
2011年 新春市長対談 「感謝と友情」をテーマに第1回神戸マラソン開催
矢田 立郎さん 神戸市長
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伊東 博美さん(旧姓・鈴木博美さん)
世界陸上アテネ大会・女子マラソン金メダリスト
山が見え海がすぐそこ 神戸のマラソンコース
―新年おめでとうございます。
今年はいよいよ11月20日に「神戸マラソン」が開催されます。大阪や京都でもマラソンは開催されますが、神戸の独自性や特徴はどこにありますか。
矢田 一番は、コースから海が近く、山も迫っているというロケーションでしょうね。次に考えられるのは、震災を経験した神戸ですから、復興への感謝を込めた大会だということです。多くのボランティアの皆さんにも活躍していただくことになります。
―伊東さんも関わっていらっしゃいますか。
伊東 実行委員会に入り、当日はクオーターマラソンに参加する予定です。
―コースの詳細を教えて下さい。
矢田 都心からスタートして、西へ向かい、長田では復興のシンボル「鉄人28号」の近くを通ります。そこから海岸線の須磨に向かいます。特にクオーター地点の須磨浦公園辺りから舞子までの、南側がすぐ海という景観は、他所にはないものです。素晴らしい印象を持ちながら走っていただけると思います。
舞子で折り返し、下町エリアからホームズスタジアム神戸の前を走ります。ハーバーランドからバイパスを通り、ポートアイランドへ。神戸の新しいビューポイント「しおさい公園」も巡り、ゴールの市民広場付近へと向かいます。
伊東 神戸の海と山、両方の景観を楽しめるコースです。全体的に平坦なので、ランナーにとっては走りやすいコースだと思います。
―コース上での課題といえば。
矢田 ハーバーランドから自動車専用のバイパスに入ると、沿道の声援が途切れてしまいます。マラソンが一番しんどい所ですからね。しかも、上り坂です。
伊東 マラソンは30キロを過ぎると足にこたえます。特にしんどいといわれている35キロあたりから孤独な戦いになってしまいますね。ただし、上り切ってしまえば、景観を楽しめる下り坂に入ります。まわりを見る余裕を持って走って欲しいと思います。須磨浦公園からは道が細くなるので、折り返し地点までランナーが団子状態にならないかという心配も少しあります。
―東西に長いコースですから、交通の遮断も課題ですね。
矢田 そうなんです。これまでできるだけ南北の交通遮断による影響が少なくなるように検討を積み重ねてきました。市民ランナーには7時間内で走っていただきますが、塩屋から舞子辺りにお住まいの方には往路、復路ともにご迷惑をおかけします。ご理解ご協力をいただけるよう、今後も説明をしていきたいと思っています。
―今回の神戸マラソンのテーマは「感謝と友情」ですが。
矢田 震災で大きな支援をいただいたことに対して、ホスピタリティで応えたいという気持ちです。震災はボランティア元年ともいわれましたので、その気持ちを思い出して市民の皆さんにもご協力いただきたいと思います。
参加ランナーの皆さんは今から準備しても早過ぎません
―PRや運営準備は既に始まっていますか。
矢田 昨年から実行委員会を立ち上げ、取り組みを始めています。厳しい経済状況もあり、協賛団体を募るのが難しいことは確かです。しかし健康志向を持ち、社会貢献に力を入れている企業も多くあります。神戸マラソンは今後もずっと続けていこうという意気込みで始めます。末永く応援していただける企業の協賛をお願いしたいと思います。
伊東 私が実業団で走っていた当時、所属する企業名より、ゼッケンに付いている企業名で呼ばれることが多かったですね。目立ちますからね。沿道から声援を送る観客に向けて、かなりアピールできます。是非、ご協力を!(笑)。
―参加ランナーに事前のアドバイスはありますか。
伊東 現役のマラソンランナーでも、早ければ1年前から当日に向けて練習を重ねます。マラソンは10キロや20キロ走るのとは全く違うということを頭に入れて、トレーニングや練習を積んでいただきたいと思います。毎日は無理としても、1週間に何回かでも構わないので、続けることが重要です。新年早々から始めても早過ぎません! また、当日は睡眠不足や疲れもひびいてきますから、レースに合わせての体調管理も大切です。
―今年は7月7日から「第19回アジア陸上競技選手権 兵庫・神戸大会」も開催されます。2011年の神戸はアスリートシティですね。
矢田 アジア陸上は、神戸での世界的レベルの大会としては1985年のユニバーシアード以来です。各競技で世界のレベルを実感できる良いチャンスです。マラソン競技はありませんので、4ヵ月後の神戸マラソンで体験していただけたらと思っています。
体力づくりやスポーツは続けることが大切
―伊東さんのご主人は100メートルの日本記録保持者で、現在は甲南大学准教授の伊東浩司さん。お子さんも2人いらっしゃいます。家族そろってジョギングやウォーキングを楽しんでいますか。
伊東 意外と、楽しんでいません(笑)。ようやく6歳と4歳の子どもたちと一緒に家族皆で動けるようになったので、時々、山のウォーキングコースを歩きに行ったりはしています。少しずつスポーツとして楽しんでいけたらいいなと思っているところです。
