「布引渓流の水」は赤道を越えても腐らないと評判となる。布引の水は「日本名水100選」にも選ばれている。写真は布引の滝

より安全でおいしい水道水をめざして

Interview
神戸市水道事業管理者 神戸市水道局長 
大森 伸一さん

 

神戸市の水道事業の現状について

 

―神戸市の水道水供給事情について教えて下さい。
大森 神戸市の場合、自己水源として、布引貯水池、千苅貯水池、烏原貯水池と三つの貯水池がありますが、全体の23%の水道水しか賄うことができません。残りは水を買わなければならないのですが、このほとんどを尼崎、西宮、芦屋、神戸の四市からなる阪神水道企業団によって供給されている淀川水系の水を購入しています。その他、兵庫県水道用水供給事業からも購入しており、全体で一日約90万トンの供給能力があります。

 

―水道料金を抑えるためにどのような努力をしていますか。
大森 平成20年度に策定した「神戸水道ビジョン2017」の実現を目指し、目標を定め、様々な経費削減、効率化などを図っています。給水収益は年々減少傾向にあります。特にリーマンショックによる落ち込みは大きく、今も響いているのが現状です。一方、施設の経年化等により設備投資などの支出はどんどん増えていますが、神戸市水道局では平成9年以降水道料金の改定はしていません。
 六甲山のふもとに広がる神戸は坂が多いまちですから、水を坂の上に上げるポンプ施設と水を一旦貯めておくための配水池が数多く必要です。そこから自然流下方式で、まち全体に適切な水圧で届けています。水道事業には不向きな地形をしたまちなのです。
 テレメータ・テレコントロールシステムで市内全域の配水池の水量データを集中管理するなど、様々な効率化に取り組んでいます。

 

災害に強い水道について

 

―緊急貯留システムを整備し、市街地の地下に大容量送水管を造っているそうですが、それはどのようなものですか。
大森 現在、阪神淡路大震災で得た教訓をもとに、「神戸市水道施設耐震化基本計画」を策定し、災害に強い水道づくりを進めています。具体的には、配水管の耐震化、緊急貯留システムの整備及び大容量送水管の整備を行っています。
 「緊急貯留システム」は、市内各所に飲料水を貯める貯水槽などを整備し、災害時には応急給水拠点として活用するものです。これにより、災害直後の応急給水に必要な飲料水を確保することが可能になります。
 また、「大容量送水管」ですが、神戸市では、これまでは淀川から六甲山の山裾に二本の送水管を通していたのですが、経年化しており水を送るだけで溜めることはできない構造のため、何かあれば断水してしまう状態でした。それを解消するために、いま市街地の地下に直径2.4メートルの大規模な送水トンネルを布設中です。
 このトンネルは送水だけではなく、5万9千トンの水を貯水できるようになっています。高い耐震性と大きな貯水能力により、災害時も応急給水や早期復旧が可能になります。現時点で81%まで工事は進んでおり、平成25年度には完成予定です。
 布引、王子、奥平野で工事が進んでいますが、地下の深いところで行われているので、普段皆さんの目には付かないと思います。

 

―阪神淡路大震災の経験や教訓はどのように生かされていますか。
大森 震災を経験し、水の大切さを身に染みて感じています。16年前の震災では、長いところで10週間も断水してしまいました。神戸市では、その当時いただいた市民の声をベースに耐震化に取り組んでいます。断水中は給水車を出すなどの対応もしましたが、神戸市だけでは間に合わず、様々なところから助けてもらいました。
 この度の東日本大震災では、感謝の気持ちを込めて、当初、神戸市からタンク車4台と職員14名が支援に駆けつけました。現在は、岩手県において、応急給水活動のほか、水道の復旧支援活動も行っています。

 

安全でおいしい水について

 

―現在行っている水質管理について教えて下さい。
大森 我々の使命は「安全でおいしい水を安定して供給すること」です。水質の測定は水源21カ所、浄水場21カ所、阪神水道企業団と県営水道の受水点5カ所、接合井及び配水池15カ所、市内給水栓30カ所で行われています。
 現在、水質試験所では、法律で定められた項目を含め、200項目以上の水質検査が、最新の機器によって行われています。

 

―水質試験所が取得しているISO9001とISO/IEC17025にはどういう意味があるのでしょうか。
大森 水道水に対するより一層の安心と信頼をいただくため、平成17年に品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001を取得し、さらに平成21年には試験所認定の国際規格ISO/IEC17025を取得しました。この二つの国際規格により検査業務の改善を図り、水質管理体制を強化しています。

