お話をうかがった(左より)作野さん、側垣さん、長谷さん

福祉のまちを目指して シリーズ The welfare city “KOBE”

子どもは自分が持つ「権利」に気づく
子どもだけでなく、おとなも

「CAP」とは、Child Assault Prevention(子どもへの暴力防止)の略で、子どもたちがいじめや虐待、誘拐などといったさまざまな暴力から自分の心と体を守るための教育プログラム。このプログラムを子どもやおとなに伝えるのは、養成講座を受講したCAPスペシャリストたち。養成講座を主催するのがトレーニングセンターで、CAP本部であるアメリカのICAPから認可を受け、日本国内では北と南に事務局がある。日本南部におけるトレーニングセンターであるNPO法人CAPセンター・JAPAN(西宮市)にうかがった。

側垣 一也さん(NPO法人CAPセンター・JAPAN理事長)
作野今日子さん(NPO法人CAPセンター・JAPAN事務局長)
長谷有美子さん(NPO法人CAPセンター・JAPAN事務局次長)

誰もが持つ「安心・自信・自由」の3つの権利

―自分を守るプログラムとは?
CAPプログラムは、子どもたちに「あなたは大切な人である」ということを伝えることによって、子どもたちの心に「人権意識」を育んでいきます。この教育プログラムは1978年にアメリカで生まれ、80年代に日本に伝えられ、1995年から養成講座が開催されるようになりました。CAPスペシャリストたちが学校や施設に出向き、子どもたち、そして保護者、学校の先生、職員たちに、それぞれに向けたワークショップをおこなっています。
子どもたちは「子どもだから」「弱い立場だから」という、おとなたちの考えによって、発言ができず、それが虐待やいじめなどにつながっています。プログラムではまず、子どもたちに「あなたは、安心して、自信を持って、自由に生きる権利を持っている」ということをわかりやすい言葉で伝えます。そしてその「安心・自信・自由」をおびやかすのは暴力で、それは人権が侵害されていることだと気づくことにつなげます。
暴力を受けたとき、「心はどうだったか、どんな気持ちがしたのか」ということに焦点をあてプログラムをすすめていきます。そういった、言葉に言い表せない、心の中の部分をわかりやすく「安心・自信・自由」という言葉に添えていくのです。安心・自信・自由という言葉を覚え、実際にいじめがあったとき「それはその子の自由を奪っているんじゃかないかな」と、子どもたちが考え始めた、というケースもありました。言葉にすることは子どもにとって大切なことです。
ワークショップのあとには、子どもたちとCAPスペシャリストが一対一で話す「トークタイム」を設けます。一人一人、理解度がちがう子どもたちのために、より深く学ぶための復習時間ですが、このとき、「自分も実際に暴力を受けている」、いじめや虐待を受けているのではないかと感じた子どもたちが打ち明けに来るケースもあります。CAPスペシャリストは子どもから話を聴き、必要であれば先生などに伝え、橋渡しをおこなっていきます。

おとなは子どもたちの言葉に耳を傾ける

―大人へのワークショップも重要ですか。
重要なのは、子どもが何か話をしたときに、それを聴くことができる大人がいる、ということです。
子どもに教えるだけでなく、保護者や先生に向けたプログラムもあるということは、私たちの活動の特徴のひとつです。大人が気づいて、変わること、それが社会を変えていくことにつながります。例えば子どもが「昨日恐い人に連れ去られそうになった」と訴えてきたとき、「そんなに遅く帰るからいけないのよ」などと子どもを否定してはいないでしょうか。そうなると子どもは自分が悪かったのだと思ってしまいます。CAPではおとなが子どもの心に寄り添う形で話し合うことを伝えます。

―CAPプログラムは、すでに多くの学校で行われているのでしょうか。

はじめは保護者の方から、CAPプログラムを学校で伝えてほしいと要請があり、うかがいました。15年ほど前でしょうか。そこから口コミで広がっていきました。今では教育委員会が主体となって取り入れているところや、市や区単位で取り入れているところなど、地域によってさまざまです。
プログラムはやはり、小学校低学年、できれば就学前など、できるだけ小さな頃から受けることが望ましいと思われます。その後、年を追うごとに子どもたちの環境や抱える問題も変わってきますので複数回受けてほしいと思います。
これからは、この活動を広めるためにも、大学の教育カリキュラムに組み込まれるといいと考えています。CAPスペシャリストとして次代を担う若い世代も必要となっています。そして何よりも、質の高いプログラムを伝えられるよう、日々研修をかさね、情報交換をするために地域ごとにいるCAPスペシャリスト同士がネットワークを深めていけるようにすることが、このCAPセンター・JAPANの役割だと考えます。 

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目次 2011年2月号