みんなの医療社会学 第四回

ジェネリック医薬品の問題点

―ジェネリック医薬品とはどんな薬品ですか。
松本 新薬を開発するとその薬(先発医薬品・先発薬)には一定の期間特許がありますが、その特許期間が経過した後に開発した製薬会社以外の製薬会社が製造する薬(後発医薬品・後発薬)のことです。しかし、ジェネリック医薬品とはあくまでも「主要成分が同じ」と定義されているだけで、基材や添加物の違いによりアレルギーがでることがある、飲み薬では味が違う、貼り薬では貼り付き方が違うといったこともあります。ジェネリック医薬品は認可の際「生物学的同等性試験」が義務づけられていますが、その審査に用いられたサンプル数が20例程度と少なく、市販後の病院団体の調査などでは同等性が担保されていないとの指摘を受けた例もありました。つまり、ジェネリック医薬品と先発薬はまったくに同じものではないのです。

―国はジェネリック医薬品の使用を促進していますがなぜですか。
松本 目的は医療費削減にありますが、総医療費のうち薬品関連の費用は約2割程度ですので、削減効果はさほど期待できないのが現実です。先発薬と薬価にそう違いがない場合や、薬を変更することで調剤加算される場合があり、実際にそう安くならないケースもあります。一方で、中には先発薬の1割の価格という理解に苦しむ事例があります。それだけの価格差があるものが同じものとは思えないというのが普通の感覚ですよね。むしろ、先発薬も特許期間で開発費を回収している訳ですから、期間後に薬価を下げて対等にジェネリック医薬品と競わせる方が本来の目的である医療費抑制に効果があるのではないでしょうか。

―ジェネリック医薬品は現在どれくらい普及しているのでしょうか。
松本 厚生労働省は平成19年に約15%だったジェネリック医薬品のシェアを、5年後の平成24年度までに倍の30%に引き上げる目標をたてましたが、現在兵庫県では約22%で頭打ち状態です。その理由として、まず情報が少ないことが挙げられます。1つの先発薬に対し20ものジェネリック医薬品が販売されることもある一方、国の検査情報は十分には開示されておらず、第三者機関による検証をまとめたアメリカの「オレンジブック」のようなものがないので、医療の現場ではどれが良いのか十分把握できないのです。アンケート調査によれば、医師がジェネリック医薬品に対し不信感を持っていることがわかりました。ジェネリック製造メーカーは中小の製薬会社が多いので、MR(医薬情報担当者)が少なく製品に関して医師に十分な情報が入ってこない、供給が不安定という問題も指摘されています。昭和55年頃以前は国が「生物学的同等性試験」を義務づけず質も良くないものが多かったので「ジェネリック=粗悪品」のイメージが残っている医師も多いようです。ですからビタミン剤のような薬はともかく、特に生命に関わるような重大な疾病に関する薬については、患者の健康が第一ですから多少高くても先発薬を使用したいと考える医師が多いのではないでしょうか。

―薬局の側はどうでしょうか。
松本 処方せんに医師の「変更不可の署名捺印」がない場合は薬剤師がジェネリック医薬品に変更できますが、実際の変更率は2割を切っています。1つの先発薬にいくつものジェネリック医薬品があるので、すべてのオーダーに応えようとすると在庫の量が増えてしまいます。また、製品名が多すぎて、どの先発薬に対応しているのか調べたり選択したり、患者に説明したりするので時間がかかり、業務量も増えます。一方でどの薬を選ぶかは薬剤師の腕の見せ所になるでしょう。

―薬品名が多いと混乱することもあるでしょうね。
松本 一番困惑しているのは救急の現場です。医師はたいてい先発薬の製品名は頭に入っていますが、ジェネリック医薬品の場合薬の種類が多すぎて把握しきれず、一刻を争う事態でありながら調べる必要が出てくるのです。薬の名前は一般的に製品名で流通していますが、ジェネリックに関しては薬品名(+会社名)に統一するなどの対応が必要かもしれません。

―市民はどのようにジェネリック医薬品を選べば良いでしょうか。
松本 まず、ジェネリック医薬品は先発薬と全く同じものではないことを理解した上で使用しましょう。ジェネリック医薬品は品質や薬の血中濃度の立ち上がり方に幅があるので、薬の効き方や切れ味には違いがあり得ることを知った上で、医師や薬剤師と相談し、適切な薬を選ぶことが一番です。

20110406601

松本 卓 先生(まつもと たかし)

兵庫県医師会常任理事授


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目次 2011年4月号