神戸市医師会公開講座 くらしと健康 44

子どもや高齢者の転倒・転落に注意
頭部外傷の防止に家庭内の危険解消を

―頭部外傷は特に子どもが多いそうですが。
水川 子どもは頭が重たく首がしっかりしていないので、転倒や転落の際に頭を打ちやすいのです。外傷で受ける衝撃は体重と衝突時の速度の2乗に比例するので、背が低く、体重の軽い子どもは転倒しても頭部に受ける衝撃は大人と比べ少ないのですが、頭蓋骨が薄いことや、首が弱く脳が揺すられやすいこともあり、状況によってはとても危険です。

―子どもの頭部外傷にはどのように対応したらよいのですか。
水川 まず落ち着いて、頭を打った状況を把握しましょう。どんなところに頭のどの部分を当てたかはもちろん、落下した高さ、当たった方向なども診断の上で大切な情報となります。けいれん、意識障害、嘔吐が続く、こぶが大きくなる場合は至急救急車をよびましょう。待っている間は、頭を少し高くして、体を横に向けて寝かせ、楽な姿勢をとらせ、頭や体はゆっくりと動かしましょう。傷からの出血がある場合、出血部をタオルなどで強く押さえて、出血を止めましょう。頭部からの出血は比較的量が多いのですが、慌てず冷静に。「こぶができたら大丈夫」というのは間違いで、子どもの頭蓋骨は、弾力性があるので正常なように見えても骨折や思わぬ脳挫傷の可能性もあり注意が必要なのです。また、脳が強くゆすられた場合、しばしば高度障害を引き起こす「びまん性軸索損傷(DAI)」の可能性もあります。いずれにせよ状況を確認して、念のため脳外科医の診察を受けましょう。

―高齢者の転倒も増えているそうですが。
水川 前述のとおり、衝撃は体重が重くなる分、大きくなるうえに、お年寄りは瞬時に受け身の姿勢をとりにくいので、頭部外傷には要注意です。

―頭部を打ったらどのようなことに注意すればよいのですか。
水川 まず、脳挫傷に注意しましょう。高齢者では症状が出るまでに時間を要することが多く、必ず少なくとも1〜2時間程度経過を観察し、だんだんと意識が低下するようでしたらすぐに脳外科医の診察を受けましょう。また、受傷数週後に発症する慢性硬膜下血腫にも注意が必要です。これは、脳表の小さい静脈からの出血がうすい血腫をつくり、その血腫がゆっくりと大きくなるもので、車のドアの上や窓枠などに頭をぶつけるなどのきわめて軽い外傷でも原因となります。よく見られる症状は一側の四肢の麻痺、しゃべりにくくなる、物忘れが激しくなる、頭全体の頭痛などで、脳梗塞、脳腫瘍や認知症と間違えられやすいものです。CTスキャンで容易に発見でき、手術による予後は良好です。男性、特に中年すぎで飲酒される方に多いので注意しましょう。

―予防も大切ですね。
水川 家庭内の事故を防止することはとても重要です。じゅうたんやマット1枚でも頭部が受ける衝撃は軽減されますので、子どもや高齢者のいる家庭ではクッション性のあるマットやフローリングを装備した方が良いでしょう。ベランダや階段などもマットなどを使用しましょう。また、特に子どものいる家庭では、尖ったテーブルの角などもカバーしたりテープを貼ったりをすることだけでもリスクを減少できます。段差の解消も予防策のひとつです。
―交通事故でも頭部外傷は多いですよね。
水川 自動車の内部構造(使用材料やエアバッグ装備など)と車体をつぶれやすくすることで、衝突時、車内の人体に対する衝撃を吸収すること等で車内の安全性は高まりましたが、シートベルトをしていないとまったく意味がありません。後部座席でも、シートベルトをしていないと衝突の衝撃で車外に放出され、致命傷を負いやすくなります。また、子どもは必ずチャイルドシートを使用しましょう。バイクの場合、頭部を保護するためフルフェイスのヘルメットを必ずかぶりましょう。
 もし人をはねてしまった場合はまず救急車をよび、受傷された方を楽な姿勢でねかせ、むやみに首を動かさないようにして救急車の到着を待ちましょう。いずれにせよ、何より事故をおこさぬよう、安全運転が一番です。

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水川 典彦 先生

神戸市医師会理事
水川脳神経外科・神経内科院長


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目次 2011年3月号