桑原美千子さん(左から2人目)と入居者の皆さん

福祉のまちを目指して シリーズ The welfare city “KOBE”

震災後に生まれた「グループハウス」
さいごまで人々とつながっているという安心

 

 高齢者がそれぞれに独立した住居を持ちながら介護を受け、共同生活をするグループハウスは、高齢化社会を迎える中で、理想とされ、必要とされている施設。民間が設立し、現在NPO法人が運営するグループハウス「ココライフ魚崎」を訪ねた。出会った方の希望に応えたい、という一心で運営を続けてきた桑原理事長にお話をうかがった。

 

お話をうかがった方/桑原美千子さん(特定非営利活動法人てみずの会理事長)

 

自分たちでつくるしかなかった

 

―「ココライフ魚崎」の設立は、どういった経緯で。
震災後に造られた、高齢者や障がい者とその家族の方が住むための地域型仮設住宅「手水仮設住宅」が、出発でした。私はそのころ、住吉にある老人ホームの職員で、「手水仮設住宅」に生活相談員として派遣されたのです。突然始まった共同生活でしたから、さまざまなトラブルもありましたが、人々が集い、励ましあいながら日々を過ごしました。入居して2年後ぐらいから、公営住宅の募集が始まり、やはり皆さんは、住みなれた東灘区に住みたいという希望を持っておられました。
そんな中で、4人の高齢者の方が「手水仮設住宅」のように、自立した暮らしを続けながら見守りを受ける住居をさがしてほしいと言ってこられました。私は彼らの願いをかなえようと、方々を探しましたがそんな住居は、当時どこにもありませんでした。
それならば、自分たちで実現しようと思ったのです。土地を提供してくださる方も現れたので、彼らが望まれた共同住宅「グループハウス」を建設することになりました。資金は、入居を希望した4人(のちに3人)の財産と、寄付からまかないました。
グループハウス「ココライフ魚崎」が完成したのは1999年です。その後、はじめに入居を希望した4人のうちの一人が亡くなった際、ココライフ魚崎を運営する「てみずの会」に、「高齢者への援助」をと財産を寄付してくださり、その資金をもとに、御影に「ココライフ御影」をオープンしました。
 スタート時から、皆さんの希望する住宅を自分達でつくるという発想でした。何かをしようと思ったのではなく、できるだけ皆さんの希望をかなえたいと思って活動しているうちに、こうなったのです。
現在、ココライフ魚崎、ココライフ御影では、①それぞれのコレクティブハウスの運営のほか、②神戸市からの委託によるデイサービス(週に一度集まってレクリエーションや食事などを楽しむ)、③ショートステイ(要介護状態の方の短期間の滞在)、④早朝から深夜まで過ごすことのできる日帰り介護を受けられる「宅老所」としての場、そして⑤お弁当を近隣の希望者へ届ける配食サービス、⑥介護保険制度、障害者福祉制度にのったホームヘルパー派遣などをおこなっています。これらはすべて、「こういうことをしてほしい」という希望があって始めたことです。
 
 

コンビニエンスストアと同じぐらいの数があれば

 

―現在、抱える問題は。
入居を希望され、お部屋が空くのを待つ待機者の方が大変多く、お断りしている状態なのがとても申し訳ないと思っています。
こういったグループホームが、コンビニと同じぐらいの数があったらいいのに、と思うんです。
魚崎も御影も、だいたい入居者は15人程度。それ以上になってしまうと、今度は入居者の皆さん同士が顔見知りになり、助け合うということが難しくなってしまいます。そうなると、このぐらいの大きさが一番良いのでしょう。有料老人ホームになりますと、人数が多く、管理されるので自由が少なくなりますし、第一に費用が高いのですぐには無理という方も多いです。
私たちは近隣の高齢者の中で希望される方にお弁当の配達もしているんですが、お食事の問題が解決しますからヘルパーさんもあまり必要ではなくなってきます。それからお年寄りの中にはお家の中で倒れている方もいます。一日2回職員がお弁当を配達しますから、発見して緊急連絡先に連絡し、救急車を呼んだという例も数多くあります。最近では、高齢者の一人暮らしや、ご夫婦だけでお住まいの方も多いので、いざというときに連絡ができるというのは大きな安心です。そうなると周囲も安心ですよね、いざとなればここに連絡すれば、24時間職員がいて、周辺にスタッフが住んでいますから近くにいる者が駆けつけることができる。
こういった施設は、今もっとも必要とされています。お年寄りが、住み慣れた地域で、人々とふれあいながら最期の年月を過ごせる施設。グループホームを設立するときには、介護福祉士やヘルパーの資格、もちろん建物も必要ですが、やっぱり介護する人、そのホームを設立、運営しようというひとの熱意と、人柄がいちばん大切です。

 

入居者同士のふれあいがある

入居者同士のふれあいがある


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目次 2011年3月号