先端融合研究に期待する

武田 廣 さん
神戸大学 理事・副学長

 

―ポートアイランドに神大の「統合研究拠点」を置こうとした経緯は?
武田 2009年4月、福田秀樹学長就任時に、学術分野が連携して大学全体で取り組む「フラッグシップ・プロジェクト」の推進計画を打ち出しました。しかし、六甲台のキャンパスでは手狭。タイミング良くポートアイランドで産学連携を振興しようという文部科学省と兵庫県のプロジェクトがあり、応募することになりました。当初の計画よりは少し規模を縮小したものの順調に進み、今年4月から統合研究拠点が本格始動します。コンベンションホールも併設が決まり、11月にはオープン予定です。

 

―どのような研究をするのですか。
武田 工学部と医学部がリンクして科学的に健康を推進するチーム、米や麦を原料にして燃料を作ろうとするバイオリファイナリー、膜を使って不純物を除去してきれいな水を作る先端膜工学など、ユニークな分野も含めて全8チームの研究拠点です。特に惑星科学の分野では研究者の交流拠点を作ろうと計画しています。

 

―医療分野の研究もですか。
武田 統合研究拠点は医学的な分野は対象外です。近隣の神戸大学バイオテクノロジー研究・人材育成センターで、医学系の先生方が研究しています。広く門戸を開いていますので、現在既に早稲田大学からも研究者が来ています。

 

―次世代スーパーコンピュータも魅力ですね。
武田 化学、工学、生物学、物理学などいろいろな分野でスパコンの応用範囲は広く、宇宙がどうなっているかを解明したり、銀河系の衝突などの計算も可能になります。兵庫県立大学でも新しい学問分野を立ち上げ、経済シミュレーションなど社会系での利用も予定しています。

 

―スパコンの意義は大きいのですね。
武田 今、理論と実験をつなぐ分野として計算科学が注目されています。例えば、車の衝突実験への対用は既に始まっています。実際に車をぶつけるには大変な時間と費用がかかりますが、スパコンを利用してシミュレーションするとスムーズに進みます。また、期待が大きいのは薬の開発です。分子レベルで薬をとらえると限りない可能性がありますが、すべてを実験することは不可能です。シミュレーションして実現すれば道が開けます。しかし、企業に対して単に「スパコンを使ってください」というだけでは普及しません。コーディネーター役が必要ですから、神戸大学では大学院にシステム情報学研究科を立ち上げ、スパコンを使いこなせる人材を育成しようとしています。

 

―全国的にも神戸大学の優位性は高まりそうですね。
武田 研究拠点がスパコンのすぐ隣りにあることが利点です。学生のモチベーションも高まります。今後、どういう人材が育っていくかで評価を受けることになると思います。

 

―大学間同士の連携はどのように進んでいるのですか。
武田 筑波、名古屋、京都、大阪、奈良先端科学技術の5大学が神戸大学の教育に協力してくれています。協定講座でスパコンに関する講義やセミナーなどを神戸で開催しています。

 

―広報活動や情報発信はどのように?
武田 ホームページを充実させ情報発信していきます。まだ計画段階ですが、神戸大学のデジタルアーカイブをつくって発信したりすることを考えています。また1階には三次元の可視化装置を設置します。一般のスパコン見学者には、デモンストレーションで実際にその威力を体験してもらう動線を考えています。

 

―大学運営も難しい時代ですが今後についてはどうお考えですか。
武田 大学の使命は教育と研究です。次にそれを社会貢献につなげることです。国からの支援が減り、研究への投資も制限を受けている現状ですから、選択と集中の結果が統合研究拠点です。ただし、企業と違い大学にはある程度の余裕は必要ですから、現段階では無駄と思える分野にも投資をしていかなくてはいけません。思わぬところから何かが生まれるのが大学だということも忘れてはならないと思っています。

 

2011年4月にポートアイランドに オープン予定の「統合研究拠点」

2011年4月にポートアイランドに
オープン予定の「統合研究拠点」

 

武田 廣 (たけだ ひろし)

1949年生まれ。1977年、東京大学大学院理学系研究科物理学専門課程博士課程単位修得退学(1978年 同 修了)。東京大学理学部附属素粒子物理国際センター助教授などをへて、1989、神戸大学理学部教授。1998年、神戸大学総合情報処理センター長。2004年、国立大学法人神戸大学理学部教授。2007年、同大大学院理学研究科教授


ページのトップへ

目次 2011年2月号