食を通して社会に貢献する

株式会社トーホー 
代表取締役社長 上野裕一さん

 

―私たちになじみの深い「トーホーストア」ですが、「健康で安心な地域の冷蔵庫」というコンセプトの実現のためにどういう努力をされていますか。
上野 生鮮3品やお惣菜、日配食品などを中心に、地域のお客さまに毎日のおかずをきちんとご提供できる店づくりをしています。「あなたの街の食品スーパー」と私どもは言っていますが、お客さまの多くが各店舗の1キロメートル圏内にお住まいの方で、自転車や徒歩でいらっしゃいます。地域のお客さまにご自宅の冷蔵庫がわりに毎日便利にご利用いただいています。

 

―兵庫県南部地域でもまだ出店していない市や地域がありますが、今後の予定は?
上野 兵庫県南部が主力といっても店舗があるのは8市だけです。ピークだった1987年には69店舗ありましたが現在は42店舗。阪神・淡路大震災の影響などもありますが、開発が少し遅れてきたというのも否めない事実です。他府県から進出してくるスーパーも多くて、窮屈な状態になっていますが、居抜物件も含め、出店用地の開発に力を入れています。

 

―他社との差別化のためにはどういう努力をされていますか。
上野 できる限り地域密着の店づくりを心がけています。兵庫県にお世話になってほぼ50年。「兵庫県のことを一番良く分かっているのはトーホーストア」というぐらいにならなくてはいけません。そこで、直営のトーホーファームの新鮮野菜の取り扱いをはじめ、地産地消の推進などにも積極的に取り組んでいるところです。

 

―トーホーフードサービスをはじめ業務用食品卸売事業の展開もされています。卸先は主にどういうところですか。
上野 いわゆる外食産業です。テーマパーク、ホテル、居酒屋、レストラン、喫茶店、事業所・病院給食、弁当仕出し屋、スーパーの惣菜など、かなり広範囲のお得意先さまに納入させていただいています。

 

―売上構成比が大きいのはどちらの事業ですか。
上野 業務用食品卸売に係る事業は全国規模で展開しているため大きなウェイトですね。食品スーパー事業が占めるのは16%程度です。

 

―これからも業務用食品卸売事業に重きをおくのですか。
上野 ここ数年事業の選択と集中を徹底的に進め、私どもが他に負けない強みを持つ事業として、業務用食品卸売事業、業務用食品現金卸売事業、食品スーパー事業、業務用コーヒー事業を4つのコア事業として絞り込みましたので、このすべてに力を入れます。
 食品スーパー事業では、昨年、福岡県から撤退しましたが、兵庫県では成長させていく計画です。特に高齢化が進む地域ではスーパーが撤退し、買い物できる店もありません。そういう地域に出店して、十分に成り立つ店づくりを私たちの企業努力でやっていくことが、お世話になった地域への恩返しになります。大きな店をつくろうという発想ではなく、小さくてもいいから毎日のおかずの材料を提供して利便性を追及したいというのが、昔からの私どもの理念です。

 

―地域貢献にもなりますね。
上野 食というのは文化ですから、地域によって全く違います。その地域をよく理解した店舗運営をすることが地域への貢献につながり、また会社の生き残りにもつながると考えています。

 

―安心・安全の取り組みや環境活動、食育・食農などにも力を入れていますが、こういう活動はいつ頃からですか。
上野 本格的な取り組みは、1995年に、2代前の社長が「安心・安全、健康、環境」をキーワードに定めてからです。私は後にそれに「美味しさ」を付け加えました。
 安心・安全な食を提供するために業界に先駆けて品質保証部をつくったのが1995年、環境に関する国際規格ISO14001を取ったのが1999年です。

 

―大人気の「楽農レストラン育みの里かんでかんで」は、どういった経緯で作られたのですか。
上野 社団法人兵庫みどり公社さんが、兵庫楽農生活センター(神戸市西区)を開設するにあたり、私どもがコンペに参加した結果、やらせていただくことになりました。
 レストランでは直営のトーホーファームやセンター内で収穫された野菜、地元の食材を中心に50種類以上の創作料理をブッフェスタイルで提供していますが、旬や鮮度にこだわっているせいでしょうか、お陰さまで大人気です。  
 昨年12月には農林水産省主催の「第3回地産地消給食等メニューコンテスト」で農林水産大臣賞を受賞することができました。その際、廃油はバイオディーゼルに、生ゴミは肥料化するなど廃棄物ゼロの運営を行なっていることも評価をいただきました。

