神戸鉄人伝(こうべくろがねびとでん) 第69回

剪画・文
とみさわかよの

皮革工芸家
石田 満美(いしだ みつみ)さん

 

遠目には大きなカンヴァス絵、でも近くで見ると画布では無くて何やら凹凸が…はたして何人が、これが「皮革」で出来ていると見抜けるでしょう。皮革工芸家・石田満美さんは革を加工して、まるで抽象絵画のような大画面を創り上げます。皮革工芸というとバッグや小物を連想しますが、石田さんの作品は実にダイナミックで、皮の持つパワーに圧倒されます。昨年の神戸市文化活動功労賞に輝き、個展や指導に忙しい石田さんにお話をうかがいました。

―この作品、いったいどうやって作るのでしょう?

 
 大きな革を購入して、まず構図を考えて設計図を作りますが、革に対してそのサイズが可能かどうか、常に寸法を考えながら計画します。設計図通りに革を裁断して染め、凹凸を付ける作業をして、パーツを組み合わせて完成させます。

―材料の革はどのようにして入手するのですか?

 豚革は東京方面、牛革は全国の90%近くが兵庫県産と言われています。私も以前、姫路から購入していたこともありましたが、今は東京から仕入れています。私の場合、オリジナルな一品ものを創るため、靴やバッグの職人さんのように同じ皮革を大量に仕入れる必要はありません。東京では牛や豚、山羊や羊に爬虫類など国内外のいろいろな皮革が少量でも入手できるので、私も時々仕入れに出向いています。

―皮革工芸を始められたきっかけは何だったのでしょう。

 高校1年生の時、夏休みの宿題でろうけつ染めの作品を作ったのが始まりです。染めるのが楽しくて、布だけでなく革も染めるようになり、染めた革を叩いて成形して…と、どんどんのめり込んでいきました。様々な先生にレザークラフトの技法を教わり、今は独立して三木の自宅の工房、神戸や加西、明石などで教えています。

―実用品から、アーティスティックな作品に転じたのは?

 やはりいろいろ表現したくなったからでしょうね。デッサンも習いました。でも皮革作品を作るのは、絵画を仕上げるのとまるで違います。写実ではなく抽象表現になりますので、どちらかというとデザインの要素が大ですね。いまだに悩みながら、手探りでやっています。

―革を使った抽象画は独特で意表を突く作品ですが、皮革に魅かれたのは何故でしょう。

 確かに関西では珍しいかもしれませんが、皮革を用いる作家は東京には多いですし、表現も多彩ですよ。皮革は応用範囲の広い素材です。何より重厚さがあって、大胆な表現ができるのが魅力ですね。同じ表現でも、私は刺繍のように細かい作業や、同じことを繰り返すのは苦手なので…。自分の気質にぴったりはまる素材が、皮革だったということでしょうか。

―今後の抱負と、予定されているお仕事などは?

 これまでも、これからも、ただひたすらやるのみです。10月に渡仏して、パリとサンシールで書の作家、錫の作家と一緒に展覧会を開催します。皮革文化は大陸のものですから、その本場で受け入れてもらえるか。農耕民族の日本人が創る皮革作品は、どんなふうに評価されるのか。心配ではありますが、一生懸命やり遂げて来ます!

 

趣味で始めた手工芸がいつしか大作となり、作品としての評価を得るまでになった石田さん。絶えず前進する姿勢が印象的でした。

           (2015年7月23日取材)

とみさわ かよの

神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。平成25年度神戸市文化奨励賞、平成25年度半どんの会及川記念芸術文化奨励賞受賞。神戸市出身・在住。日本剪画協会会員・認定講師、神戸芸術文化会議会員、神戸新聞文化センター講師。


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目次 2015年9月号