西区にある1500坪のイチゴ農園

福祉のまちを目指して シリーズ The welfare city “KOBE”

彼らの作ったイチゴが神戸スイーツに
特色ある「神戸の福祉」のかたち

 神戸市西区の農場で、障がいのある方々が育て、収穫したイチゴが、ホテルやレストラン、スイーツ店で使用されている。障がいのある方が、自分たちの労働によって食べていけるよう、働く場所を創ることを目的にして始まった活動が輪を広げ、今では地産地消や地域活性化につながりつつある。新しい時代の福祉のまちを目指す神戸で、特色ある活動を行なっている団体を取材するシリーズ第一回目は、「NPO法人神戸障害者自立支援福祉協会」を取材した。

障がい者が食べていけるよう働く場を

この協会では、障がいのある子どもたちの学校への送り迎え、放課後、長期休暇の一時預かりなどの活動を行なっている。子どもたちを預かり、遊びを通して心を育てること、また、登校中以外は子どもの介護をすべてまかされる形になっている両親のサポートをすることを目的としている。
障がいのある子を持つ両親たちは「18歳になり学校を卒業したあとは、子どもたちはどうなるのだろう。自分たちが亡くなったあとはどうなるのだろう」という悩みを、必ず抱えている。
子どもたちは、卒業後はたいてい作業所などで働くようになるが、そこでもらう賃金は一ヶ月5千円程度と非常に安い。協会では、まず彼らが自分の生活費を稼いでいけるような、働く場所を創ろうと模索しはじめた。
そこで、健常者が作業しても障がい者が作業しても同じもの、商品ができあがること、そして、障がい者が作ったものを、一方的にお願いして買ってもらう、特別に購入してもらうというのではなく、需要と供給のバランスが一致し、安定している労働のかたちを探した結果、イチゴの栽培に行き当たった。農作物のうち、イチゴが選ばれた理由は、赤く色づき、さまざまな障がいをもつ人でもその収穫どきのサインがわかるからなのだとか。まず活動を理解し、農地を貸してくれる農家を探すところから活動は始まり、農園活動は2004年にスタート。現在では17~18名程度の障がい者たちが毎日農園に出勤し、栽培、出荷など、他の生産者と同じく働いている。兵庫県農業改良普及センターのバックアップを受け、安定した作物が収穫できるのも、他の農家と同じである。

イチゴ流通経路が広がるたびに輪が広がる

協会ではこのイチゴの流通ルートを確保するため、ホテルやレストランなどに活動を紹介。まず最初にホテル・ラ・スイート神戸の鎌田シェフがスイーツに取り入れ、以降、ホテルオークラ神戸、ポートピアホテル、コンチェルト、北野ガーデンなど神戸を代表するホテルやレストランで使われている。ホテルピエナ神戸では、人気のジャムとこのイチゴをコラボレートさせた新感覚のジャムを考案し、話題に。
需要があるときにその量をきちんと供給するために、協会でおぎなえない生産分は、他の農家に生産してもらうことも必要となる。そのため周辺農家にも理解を求め、連携をとりながら活動をすすめている。
今後は、新しくトマトの栽培も始めるとともに、収穫時など季節によって人手が足りない農家に人材を派遣するなどの就労活動も行なっていくという。「福祉だけでなく、地産地消、そして地域活性化につなげていくのが目的です」と、協会理事の菅原宏一さん。農家ではイチゴだけでなく、他の農作物を販売する場を作っていくのも目標。「それが神戸ならではの地産地消のかたちの見本になれば。障がいのある人たちが、そんな神戸の特色の発信になればと思います」と、菅原さんは言う。農園で彼らが作るのは、香りがよく粒が大きい「さちのか」という種類のイチゴ。赤く色づいた実りは、神戸の夢の実のひとつひとつとなっていく。

人気のジャムの材料に(写真提供:ホテルピエナ神戸)

人気のジャムの材料に(写真提供:ホテルピエナ神戸)

神戸障害者自立支援福祉協会 菅原優子理事長

神戸障害者自立支援福祉協会
菅原優子理事長

特定非営利活動法人

神戸障害者自立支援福祉協会
神戸市長田区若松町4-4-10
アスタクエスタ北棟4階
☎078-646-8751


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目次 2011年1月号