してきた事の全てが形になる瞬間なのです。十人十色あるのですからスタイルもいろいろ変わってきて当たり前です。世の中は日々進化していると思いますが、「感動」と「感謝」の気持ちは変わらないと思います。

―環境に配慮したCSR活動にも力を注いでいますね。

浅木 これはいまの時代、当たり前のことだと思っています。社内でも沢山の活動はしていますが、個人的に地元の友人達でつくる「グリーンバード神戸」とのリンクで、ゴミ拾いなども定期的に行っています。僕の基本コンセプトは「ハッピーにいこうぜ!」ですから、ゴミ拾いも楽しんでやっています。興味のある方はグリーンバード神戸で検索してみてください。一緒に楽しみましょう。

―今年の3月には大阪の鶴見緑地に鶴見ノ森迎賓館がオープンしましたね。

浅木 リゾートウエディングに負けない場所を探していました。コンペの時、場所と建物を見た瞬間にピンときました。コンペに勝って完成した時は、嬉しかったですよ。記念すべき第1号として、自分の結婚式をここでやりました(笑)。
 特に力を入れたのは教会です。森の中にあり、木で作られた教会。目の前に「大きな木」があり、「自然」と「成長」に感謝できる場所です。20年前の花と緑の博覧会時の天皇陛下や世界のVIPをお迎えするために作られた迎賓館は、池の上に作られており、長い年月を超え、森の中の迎賓館になっています。このプロジェクトのメンバーにも恵まれ感謝しています。

―今後の展開として何か考えていることはありますか。

浅木 40歳を目前に自分自身や会社の存在意義についてまとめているところなんです。僕らの両親世代は、ずっと右肩上がりの世の中でした。いまの時代は右肩上がりの世の中ではないので。悲観的にならずに、それを逆に良い事にしてみたら色々見えてきそうなんですよね。常に成長戦略を言い続けるのも大事なのでしょうが、少し踊り場も作りながら心身共に成長できればと思っています。プライベートでは子供が出来て、もう少し世の中を幸せな仕組みにできるのではないかとも思うんです。そういう責任もあるなと。小さなことでもいいから、出来ることから行動しないと。常に進化しながらも最終的にみんなが笑顔になれればいいですからね。

―最後に神戸に住むことの良さとは何でしょう。

浅木 神戸からは離れられないですね。街中でも満足度の高い環境があり、買い物も便利です。職場のある北野町は便利な上に、自然が近く、坂の上からの景色も素晴らしい。近所の人たちがバーやカフェに集まってきて、ワイワイしながら神戸で育った外国人とも親しくなれる。そんな風景がとても自然な所が良いですね。

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神戸の街並を望む「KITANO CLUB“sola”」

神戸の街並を望む「KITANO CLUB“sola”」

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浅木 雄三(あさき ゆうぞう)

株式会社 クレ・ドゥ・レーブ 代表取締役
1973年神戸生まれ。大学はフランスへ留学。国内における先駆け的なフレンチレストラン「北野クラブ」で修行を積む。2005年に北野浄水場跡地に「北野クラブソラ」をオープンと同時に人気をよぶ。2011年3月には、大阪の鶴見緑地に「鶴見ノ森迎賓館」をオープンさせた。

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