神戸鉄人伝(こうべくろがねびとでん) 芸術家男星編 第16回

剪画・文
とみさわかよの

ジャズピアニスト
小曽根 実さん

神戸と言えばジャズ、ジャズと言えばこの人!絶妙な演奏と軽妙なトークで聴衆を魅了して半世紀、神戸の誇るジャズピアニストの小曽根実さん。11PMで全国に名を馳せた後も神戸に活動拠点を置き、神戸っ子に「小曽根パパ」の愛称で親しまれる小曽根さんのジャズ人生は、紙面がどれほどあっても書ききれないほど。ほんのさわりをご紹介しますので、続きはコンサート会場のトークで!

―ジャズとの出会いは、どういったものでしたか?

まあ戦後いろんなものがやって来て、たくさんの新しいものを見た、その中にジャズがあった、と言うても過言やないわな。もともと僕は神戸の須磨の洋館住まいで、両親は戦前ロンドンに滞在してた。家には母のピアノがあって、見よう見真似でひくようになったのが10歳頃かな。戦後、我が家ではよく進駐軍のダンスパーティーが開催されていて、僕は知らず知らずのうちにジャズの音感を身につけたんやと思う。母が買ってきたレコードの「マイ・ハピネス」をピアノで弾いてみて、「弾けるやん!」と思ったのが僕のジャズの始まりや。

―ピアノやジャズの奏法を、誰かに習ったことは?

全く習ってません、だって僕らの時代はジャズの先生なんて居らへんのやから、音を耳で聴いて覚えるしかない。あちこちから頼まれてピアノ演奏を始めた頃は、楽譜も読めんかったよ。レコード聴いて、友達の演奏聴いて、覚えた曲を片っ端から弾いてた。ジャズは習うもんやない、一緒に演奏して体に入れていくもんや。今では楽譜も読めるけど、耳で音楽を覚える者にとって、楽譜は参考資料程度やな。

―全くの独学独習で、ジャズの世界へ飛び込んでいったわけですね。親には反対されたとか?

僕がピアノを弾くと、親父は「男がピアノなんて」と怒った。それで家にピアノがあるのに、学校の講堂で練習した。何でも「やれ、やれ」って強制されたらやる気しないけど、逆に「やめろ」言われたらやりたくなるでしょ。まあ僕は「やめろ」言われても、音楽が面白くて面白くて、やめられへんかったんやな。親父も渋々認めてくれて、11PM時代にハモンドオルガンも買ってくれた。僕のピアノは母の、ハモンドは父のおかげ。ほんと、両親には感謝してます。

―当時はディキシーが主流だったかと思いますが、今日のジャズはかなり雰囲気が違います。先日のコンサートで、「ゴチャゴチャした子音を抜いたら、モーツァルトになる」というお話をされましたが…。

今の時代は、和音が複雑になってる。モーツァルトは「ドミソ」だけで曲を作ったが、今時そんな曲を作る者は居ない。複雑な和音を「テンション」と言います。テンションをいかにきれいに響かせるか、不協和音をいかに協和音として響かせるかが、現代のジャズピアニストの義務。複雑な音を、いかにきれいに聴かせるかってことやな。ジャズも進化してるんや。

―今は指導もされていますが、「耳で聴いて覚えるジャズ」を、どのように教えておられるのでしょう?

音聴いて耳で拾え、これが原点なのは変わらない。そして僕に習っても、どこかで僕から外れて別のレールを敷け、と言ってる。生徒はのべ30人くらい、プロや半プロが多いね。クラシックの音楽家が趣味的に勉強したい、とか。教えるのに一番の難点はリズム感、それを「タイム」と言います。このタイムを身に付けさせるのが僕の仕事になるんやけど、こればかりはいくらメトロノームで勉強しても絶対にできない。僕とアンサンブルを一緒にやって、身に付けてもらうしかない。タイムは知らず知らずに体に入ってくるもので、アメリカ人はちょっとリズムとってもサマになってるわな。まあやってれば、絶対変わるよ。

―さて神戸は、秋にはジャズストリート、春にはジャズウォークなど様々なジャズイベントがあり、まちのジャズライブハウスでは毎晩演奏が行われています。みなとまちの小洒落た雰囲気には、やはりジャズが似合う気がしますね。

前にNHKでね、「川の街にはド演歌、海の街にはジャズが似合う」言うたら職員がとんできた。「ここはNHKです!」「何があかんのや?」「ドがいけません、演歌と言ってください」…何せ僕は民報の出やろ、言葉ではよう失敗すんねん。でも、やっぱり神戸はジャズやで。

―アメリカで「From TOKYO」と紹介された時、「From KOBE!」と訂正されたとか。全国区の人になってからも、ずっと神戸に軸足を置いておられますね。

僕はあんまり外国は行ってへんねん、まあ若い頃アメリカへは行ったし、11PMでタイも行ったし、この間は上海にも行ったけどな。まー(長男でジャズピアニストの小曽根真さん)は海外が主やけど、僕の活動はほとんど国内、それも95パーセントは神戸よ。神戸には、僕のジャズ聴きたいって人が、いっぱい居るから。

―長男の小曽根真さんも、世界的なジャズプレイヤーです。そして今や神戸は、ジャズのまちとして有名になりました。神戸ジャズの小曽根パパ、夢かなえた人生と言えますか?

僕がジャズピアニストになったんは、正直なりゆきやなあ。とにかく楽しく、好きなことしてきた。ジャズを志す若い人たちには、まず「楽しみなさい」と言いたいね。次にしたいこと?何やろな?まだやりたいこと、いっぱいあるわ…いろいろアイデアもあるし。また考えますわ、お楽しみに!
〈2011年3月9日取材〉

小曽根実トリオ

小曽根実トリオ

KOBE JAZZ FESTIVAL 2011

リクエストで綴るジャズ・ヒットパレード
2011年6月5日(日)

■時間 15:30(開場15:00)
■会場 神戸国際会館こくさいホール
■料金 S席1,500円 A席1,000円(全席指定・税込)
    ※神戸国際会館PG、チケットぴあ他で発売中
■お問い合せ 神戸国際会館 ☎078-231-8162
【出演】
小曽根実トリオ with Super SAX
小曽根実(p)魚谷のぶまさ(b)上場正俊(ds)
アカペラグループ 宝船
甲南中学 Brass Ensemble

【司会進行】 三浦紘朗
※リクエストは「ラジオ関西 名曲ラジオ 三浦紘朗です」にて受付中

とみさわ かよの

神戸市出身・在住。剪画作家。石田良介日本剪画協会会長に師事。
神戸のまちとそこに生きる人々を剪画(切り絵)で描き続けている。
日本剪画協会会員・認定講師。神戸芸術文化会議会員。


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目次 2011年4月号