障がいのある方、高齢者の方の快適な旅をサポート

福祉のまちを目指して シリーズ The welfare city “KOBE”

障がい者・高齢者の安心・快適・豊かな神戸観光をサポート

 神戸には、障がい者や、身体の不自由なお年寄りの旅行をサポートする、「神戸ユニバーサルツーリズム」という観光支援がある。事務局代表である鞍本さんは、「バリアフリーの整備も必要ですが、ユニバーサルツーリズムにもっとも必要なのは、人々のつながりや、おもてなしの心」と伝えている。

お話をうかがった方/
鞍本長利さん(神戸ユニバーサルツーリズムセンター代表)

障がい者と介助者の旅を、より安心で、豊かなものに

―センターのサービスはどのようなものですか。
ホテルや旅館などの宿泊施設、タクシー会社、ヘルパー派遣、車いすや電動ベッド等の介護用品レンタルなど、障がい者、高齢者の旅行に必要な関係機関すべてのネットワークをつなげ、利用者が安心して、快適に旅行ができるようサポートを行なっています。より豊かな旅を提案するため、宿泊先の浴室の仕様や、食事の形態をきざみ食やペースト状にしてほしいといったきめ細やかな要望を宿泊関係者に伝えることもします。そのために事前に、障がいがある方の状態や要望などをしっかりと打ち合わせして、快適な旅行をコーディネートさせていただいています。
また、従来の旅において、障がい者の旅行に同行する介助者は、親御さんや奥様など家族であることが多いのですが、旅行先で街歩きをしていても、食事やお風呂に入る時もつきっきりで介助しますから、介助者が旅を充分楽しむまでには至っていません。かといって介助の為にヘルパーや看護師と出発地から同行して旅行に出かけると、それらにかかる人件費・交通費や滞在費なども倍増し、旅行費用は多額になります。当センターでは、訪れた街・神戸において、必要な時と場所に介助者や看護師や街案内のできるコンシェルジュなどをつなぐことにより、障がいがある人も日常的に介助する人も《いっしょに旅を楽しむ》ことができます。先日も全盲の娘さんとお母さんが来られたのですが、娘さんは同年代のヘルパーさんとともに神戸観光に出かけ、その間お母さんは自由にショッピングを楽しみ、お互いに楽しい数時間を過ごすことができたようです。
障がいがあるから、身体が不自由になったから、もう楽しい旅行などできないとあきらめるのではなく、「皆さんに人生を楽しんでほしい」というのが、私の思いです。

―センター設立のきっかけは。

私には障がいがある2人の娘がおりますが、10数年前に家族でハワイに旅行したことがありました。旅行中、娘に必要な介護用品である、痰を吸い出す吸引器が壊れてしまい、ホテルのフロントに電話をしたところ、吸引器の機種名などを聞かれたのちすぐに代用の吸引器がフロントに届いたのです。びっくりしました。こんなことは、神戸では、日本ではありえるでしょうか。ハワイは観光で成り立つ国ですから、観光客の抱える問題がすべて解決できるような仕組みが整っていたのです。その体験が、ぜひこの仕組みを神戸で作りたいと思うきっかけになりました。

段差が多くても「また来たい」と思わせるおもてなし

―センター設立から6年を迎え、これからの取り組みは。
私たちのような活動は、日本ではまだ少ないのが現状です。今年「日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク」というNPO法人を立ち上げ、各地のNPO(沖縄・熊本・東京・横浜・新潟・旭川)とともにこの活動をもっと広げていこうとしています。
一方、ホテルやデパートなどのサービス業や、自治体からの研修の要請も多く寄せられています。
大切なのは、ソフト面です。手すりを付けたり、段差を無くしたり、いくらハードを整備しても、ソフト面、つまり人々のおもてなしの心が整っていなくては無意味です。「ここの旅館は、段差は多いし、階段も多いけど、また来たいわ」と、思わせることです。段差の前に来たらスタッフが寄ってきてお手伝いをしてくれるような旅館、お店の前に高い石段があっても、車いすの人がその前に来るだけですぐに店員さんが飛んできて助けてくれる、そういう旅館やお店は、また来たいと思わせます。観光地すべてをスロープにする必要はないんですよ。ですから一般の市民の方にも、そういう意識を持ってほしいですね。神戸は観光の街ですから、一般の方も、街角で障がいがある人やお年寄りが立ち止まっていたら「何かお手伝いしましょうか」と声をかけること。「必要ないです」と断られることを恐れる人も多いですが、それは受ける側の選択ですから、どうか断られることを恐れずに、声をかけていただきたい。
ユニバーサルツーリズムの整備は、イコールまちづくりです。旅行者が安心して過ごせる街だと思うことは、つまりは住んでいる人が安心できる街だということです。

センターでは情報誌やガイドブックも発行

センターでは情報誌やガイドブックも発行

鞍本長利さん

鞍本長利さん


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目次 2011年4月号