私は各地のロードレース大会をまわらせていただいていますが、たくさんの方が家族で参加されています。いずれ私たちも、親子マラソンにも参加したいですね。残念ながら、主人は「秒」を競う短距離選手。普段は「2時間以上も走るなんて考えられない」と言っていますが、子どもたちと一緒ということなら、きっと走ってくれると思っています。
―市長も体は鍛えていますか。
矢田 私も30年間、ジョギングを続けています。最近は距離を短くして、時間があれば6キロ程度ですが…。毎日やっているのは、朝のストレッチと筋トレ、軽いジョギングです。
伊東 すごいですね! 私も現役時代は朝、夕走っていましたが、最近は子育て中心で、なかなか走る機会がありません。続けることは素晴らしいことだと思います。
―伊東さんから市長へ、健康やスポーツについての要望はありますか。
伊東 市民がランニングに興味を持ち、楽しめる機会を多く作っていただきたいと思います。その楽しさは、やってみなければ分かりません。
人材を育成して神戸からの発信拠点をつくる
―神戸のこれからについてお聞きします。医療産業都市として、研究や開発はかなり進んでいるようですね。
矢田 ポートアイランド2期を中心にして、12年前に構想を作って、現状のような再生医療・最先端医療の研究機関、企業が集まってきました。現在、約190社の企業で、主に研究者など約3800人が働いています。また大学もポーアイ2期へやってきました。
医療産業都市構想は本来、臨床に持ち込むことが目標ですから、「神戸に来れば最先端の医療が受けられる」という体制を作ることが重要です。中央市民病院の移転に続いて、周辺に専門病院が進出してくるという計画も進んでいます。メディカルクラスターが形成されていくことが期待できます。スパコンができることで、さらに企業に進出いただき、500社くらいは集まっていただきたいと考えています。ノーベル賞を受賞する研究者を神戸から輩出するのも夢ではないと思っています。
―デザイン都市についてはどうですか。
矢田 デザイン都市は、ものづくりというだけでなく、まちづくりや、暮らしの中にデザインを取り入れるということが重要です。そのために、人材を育てる街でなくてはいけません。拠点も必要です。今は物流の拠点になる港が、ポートアイランドより東に移ってしまいました。そこで、HAT神戸から西に向かい、ハーバーランド、将来的には兵庫運河までをつなぐウォーターフロントを、市民が楽しめる場所にしようというのがデザイン都市の目標の一つです。
手始めに、旧神戸生糸検査所を(仮称)デザイン・クリエイティブセンターKOBEとして整備します。ここを拠点に発信していこうと計画しています。
―神戸に移り住まれた伊東さんですが、この街の印象はいかがですか。
伊東 関東に住んでいたときから時々、神戸へは来ていました。観光名所ももちろんですが、おいしいものも多いので、人が集まるのでしょうね。今は北区に住んでいますが、子どもが生まれる前はよく、山のこちら側まで出てきて買い物をしたり、カフェに行ったり…。街全体がおしゃれな感じですね。
神戸を元気に!
―お二人の今年の抱負をお聞かせください。
伊東 今までは子育て中心の生活でした。今年は、神戸マラソンの実行委員会に入っているということもあり、少しずつ皆さんと一緒に走ることを楽しみたいと思っています。また、皆さんに楽しんでいただけるような社会活動にも関わっていきたいと思っています。
矢田 2010年を振り返ると、明るい話題が少なかったように思います。2011年は市民が元気になれる年になることを願っています。新しい中央市民病院も開業します。市民の安心安全においては重要なことです。
また、これからの社会には人材育成が大切です。神戸に優秀な人材が集まってもらうためにも、デザイン都市をさらに進めていきたいと思っています。
神戸の基幹産業は日本経済にとっても大きな役割を果たしており、今後社会情勢の変化に合わせてさらに発展させていくことも重要な課題ととらえています。
また、2012年のNHK大河ドラマは「平清盛」です。兵庫あたりが日本中から注目を集めるのではないかと期待しています。
―今年は「神戸っ子」も50周年を迎えます。お互いに協力しながら良い年にしていきたいですね。
司会・進行 本誌 森岡一孝

●スタート地点:神戸市役所前(フラワーロード)●往路ルート:長田・鷹取地区 ●折り返し地点:明石海峡大橋(舞子公園付近)
●復路ルート:駒ヶ林・和田岬地区 ●フィニッシュ地点:ポートアイランド(市民広場周辺) ※日本陸上競技連盟/AIMS公認コース(予定)

神戸マラソンのコースについて語り合う矢田市長と伊東さん
矢田 立郎
神戸市長
伊東 博美(すずき ひろみ)
旧姓は鈴木博美。1992年バルセロナオリンピックと1996年アトランタオリンピックは女子10000m代表として出場。1997年の世界陸上選手権アテネ大会女子マラソンでは金メダルを獲得。夫は男子100m現日本記録保持者で、現在・甲南大学准教授の伊東浩司氏