神戸市医師会公開講座 くらしと健康 70

安心して医療を受けられる環境は
医師と患者との良好な関係から

―近年、困った患者が増えているそうですが。
岡田 暴言や暴行などの不法行為を働く患者、いわゆる「モンスター・ペイシェント」が増えています。神戸市医師会が平成19年と20年におこなった実態調査では、神戸市内だけでも年間110件あまりの医療機関が何らかの被害に遭っていることがわかりました。平成19年には神戸で医師が患者に刃物で刺され重傷を負いました。この事件は治療をしたが思うようにいかず、逆恨みした患者が凶行に及んだものですが、医師会で検証したところ医師の治療には何の落ち度もありませんでした。ほかにも診療時間終了後に来た患者に診察できないと伝えたところ暴言を浴びせられ殴られた例、窓口で長時間暴言を吐いた例、脅迫や看護師などへのセクハラの事例もあります。また、診察や治療を受けてもその代金を支払わない患者も増えています。それも「治療が気に入らない」などの理不尽な理由が多く、結果的にほとんどの医療機関が泣き寝入りです。とある病院では未収金が年間約2千万円にものぼります。ひどいケースでは、病院で出産をしたのにその代金を支払わず退院しただけでなく、2人目の子どもも同じ病院で出産して再び支払いを拒否した例があります。しかし、法律で医療機関は来た患者を断ることができず、例え未払いがある患者でも診療拒否できないのです。
─わがままな患者の「コンビニ受診」も迷惑ですよね。
岡田 昼は混んでいるからなどと身勝手な理由で夜間診療や救急病院に来る患者が増えると、勤務医を必要以上に疲れさせます。タクシー代わりに救急車を利用するのは、本当に急を要する患者さんの医療の妨げになります。
─迷惑な患者が増えると、どのような悪影響がありますか。
岡田 まず何より、医療スタッフの士気がくじけます。患者の不法行為に遭ったスタッフには退職、中には自殺を考えるくらい追い込まれている方もいるのです。そして、他の患者さんにも多大な迷惑がかかります。また、コンビニ受診は勤務医を疲弊させるため、医師確保が難しくなり、医療崩壊にも結びつきます。現に県立柏原病院では医師の負担が増え小児科が縮小されましたが、市民がコンビニ受診をやめようという運動をおこし、それが奏功して小児科医が増えた事例もあります。みなさまの心がけで医療環境を救うことができるのです。
─診察を受ける際、どのようなことに注意すればよいですか。
岡田 別表の「新・医師にかかる10箇条」を参考にして頂けると良いと思います。いつどんな時にどのような症状が出るかなど伝えたいことをあらかじめメモしておいたり、診察の内容や薬の飲み方など聞いたことをメモしたりすれば、伝え忘れや聞き忘れを防ぐことができるでしょう。②や③は医師と患者という以前に人と人との良好な関係を築くために当然の礼儀です。④に補足ですが、お薬手帳をお持ちの方はぜひ持参して診察を受けましょう。
─医師と患者がより良い関係を築くために、大切なことは何でしょうか。
岡田 医師と患者という以前に、人と人としてのコミュニケーションが大切です。もちろん、合う合わないがあると思いますので、合わないと感じる場合は主治医を変えることも一考です。また、治療に疑問を感じる場合は他の医師の診察を受けるセカンドオピニオンを利用するのもひとつの方法ですが、その場合は主治医に正直に申し出て、これまでの検査結果や投薬履歴などの情報を記した紹介状を書いてもらうと良いでしょう。
─医師から患者のみなさんへお願いがありましたらどうぞ。
岡田 別表の⑨にもあるように、医療は必ず不確実性がつきまといます。したがって医療行為には限界があり、医師が最善を尽くしても必ずしも良好な結果を得られるとは限らないことをご理解いただきたいと思います。また、いま問題になっているのは、風邪などの軽症で大学病院などの大病院に行く方が増えていることです。大病院は本来、入院治療や重症の患者さんを診ることが中心ですので、まずはかかりつけ医の診察を受け、必要がある場合に大病院を紹介してもらうようお願いいたします。

新・医師にかかる10箇条

20130706401

岡田 泰長 先生

神戸市医師会副会長
岡田泌尿器科院長


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目次 2013年7月号