 

―おいしい水の要件と水質の関係について教えて下さい。
大森 塩素の基準は法律で決まっていますが、入れすぎると塩素臭くなってしまいますので、必要最小限にしています。水道水のおいしさは温度と関係があります。やはり冷たい水の方がおいしいですね。あと沸騰させると塩素は抜けますので、一度沸騰させた水を冷やして飲んでいただくと良いかもしれません。
 ただ昔は水道水はおいしくないイメージがありましたが、いまはそんなことはありません。平成13年から神戸市の大部分の水は、オゾン・活性炭処理を加えた「高度浄水処理水」になっています。これによりかび臭はほぼ100%取り除かれ、飲料水としても高いレベルの水が供給されています。

 

水道に親しんでいただくためのPRについて

 

―昔から「布引渓流の水」は赤道を越えても腐らないと評判でしたが、水道局ではボトルドウォーター「神戸の水だより〜布引〜」を製造・販売されていますね。
大森 神戸市の近代水道は、明治33年、全国で7番目に整備されました。当時の水源が布引の貯水池で、これを船に積んでいたのですが、長い航海にも傷まない水として評判を呼んでいました。
 布引の水は「日本名水100選」にも選ばれています。ボトルドウォーター「神戸の水だより〜布引〜」は、平成18年8月から販売しています。売上の一部は、水源環境の保全に活用されています。さらに水道事業に親しんでもらうためのツールとして、イベントなどでは無料で配布しています。この度の震災でも、支援物資として東北に1万本送らせていただきました。

 

―「水の科学博物館」はどのような施設ですか。
大森 奥平野浄水場の敷地の中にある施設で、水道事業の広報啓発拠点となっています。水の大切さ、水道について知って、触れて、体験しながら学べる博物館であり社会教育的な側面ももっています。
 現在、市立の小学4年生の4分の3がこの施設を訪れており、実験的、科学的なことで、水道水について学べるようになっています。近隣の神戸山手大学とも共同でイベントも開催しています。また、歴史的な建物として登録有形文化財にも指定されています。

 

―「デザイン性のある水飲み場」設置の趣旨や経緯について教えて下さい。
大森 新たな水事業の喚起を目的とした、蛇口から直接冷水が飲める施設です。平成22年3月に北野と有馬に、デザインから設置まで地域と一緒になって行いました。
 北野ではコンペによってデザインを決定し、有馬では神戸芸術工科大学のデザインを採用しました。北野と有馬はどちらも観光地であり、街のイメージアップにもつながっていると思います。現在、その効果などを検証中で、この成果を踏まえて今後の展開を考えていきたいと思っています。

 

神戸市では、これまでは淀川から六甲山の山裾に2本の「大容量送水管」を通していたが、いま市街地の地下に直径2.4メートルの3本目の大規模な送水トンネルを布設中

神戸市では、これまでは淀川から六甲山の山裾に2本の「大容量送水管」を通していたが、いま市街地の地下に直径2.4メートルの3本目の大規模な送水トンネルを布設中

 

「緊急貯留システム」は、市内各所に飲料水を貯める貯水槽などを整備し、災害時には応急給水拠点として活用する

「緊急貯留システム」は、市内各所に飲料水を貯める貯水槽などを整備し、災害時には応急給水拠点として活用する

 

奥平野浄水場の敷地の中にある「水の科学博物館」は、水道事業の広報啓発拠点となっている

奥平野浄水場の敷地の中にある「水の科学博物館」は、水道事業の広報啓発拠点となっている

 

ボトルドウォーター「神戸の水だより〜布引〜」は、平成18年8月から販売を開始している

ボトルドウォーター「神戸の水だより〜布引〜」は、平成18年8月から販売を開始している

 

「デザイン性のある水飲み場」では、蛇口から直接冷水が飲める。コンペによってデザインを決定した。北野町にて

「デザイン性のある水飲み場」では、蛇口から直接冷水が飲める。コンペによってデザインを決定した。北野町にて

 

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大森 伸一(おおもり しんいち)

神戸市水道事業管理者 神戸市水道局長
昭和49年神戸市入庁。平成2年経済局主幹(産業立地推進担当)。平成12年港湾整備局参事。平成15年生活文化観光局次長。平成18年市民参画推進局市民生活部長。平成19年国際文化観光局長・観光監。平成22年水道事業管理者・水道局長


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目次 2011年6月号