新年銘菓 神戸凮月堂

平成二十三年
「干支と御題にちなんだ春菓子」

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むかしむかし、因幡国に渡ろうと考えた隠岐島の白うさぎは、鮫をだまして並ばせ、その上を踏み数えながら島へわたりました。もう一歩で本土という時に、「お前たちはだまされた」といったばかりに、最後の鮫に捕らえられ皮をはがれてしまいました。そこを通りかかった大国主命が、「河口へ行って真水で体を洗い、そこに生えている蒲の穂綿にくるまれば良い」と教えてくれ、白うさぎはもとどおりに白い毛が生えてきました。
 神戸凮月堂の今年の干支菓子は、有名な「因幡の白うさぎ」を題材に、お菓子に仕上げました。短冊型の「月平」と「打物」は、蒲と波をあらわし、ハマナスは「打物」、うさぎは「寒氷」で形作りました。あざやかな藍の「雲平」で、帯を作り大国主命をあらわしました。

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新年歌会始の御題『葉』にちなんで、御題菓子は万葉集巻十九・僧恵行の歌、
「我が背子が 捧げて持てる ほほがしは
  あたかも似るか 青き蓋(きぬがさ)」
を形にしました。
「ほほがしは」とは、ほおの木のこと。「あなたさまが持っておられるほおの木は、まるで青いきぬがさのようですね」という歌で、きぬがさとは貴人の後ろからさしかける、絹などを張った傘のこと。「あなたさま」と言っているのは、大伴家持のこと、ほおの木を、高貴な人が持つきぬがさに見たてて、敬意をはらったのです。家持一行が布勢の水海に遊覧した際の歌で、そのとき藤の花が岸辺に咲き誇っていたとか。短冊型の「月平」と「押物」は、このきぬがさとほおの木の葉をあらわしています。水紋と藤の花のかわいらしい「打物」と、丸い錦玉は、文官が持つ「しゃく」を表現しています。


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目次 2011年1月号