2014年度開業予定の医療法人社団神戸国際フロンティアメディカルセンター、KIFMEC

患者のニーズを第一に

医療法人社団 
神戸国際フロンティアメディカルセンター
理事長 田中 紘一さん

神戸メディカルクラスターの中で大きな役割を果たすことになる「医療法人社団神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)」が2014年度開業に向け動き始めた。

―KIFMECはどんな病院ですか。
田中 現在、日本の医療の中心となっている総合病院とは少し違った役割を担う病院です。胃、腸、大腸等の消化器系疾患、肝臓・胆のう・膵臓疾患に特化して診断・治療を行う120床の専門病院です。このうち20床は、今まで特に力を入れてきた生体肝移植に当てる予定です。
―重症患者対象ですか。
田中 決してそういうわけではなく、病気そのものの新しい診断と治療の方法をすすめます。ただし大学病院を始めその他研究機関とは違った形で、臨床の質を高めるための研究や新しい医療機器開発のための研究も行います。
―実現まで時間がかかりましたね。
田中 既存の医療法人の発展形や分院というわけではなく、「ゼロからの出発」でしたからね。全く新しい病院をつくることは難しいにもかかわらず、実現できた理由は、産官学で神戸の医療産業都市10年後のグランドデザインを検討する中で、「医療の現場の活性化」の重要性が問われ、なかんずく海外、特にアジアの拠点となる専門病院群の設立を定めたからです。
―メディカルクラスターの中で担うKIFMECの役割は。
田中 神戸市立医療センター中央市民病院を中心に、先端医療センター、その他専門病院が相互に連携を取りながらメディカルクラスターを構成する中の一つとして位置付けられています。近隣には、神戸低侵襲がん医療センター、西記念ポートアイランドリハビリテーション病院、チャイルド・ケモ・ハウス、県立こども病院もやってきます。医療機器開発や再生医療も成果を上げ始めると、先端医療センターが臨床応用へのトライアルの役目を担い、高度専門医病院での臨床が可能になります。私達もその一翼を担いましょう!というものですが、日本中どこにもないパラダイムですので、ご理解いただくには時間がかかってしまいました。

海外に向けて開かれる医療

―田中先生の長年の実績の結果ですね。
田中 小児外科が専門の私は、生まれながらにハンディキャップを持った子供たちの手術をしていましたが、肝臓移植以外に治療法がない胆道閉鎖症の患者さんは、海外に送り出さざるをえませんでした。関係する人達にとってそれは並大抵の苦労ではなく、「日本の医療はこれではいけない」という思いを持ち、生体肝移植を新しい医療分野として切り拓き治療学の一つとして確立させました。
―当時から、海外各国との連携も考えておられたのですか。
田中 京都大学へはアジア、中東、欧米各国からたくさんの医師達が学びに来ました。こちらからも出かけて行き、生体肝移植導入を応援しました。長年の国際医療交流の実績というバックグランドがあるからこそ、海外の医療機関と連携ができました。シンガポールのマウント・エリザベス病院との連携もその一つです。医療のノウハウを共有してお互いに医療の質を高めることが、ひいては患者さんのためになると考えています。
―日本にも海外からの患者さんが治療にやって来ることになるのですか。少し不安もありますが…。
田中 そうです。しかし、「いつでも、どこでも、だれでも」という日本の医療の基本は絶対に欠かせないものです。日本ではお金をたくさん持って来た患者さんが優先されるということは決してないのと同じように、海外から患者さんが来られても、きちんと日本のルールは守っていただきます。
―海外に向けて開かれる医療のメリットはありますか。
田中 日本の優れた医療をオープンにすることで、海外からはリターンを得られます。同時に、各国からやって来る患者さんに手を差し伸べることで日本の評価が高まり、それが日本の活性化につながるはずです。医療機器も然りです。KIFMECでは日本製の機器を主に使う予定です。海外から来る人達に、日本にも素晴らしい医療機器があることを知ってもらえます。日本の医療機関は、もっと日本の医療企業を育てていく努力をしなくてはいけませんね。
―神戸にとってのメリットは。
田中 私の印象では、昔に比べて神戸は国際色が少なくなったようですね。メディカルクラスターへ海外から研究者や患者さんが来ることによって異文化の人達が交流し、国際都市神戸の新たな良さがつくられるのではないでしょうか。
―神戸の都市力発揮のしどころですね。
田中 ところが!東京、愛知、大阪など他都市も追い上げてきていて、神戸はちょっと遅れつつあります。これは由々しい問題です。「国際都市神戸をつくろう」という市民皆の高い意識が必要です。

志高く雑巾がけ

―病院運営についての方針は。
田中 日本と海外の病院との大きな違いはマネジメント力です。医師や看護師を始め医療スタッフとマネジメントスタッフのチームワークで運営していかなくてはいけません。リーダーシップをどう発揮するのかが課題でしたが、幸い私には今までの実績があります。もう一つは「志高く雑巾がけ」の精神です。理想を掲げるだけでなく、皆と一緒に汗をかかなくては良いものはつくれません。
―スタッフは集まりましたか。
田中 まずは同じ思いを持つ人材が集まってくれました。今後、順次3年ほどかけて目標に近づける計画を立てています。
―思い描く将来像は。
田中 新しい病院は、病院担当とイノベーション担当という2つの組織を置き、その間で橋渡しをするファシリテーション部が常に双方の調整役になるという仕組みを作っています。また年1回、正しい方向に進んでいるかを外部評価委員会で検証していただきます。働く人がワクワクできる環境づくりも大切です。忙しすぎてイライラしていては患者さんに満足を提供できませんからね。
 「患者のニーズを第一に、チーム医療に徹し、学び成長し、イノベーションを創出する」。新しいものを立ち上げる今の思いを、組織の中に染み込ませておきたいと思っています。後に続く人たちが受け継いでいけるように…。
―今までには無かった病院ですね。ぜひ、良い病院に育てていってください。期待しています。

ポートアイランドを拠点とするメディカルクラスターの一翼を担う

ポートアイランドを拠点とするメディカルクラスターの一翼を担う

KIFMECとは

2013年3月29日に行われた起工式

2013年3月29日に行われた起工式

20130603502

医療法人社団 神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)

住所 兵庫県神戸市中央区港島中町6丁目1番地 神戸商工会議所会館9F
TEL.078-302-0555

20130603302

田中 紘一(たなか こういち)

医療法人社団 神戸国際フロンティアメディカルセンター 理事長
1942年生まれ。京都大学医学部卒。同大学附属病院長を経て、2005年先端医療センター長に就任。2009年から2012年まで公益財団法人 神戸国際医療交流財団理事長。2013年4月、医療法人社団 神戸国際フロンティアメディカルセンター理事長。生体肝移植の権威。


ページのトップへ

目次 2013年6月号