時をこえ親しみの心をおくる

白鶴酒造株式会社 代表取締役社長
嘉納健二さん

 

260年を超える歴史を持つ白鶴酒造。
その伝統の重みを背負って立つ若き社長に、守るべきもの、
そして日本酒の魅力などをお聞きしました。

 

―日本酒が最近また見直され始めて、女性の方にもファンが増えてきているようです。日ごろ感じることはありますか。
日本酒の楽しみ方は今では、コミュニケーションツールとしてだけではなく、食卓の演出など、さまざまな楽しみ方をされています。当社もそれらに対応してきました。かつての日本酒は一升瓶が主流でしたが、手軽に楽しめる紙パックや180㎖瓶などテーブルに置いて楽しめるものも発売しています。飲食店様でもいろいろな料理にあわせやすく、値段もお手ごろだとご好評いただいています。

 

―昔から日本酒といえば、おじさんが飲むものというイメージがありますが・・・。
おじさんが飲むものというイメージすらあまり持っていない若い世代の方たちが、自分なりに日本酒を楽しんでいらっしゃるのではないでしょうか。

 

―飲食店で燗酒を頼むと「白鶴 上撰」がよく出てきますが、白鶴のお酒の特長は?
一級酒と呼ばれていたころからブランド力が定着し、多くの飲食店様で扱っていただいています。「白鶴 上撰」は飲んだ時は口の中に深い味わいが広がり、余韻はさらりとしている造りですので、次の一杯につながる、飲むほどに親しみのわく味わいです。

 

―日本酒は食中酒としてどんな料理にも合うといわれます。白鶴のお酒はどうですか?
白鶴では、日本酒がどんな料理と組み合わせれば相性が良くなるかを考え、「バランス」「ハーモニー」「ウォッシュ」の3つの基本形の組み合わせを提案しています。塩辛い食材や味の濃い料理には淡麗、甘みのある料理には甘口のお酒など、どういう料理にどういうお酒が合うかを研究しています。和食だけではなくステーキやすき焼きなどの肉料理には、口のすっきりさせる日本酒もおすすめできますし、また、神戸の中華料理店では日本酒もたくさん飲まれています。

 

―白鶴は美術館や資料館、学校をつくるなど地域貢献にも努めてきていますが、現在はどういう活動を進めていますか。
資料館は無料で一般開放して、いつでもどなたにも気軽に見ていただいています。年に2回は蔵開きをして、ミニコンサートやイベントを開催しています。樽にこもを巻く作業の実演や普段は開放していない酒造りの現場を見学していただいています。また、地元の自治会の皆様にもご協力いただいて模擬店も出しています。美術館では、春季展・秋季展の年2回、館蔵品の公開を行っていますし、当館所蔵の狩野元信筆「四季花鳥図屏風」(重要文化財)は多くの方に見ていただきたいとの想いから高精細複製品の貸出しもしています。

 

―32年前のCI(コーポレート・アイデンティティー)導入以来、新しいロゴマークの制定など昔から新しい取組みを進めてきていますね。
さまざまな家紋を見てもおわかりのように、日本古来のマークは「静」と「動」でいえば「静」のイメージがあります。当社のロゴは「動」のイメージである点では斬新といえます。「白鶴=安心」の象徴として今後も使い続けるつもりです。

 

―酒造りに大切なのはやはり麹と水ですか。
良い麹がおいしいお酒を醸し出します。麹菌はいきものですから、温度や湿度管理はもちろんですが麹菌を均等に繁殖させることが重要です。お酒造りで最も大切な工程の一つですので丹精込めて麹造りを行っています。水も大切です。水の中に含まれているミネラルが酒造りに色々な働きをしてくれます。水が違うと、違うお酒になるといわれるほどです。

 

―それを利用して化粧品もつくるようになったのは何故ですか。
手作業でお酒を造る杜氏さんの手はきれいで透明感があり潤っているといわれています。麹やお酒に有効成分があるのではないかと研究を進めてきました。その研究から、お酒や酒粕・米ぬかなどを使用した化粧品を販売しています。

 

―阪神御影クラッセで販売していますね。
「MUSE」という店舗ですが、「日本酒のある生活」を情報発信しています。日本酒以外にも酒器や酒粕を配合した化粧品やロールケーキなどが人気商品です。

 

―各酒蔵間の交流や情報交換はどのようにされていますか。
灘五郷酒造組合会での会合が年10回程度あります。情報交換だけでなく、日本酒がどうすれば多くの方々に親しんでいただけるかなどを話あっています。毎年共同で試飲会を実施するなど需要開拓にも取組んでいます。

 

―老舗の社長として、今でもお盆や年末年始には全国へご挨拶に行くとのことですが。
メーカーとしては特別なことではないと思いますが、お客様と古くからのお付き合いですし、日本の風習を大切にしていきたいと考えています。

 

―業界でもトップクラスの売上げで、昔からの暖簾を背負っている会社ですが心がけていることはありますか。
きめ細かい対応を心がけています。「おいしい」「安心・安全」を基本に置いた商品開発に加えて、お客様・お得意先様の要望に合わせた営業活動を行っています。

 

―今年はどういうことに力を入れていく予定ですか。
最近は低価格のものしか売れないという考え方になりつつありますが、お客様は安いだけではなく、良いものを望まれています。同じ価格でもより品質の良いものを提案していきたいと考えています。また、より付加価値の高い商品を開発することで日本酒需要を開拓したいとも考えています。

 

―ご自身もプライベートでは白鶴のお酒を?気分転換のために?
もちろんです。ということにしておきましょう(笑)。私は仕事の疲れを癒すというより、食事の時間をもっと楽しく演出するために飲むようにしています。結果的に疲れが癒されることはありますが、より生活を向上させるためのツールが日本酒だと考えています。

 

―これからも身近に楽しめる日本酒に期待しています。

 

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純米大吟醸など世界の食品コンテストでも高い評価を受ける

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昔ながらの酒造りの様子を伝える白鶴酒造資料館

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酒粕エキスのうるおい成分をとり入れた「鶴の玉手箱 酒粕石けん」

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酒粕の美肌効果に着目し、化粧品分野へも進出する

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嘉納 健二(かのう・けんじ)

1971年7月14日生まれ。1995年、白鶴酒造株式会社入社。1999年、同 社長室長。2001年 6月、同 代表取締役社長就任。1999年、財団法人白鶴美術館理事長。
※財団法人白鶴美術館は2010年に公益財団法人白鶴美術館に変更


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目次 2011年2月号