芸術文化がすぐそばにある神戸の暮らし

ダニエル・アヴィオラさん

 

〝日本好き〟にしてくれた高野山と弘法大師

 

―初めて来日された時の印象は?
アヴィオラ 副総領事として初めて日本へ来たのは1974年。私は神戸の青谷に住み、領事館がある大阪へ通っていました。当時の日本は高度成長期で、国中で都市化が進み、工場からはすごい煙がもくもく。正直言って、印象は良いとはいえず、逃げ出したいといつも思っていました。

 

―長年住むほどに日本を好きになれたのは何故ですか。
アヴィオラ 日本が好きになったきっかけは、友人が高野山に行ってみては?と勧めてくれたことです。以来100回以上、訪ねています。高野山は非常に密教的な雰囲気のある場所で、日本はいい国だなと思えるようになりました。弘法大師の寛容な心に惹かれ研究を始めました。和の精神と寛容性をもった日本人の良さにも気づかせてくれました。

 

―日本人以上に日本の芸術文化に造詣が深いとお聞きしましたが…。
アヴィオラ 能楽や浄瑠璃など日本の芸術文化にも非常に興味をもち、これも研究を始めました。神戸外国倶楽部では親交のある能楽師・梅若猶彦を招いて上演をしました。人形浄瑠璃文楽についても語れる外国人も珍しいのではないでしょうか(笑)。

 

―日本以外でも外交官として活躍されましたが印象深い国や時期は?
アヴィオラ 東西ドイツ統一に代表される東欧の民主化は印象深い時代です。当時は外務省財務局に勤めていましたので、東欧諸国のポーランド、チェコ、ハンガリーの民主化を進めるために、経済面で大きな支援を行いました。統制経済の下では価格が決められていますが、市場経済への移行を促進するために生鮮食料品を扱うマルシェを整備していくことに力を尽くしていました。
 その後、参事官としてギリシャに赴任しました。アテネはプニクスの丘に民衆が集まり誰もが平等に議論を交わしたといわれる民主政治誕生の地です。地理的にも古代の三大文明が交差する要衝の地にあったギリシャは高度な文明や芸術文化が発達しました。最近は問題を抱えた国とされていますが、私にとっては敬意を表するべき国のひとつです。

 

住空間づくりに配慮したのは人と人との関わり

 

―今のお住まいは?
アヴィオラ 相楽園近くのマンションに住んでいます。兵庫県庁が見えるロケーションで、親交のある井戸敏三知事には「ちゃんと仕事しているかいつも見ていますよ」と話しています(笑)。
 母国スイスにもアルプス山脈の近くに150年前に建てられた石造りの邸宅を所有しています。バカンスのシーズンには、必ず帰国するようにしています。自然にあふれた住環境は、神戸との共通点でもありますね。

 

―住空間では、どんな点にこだわりを持っていますか。
アヴィオラ 人生を有意義に過ごすためには、人と人との関わりを大切にする必要があります。そのため、快適にコミュニケーションを図れる空間づくりに配慮しています。約170平方メートルの中で、リビング・ダイニングを広く取っています。お客様を招いてサロンの役目を果たすスペースです。ただしキッチンは、調理する様子がお客様の目に入ったり、匂いが漂ったりしないように区切っています。

 

―その他のこだわりはございますか。
アヴィオラ 主寝室でしょうか。ここにではトレーニングを行えるよう広めのスペースをとっています。毎朝必ず約30分間トレーニングを行い、健康維持のために努めています。お客さんも多いので、ゲスト用の寝室は2つ用意しています。その他、幅5メートルもあるクローゼットを設けており、お越しになった方々から驚かれます。

 

―外交官時代に集めたアンティークな家具なども多いと伺いました。
アヴィオラ 外交官時代に集めた世界のアンティークな家具や小物は、私の生涯の宝物です。ですから自宅の至るところにディスプレイしています。中にはルイ15世時代に作られた350年以上前のテーブルや椅子もあります。日本の陶器にも興味をもっており、特に丹波焼は気に入っています。シンプルでありながら洗練されています。多くの日本文化に見られるように、調和の素晴らしさに心を惹かれます。部屋にディスプレイしていると心が落ち着きます。

 

―今後してみたい住まいづくりはございますか。
アヴィオラ 庭園を造ってみたいですね。私の好きな高野山の金剛峯寺には、日本で最大の石庭があります。サイズはコンパクトでも日本庭園を造ってみたいですね。

 

関西在住の外交官のほとんどが神戸、阪神間に住んでいる

 

―神戸に暮らすことの良さは?
アヴィオラ 関西在住の外交官のほとんどが神戸・阪神間に住んでいます。丘陵地帯で気候が良く、空気がきれいなのが魅力だからでしょうね。海と山が近く、山歩きの遊歩道が整備され、アマチュアでも山登りが手軽にできます。

 

―ショッピングや食については?
アヴィオラ 三宮や元町などアーケードのある商店街がいいですね。海外の街にはあまりないのでとても興味深いものです。国際的で多様性のある食はもちろん魅力です。

 

―芸術文化については?
アヴィオラ 私が思う最も大きな神戸の魅力が、美術や音楽、演劇などの芸術文化が普段の暮らしのすぐそばにあることです。今年は、日本とスイスの修好通商条約締結150周年でしたが、神戸市立博物館では「チューリヒ美術館展」、兵庫県立美術館では「ホドラー展」を開催することができました。海外には滅多に出ない作品も多く展示されました。神戸で開催し、神戸の人たちに観ていただけたことはとても良かったと思っています。

 

―今後もスイスと日本、そして神戸との懸け橋としてご尽力ください。ありがとうございました。

 

日本を好きになるきっかけとなった高野山に、アヴィオラさんは 100回以上足を運んでいる

日本を好きになるきっかけとなった高野山に、アヴィオラさんは
100回以上足を運んでいる

 

現在は、神戸市中央区の日本庭園が美しい相楽園の近くに住まう

現在は、神戸市中央区の日本庭園が美しい相楽園の近くに住まう

 

神戸の自然にあふれた住環境は、母国スイスとの共通点でもある

神戸の自然にあふれた住環境は、母国スイスとの共通点でもある

 

三宮や元町のアーケードのある商店街も、海外には少ないので興味深く、 気に入っている

三宮や元町のアーケードのある商店街も、海外には少ないので興味深く、
気に入っている

 

神戸には、神戸市立博物館をはじめ芸術文化に親しめる施設が、 暮らしのすぐ側にある

神戸には、神戸市立博物館をはじめ芸術文化に親しめる施設が、
暮らしのすぐ側にある

 

「関西在住の外交官のほとんどが、神戸・阪神間に住んでいる」 神戸外国倶楽部にて

「関西在住の外交官のほとんどが、神戸・阪神間に住んでいる」
神戸外国倶楽部にて

 

ダニエル・アヴィオラ(Daniel Aviolat)

元立命館大学客員教授
元スイス総領事
1974~77年、在大阪スイス総領事館副領事。78~80年、ジェッダ(サウジアラビア)三等書記官。80~82年、ベイルート(レバノン)三等書記官。83~86年、シンガポール一等書記官。86~88年、モンロヴィア(リベリア)代理大使。88~90年、パリUNESCO代表部スイス政府次席代表。90~92年、在ベルンスイス外務省政務局。 92~97年、在アテネスイス総領事館参事官。98~2004年、在大阪スイス総領事。関西領事団団長を務めた。立命館大学客員教授として招へいされる(英語で学ぶ日本史講座)


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目次 2015年9月号