神戸市医師会公開講座 くらしと健康 47

新しい医薬品の開発に欠かせない治験
何においても安全と倫理を最優先に

―治験とは何ですか。
 厳密に言うと、治験とは医薬品もしくは医療機器の製造や販売に関し、薬事法上の承認を得るために必要となる臨床試験(人における試験)のことですが、今回は医薬品についてお話しします。
 医薬品の開発にあたり、「薬の候補」が安全であるのか、効果があるのかを確かめる必要がありますので、臨床試験がおこなわれます。この臨床試験は通常、フェーズⅠからフェーズⅢまで段階的に、それぞれの目的に応じておこなわれ、そのデータをもとに医薬品の使用が国に承認されます。

―日本は治験のスピードが遅いといわれているようですが。

 製薬業界もグローバル化が進み、医薬品メーカーのマーケットは世界的規模になっています。医薬品メーカーにとって新しい薬の開発は投資ですから、企業としてその投資分をすみやかに回収したい。そこで、新薬をいち早く世界市場に供給するために、世界各国で同時に開発・治験するのが主流になっているのです。つまり、治験のグローバル化が進んでいるのです。
 しかし日本国内では医薬品開発のためのインフラが立ち後れていると指摘されています。治験が海外で先行されたり、海外で承認されている薬が日本で未承認だったりなど、いわゆる「ドラッグラグ」という現象もみられます。
 そこで、国が治験基盤整備をおこなうようになり、2004年度から日本各地に地域治験ネットワークが構築されました。これにより、各地域の医師会や大学の医学部が核となって一般の医療機関での治験の実施する地域協同型治験の体制が強化されました。

―神戸市医師会でも地域協同型治験はおこなわれているのでしょうか。

 神戸市医師会では、医療産業都市構想がスタートした際に、中核施設である先端医療センターに協力できることの一環として地域協同型治験の検討がはじまり、2008年から開始しました。
 神戸市医師会では、一定の基準にもとづいて独自の枠組みを設けています。多くの治験を薬品メーカーから請け負うには、メーカーにとって速く確実で合理的であることが重視されがちですが、神戸市医師会としては市民を守ることが第一だと考えています。ですから、安全面や倫理面で不適切なものを一切排除します。
 そのために、治験の依頼を受けたら、最初に医師会の共同治験審議会で治験のリスクの有無、安全・安心かどうか、倫理的に問題がないかを協議・検討することが原則になっています。ですから、神戸市医師会を通じて治験にご協力いただける市民のみなさまには、ご安心いただけると思います。

―神戸市医師会が治験においてもっとも重視していることは何ですか。

 何よりも安全性と倫理性です。用法や用量によって薬は毒になる可能性も秘めていますから、安全面においては細心の注意を払って治験がおこなわれなければいけません。
 また特に、治験の段階のフェーズⅠでは健常な人を対象に安全性の試験をおこないますが、何らかの対価と引き替えにリスクを負わせることについて倫理的問題を慎重に検討しないといけません。
 近年ではマイクロドージングという、微量の薬剤と放射性同位体を結合したものを投与してその分布動態を調べる手法が開発され、経済産業省が中心となって導入されようとしていますが、その安全性がどのように証明され、倫理性がどのように判断されるのか関心をもって注意深く見守っています。
 確かに治験のスピードや効率性も大切なことかもしれませんが、その前提として当然、安全と倫理が担保されるべきであると考えています。

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白 鴻泰 先生

神戸市医師会理事
海岸診療所院長


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目次 2011年6月号