
登場!名物先生 表現芸術の仕掛け人
―「舞台」「メディア」「美術・デザイン」「音楽」という表現芸術学科のジャンルの中で、先生の専門ジャンルは?
岡本 学科内では4つのジャンルを総合的に扱うというのが基本的な位置づけです。私は主に、舞台表現とメディア表現の2ジャンルの授業を持っています。舞台表現では舞台制作や音響システム、メディア表現ではコンピューターミュージックや、電子楽器アンサンブル、映像などです。
―学生はジャンルを横断して自由に履修できるのですか?
岡本 はい。必修科目は少なく、ほとんどが選択科目です。音楽は好きだけど美術もやってみたい、舞台の表に立つだけでなく裏方もやってみたいなど、幅広く好きな授業が取れるのが学生にとってのメリットです。履修登録の際に、どういう方向を目指したいのかなど相談しながら決めていくようにしています。
―実技を重視しているのですか?
岡本 芸術系は制作が主ですから、まずはつくってみる。深めていくにはどうすればいいかを考えるために体験する。積極的になってくれば、応用できるように指導しています。
―発表の機会も多いのですね。
岡本 芸術の大きな目的は、観てもらって楽しんでもらうことです。幸い、神戸山手では自治体から地域連携協力を積極的に呼びかけていただいています。お客さんに観てもらう機会を持ち、目的意識や本番での緊張感、成功だけでなく失敗という体験もします。授業では教えられないことです。
―経験が学生さんを成長させるのでしょうね。
岡本 特に、横だけでなく縦のつながりを積極的に進めています。卒業生グループ「神戸山手CAST」もイベントに参加します。経験豊かな先輩が、初めて参加する学生をフォローしてくれます。この経験が、2年生になったときに1年生へのフォローに役立ちます。こちらから言わなくても創意工夫してくれます。1人の人間の成長というより、横と縦の結びつきによる全体としての成長をみせてくれます。
―芸大のようですね。
岡本 芸大に比べて規模が小さく、学科の中で複数のジャンルにまたがっていますから、さまざまな芸術と、舞台では表と裏の両方を体験できます。
―卒業後の進路に役立てられていますか。
岡本 たとえ一般企業に就職しても生かせる芸術や、生活の中で一生楽しめる芸術を教養として身につけることができます。演劇や音楽の分野では、卒業後もアルバイトをしながら続けて、自分を発展させる学生もいます。この世界ではやりたいことをやり続け、自分の可能性に挑戦することが大切です。経験を積み、ステージ音響や舞台制作、演奏などの仕事に就くこともあります。やめずに続けている限り、私たちも見守り応援したいと思っています。
―先生の研究分野「電子音楽」「コンピューター音楽」「マルチメディア」とは?
岡本 いわゆる現代音楽の中でもメディアを使ったもの。ミュージック・コンクレートと呼ばれている自然音を使った音づくり、実験的な音づくりです。
―学生にも教えているのですか。
岡本 今までにない音響の世界ですので、いきなり学生に押し付けるのは控えてきましたが、私がやっていることを紹介することで、幅広いアートの世界を知ってもらえるかなと思うようになりました。
意外と、興味を持つ学生も多く、私が今、作ろうとしている「写真と音」という組み合わせでの作品もゼミで紹介しています。決して、同じことをやりなさいというわけではありません。学生なりの新しい発見があり、そこから派生して何かが生まれるのではないでしょうか。
―表現芸術の基本は多分野のコラボですね。
岡本 私自身も、舞踊、パフォーマンス、美術などいろいろなコラボで音づくりをしてきました。せっかくいろいろなジャンルがある学科で教えているのですから、他分野とのコラボを広げたいと思っています。
―今後の方針・抱負は?
岡本 「神戸山手キャスト」を自主的な活動ができるアート集団に育てていきたいと思っています。「神戸山手短大に行けば、キャストにも入れる」というほどのレベルに高めるのが夢です。
表現芸術学科の目的は、さまざまな分野をミックスして表現できる「表現芸術家」を育てることです。そのために、教える人間としても、もっともっと広い分野に挑戦していきたいと思っています。
神戸山手CASTホームページ http://sites.google.com/site/kobeyamatecast/

学生たちによる電子楽器アンサンブル公演

卒業後はさまざまな業界で活躍の可能性が広がるメディア制作学習

岡本先生も専門のマルチメディア制作を学ぶ

舞台の裏方・音響システムを実地学習
岡本 久(おかもと ひさし)
1987年 大阪芸術大学芸術学部音楽学科作曲専攻卒業。民間企業でソフトウェア設計・開発業務に携わった後、京都芸術短期大学、京都造形芸術大学、大阪芸術大学等で非常勤講師を歴任し、2001年に神戸山手短期大学表現芸術学科講師に就任。
現在同学科の准教授及び学科主任として活躍中。