
学校法人 親和学園
Shinwa-Gakuen
先生になるなら、親和!
―明治20年「親和女学校」設立当時の3つの理念「誠実」「堅忍不抜」「忠恕温和」は受け継がれているのですか。
山根 理念は今でもずっと生き続けています。私も入学式・卒業式などであえて使うようにしています。言葉だけを見ると難しそうなのですが、校祖友國晴子先生の「決めた目標に向けて最後まで頑張ろう、心の真ん中から誠実に物事に向かおう、思いやりをもって生きよう」という精神は今でも同じです。
―今の子どもたちは、耐え忍ぶことは苦手ではないですか。
山根 我々の世代は、耐え忍ばざるを得ない時代に生きていたということではないでしょうか。私は学園紛争世代ですが、当時の学生は世の中に本当の意味で対峙していなかったように思います。それに比べて今の子たちは、世の中の現実にしっかり向き合っていると思います。ただし、政治的な知識やグローバルな物事の見方などが欠けているのは確かです。そこで親和学園では中高、大学でも、世界をテキストとして学ぶために、海外での研修や留学を積極的に進めています。
―中高一貫教育のメリットは。
山根 先生方も6年間という長いスパンで子どもの成長を見守りますから、ゆとりを持って支援ができます。子どもたち自身も、互いに理解し合い、励まし合い、生涯の友だちを得ることができます。
―神戸親和女子大学卒業後の進路としては。
山根 学生のほぼ半数が教育系ですから、卒業後の進路は圧倒的に先生が多く、「2012年版大学ランキング」(朝日新聞出版)によると、女子大学の中で、幼稚園教員、保育士採用が西日本1位、小中学校、高校教員採用が西日本6位という結果が出ています。
大学40周年を迎えるのを機に宣言した学生成長を促進するための教育戦略が、学内の座学・オンキャンパス教育と、社会活動や課題を持って外に出て自分を磨く・オフキャンパス教育との融合を図ろうというものでした。かなりの割合の学生がキャンパス外での活動を行っています。両方の相乗効果で学生たちが成長していっていると思っています。
―中高卒業後、難関大学への進学も多いそうですね。
山根 今年の実績では、国公立に62名、私学に234名、私学の中では関関同立に多く進学しています。特に、医学系、薬学系への進学が多いのが親和の伝統です。
―中高の同窓生も活躍していますね。
山根 医師、弁護士、建築家、芸術家、大学の先生など、前・尼崎市長の白井文さんも卒業生です。皆さんもよくご存知なのが女優の藤原紀香さん。サバサバっとしていて、しっかり者という親和のイメージそのものです。日本の社会はまだまだ女性が進出する風土にはなっていませんが、親和学園出身者はそういう社会でも活躍してくれています。関西財界人の奥さまとして陰でご主人を支えているという女性も多いですよ。
―今の課題をお聞かせ下さい。
山根 大学は偏差値が上がり、急成長してきています。ですが、社会の評価があまりに急速に高まるのは好ましくないと思っています。教育は時間を要する成果ですから、少なくとも10年の時間はかけて、卒業生が頑張っているといえるところまでじっくりと育てていくものと考えています。特に大学教員については数を増やすという第一段階から、質を高める、教育力を高めるという段階に入っています。
学生には多民族が集まる国で学んで欲しいと、カナダ・韓国・イタリアなどの先端の教育を行っている小学校と協定を結びました。中でもカナダのトロンロ大学附属小学校では10年以上前から教育実習を行っています。参加した学生は確実に力をつけて帰ってきています。
―今後の展望としては。
山根 私は広報担当理事としても、親和の良さを地道に知ってもらおうと思っています。神戸新聞でも学園の歴史や特徴についてコラム掲載を始めました。中高では有名大学への進学率だけでなく、長い伝統に支えられたオーソドックスな全人教育の実績を社会に伝えていこうと思っています。また大学では、私や学長も含め教員が千校以上の高校に足を運び、説明して神戸親和女子大学の教育を理解いただいています。親和ファンも非常に増えてきたように思います。
124年の伝統を守ることはもちろん大切なことですが、そのためにはいいものは伝えていくという広報が欠かせないと思っています。一方で、さらに教育の目標を明確にし、それを実現する具体的な計画を策定する作業を進めています。つまり、学園の10年構想5カ年計画を立てようとしています。
―これからも女子教育に特化していくのですか。
山根 それが親和の伝統ですから、共学の道を選ぶという選択肢はありません。
山根耕平(やまね こうへい)さん
学校法人親和学園学園理事長
同志社大学大学院文学研究科博士課程哲学専攻単位取得退学。1985年親和女子大学(現、神戸親和女子大学)専任講師。1992年~1993年8月トロント大学大学院在外学術研究。同大学教授、神戸親和女子大学学長をへて2009年~現在、学校法人親和学園理事長。

女子大学の中で、幼稚園教員、保育士採用が西日本では1位を獲得した。
(朝日新聞出版「2012年版大学ランキング」)

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