 

―育みの里かんでかんでの運営以外にも「食育・食農」に取り組まれていますが。
上野 兵庫楽農生活センターでは地域の皆さんがご家族で露地野菜栽培や里山再生を体験できる活動も行なっています。
 CSR活動に前向きに取り組むことは、企業の社会的責任を果たす意味でも重要ですが、地産地消など社会のニーズに符合したことをきちんとやって、社会に認めてもらうことで従業員の誇りになり、モチベーションアップにもつながる大切なことです。

 

―2008年には持株会社制にされましたが、そのメリットは?
上野 まず当社グループのコア事業が何かを明確にすることです。卸と小売という、相反する事業を同じ会社でやるというのは難しく、卸は全国規模でどんどん伸びていますから、地域限定の食品スーパーの社員は肩身の狭い思いをしてしまいます。これは良くないと、完全に独立して、食品スーパーもトーホーのコア事業であるという思いでもう一度巻き返して欲しいと分社化しました。毎年、5店舗を改装し新店舗も2店出し、会社として本気を示しました。大成功でした。

 

―ところで、上野社長は30代でトーホーに入られたそうですが、当時、ここまでの大企業になると思っていたのですか。
上野 私は、東京の出版社で雑誌の編集をしていました。その後、1984年にトーホーに入社しました。当時はここまで大きな会社になるとは思ってもいませんでした。入社後は、在庫管理を任され、欠品のない体制の基盤づくりとしていろいろなルールをつくり、マニュアル化をしました。その当時、業務改善を進めるためにコンピュータも導入しましたし、本当に苦労しました。

 

―苦労のかいあって、いい会社になりましたね。
上野 私の信条は「認める、信じる、任せる、褒める」です。従いまして、権限委譲を徹底しました。トーホーも今や4千人規模、全国に約230もの拠点を持つ企業です。全てを一人で掌握などとてもできません。それぞれに権限と責任を持ってもらうのは時代のニーズでもあります。

 

―東日本大震災の影響は?
上野 一部子会社は影響を受けましたが、被災地を思えば大したことではありません。東日本が苦しんでいるのなら、私たちが頑張って税金を払って、資金を回していくようにしなくてはいけません。

 

―さて、トーホーグループの今後についてお聞かせください。
上野 理念経営を徹底したいと思っています。経営理念「食を通して社会に貢献する」を徹底して実践し、会社を成長させ、税金を納め、雇用を維持拡大していくことが最大の使命と捉えています。今後もお客さま、仕入先さま、株主さま、社員・従業員、そして地域社会に信頼、支持していただける会社を目指し、さらなる成長を図りたいと考えています。

 

兵庫県内に42店舗を構える「トーホーストア」

兵庫県内に42店舗を構える「トーホーストア」

 

「楽農レストラン 育みの里かんでかんで」は、地元の食材を ブッフェスタイルで楽しめる人気スポットになった

「楽農レストラン 育みの里かんでかんで」は、地元の食材を
ブッフェスタイルで楽しめる人気スポットになった

 

20110602401

 

20110602301

 

CSR活動の一環として取り組む露地野菜の栽培体験(兵庫楽農生活センター)

CSR活動の一環として取り組む露地野菜の栽培体験(兵庫楽農生活センター)

 

上野 裕一(うえの ゆういち)

株式会社トーホー 代表取締役社長
福岡県出身。74年九州大学経済学部経済学科中退、同年全国加除法令出版㈱入社、84年㈱トーホー入社。96年初代経営企画室長。取締役、取締役常務執行役員を経て07年代表取締役社長に就任。09年㈱トーホーストア代表取締役社長も兼務。持株会社体制移行、事業の選択と集中、M&Aなど企業体質強化に精力的に取り組んでいる。


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目次 2011年6月号