ハンドメイド注文紳士服「柴田音吉洋服店」

インタビュー (株)柴田音吉商店・五代目社長 柴田音吉さん

史上最軽量「ライト-フィット」テーラード・ジャケット
今、この時代に見直される、至高の逸品を創り出す職人の技術

 明治初期に開業以来、128年間多くの財界人、文化人の紳士服をあつらえてきた柴田音吉洋服店が、昨年発表した超軽量の「ライト-フィット」テーラード・ジャケットが大好評だという。業界のパイオニアとして、常に創業の精神を忘れない紳士服店の、4代目柴田音吉社長にお話をうかがった。

―昨秋開発したジャケットが大好評だそうですね。

ええ、おかげ様で、一度このジャケットを着た方は、それ以後もぜひまた作ってほしいと言って来られるんです。技術者が試行錯誤を繰り返して開発したこの「テーラードでは世界最軽量」のジャケットですが、実際に着てみると本当に軽く、まず肩がこらない。重たいジャケットはビジネスマンのストレスの原因になるのです。一日中ずっとジャケットを着用していなくてはならない職業の方、例えば弁護士の先生方に「長年悩まされていた肩こりがなくなった」とおっしゃっていただくなど、大変お誉めいただいています。最初に考案したジャケットはアウトポケットでしたが、スーツ向きのポケットがついたジャケットがほしいというリクエストをいただいたので、半分裏地をつけ、そしてこの秋「ライト-フィット」スーツを発表しました。

―月刊神戸っ子創刊当時から柴田さんには誌面に登場いただいていましたが、常にオリジナリティを追求し、その時代に合った、機能性のある紳士服を創造してこられましたね。

実は私が月刊神戸っ子の誌面に初めて登場したのは25歳のころだったのですよ。ブライダルの特集の、花婿のモデルとして出たのです(笑)。そのときは、ロンドンの毛織物商社に語学留学も兼ねて勉強のため修業を積み、帰国してすぐのころでした。
その後、私が4代目を継いだあと、神戸っ子に掲載されたこのお店の紹介記事を読んで、NHKが取材に来られたのを皮切りに、数多くのテレビ番組や全国新聞、一流雑誌に取材していただき、こうして商売を続けて来られました。また私たちのような商売は、口コミ、お客様からの紹介が何よりですから、さまざまな経済界、文化界の皆さんにご愛顧いただいて参りました。現在ではホームページをご覧になり、東京や九州など遠方から来られるお客様もとても増えています。

―この時代、職人によるハンドメイドの技が、再び注目を集めているのでしょうか。

安い商品があふれるこの時代、わざわざ当店に来られ、テーラードジャケットを作られる方の中には、これまでも親子何代にもわたり作られている方ももちろんいらっしゃいますが、新しいお客様も増えています。最近は、なにか特殊なものを作られている工場のオーナーの方がとても多い。世界に注目される製品を開発し、同時にそこでしか作っていないような製品を製造されている工場ですね。商品が世界に注目されるようになり、海外に行く際スーツが必要になられたのでしょうか。
私はそれを見て、日本は技術大国として、まだまだ捨てたものではないと思いましたよ。その技術をきちんと守り、これからは工賃が安いからといって工場を簡単に海外に造って、技術を流出させてはならないと思います。
当店もこれほど長く続けさせていただいているのは、職人の技術があるからでしょう。当店のジャケット製作工程は、仮縫いのあと、28時間かけて一人の職人が手縫いし、仕上げます。約6万針、これがスタンダードです。世界のどのテーラーにも負けない最高水準だと思いますね。だから身体にフィットし、長く着ても、クリーニングしても型崩れせずシルエットの美しいジャケットが作り出せるのです。これはハンドメイドだからこそです。私はその技術と、そしてDNAを継承していかねばならないと強く思っています。そのためには、我々のような小売業、そして技術のある中小企業が、日本を支えていかなくてはならないと思いますね。

 

「ライト−フィット」スーツを着た柴田社長(61才)

「ライト−フィット」スーツを着た柴田社長(61才)

稲沢工場長(神戸マイスター、現代の名工認定)

稲沢工場長(神戸マイスター、現代の名工認定)

20110102901

柴田音吉洋服店

☎078-341-1161(来店は予約制)
12:00〜18:00 水・日曜・祝日休
神戸市中央区元町通4-2-22(南側2F)
http://www.otokichi-kobe.co.jp


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目次 2011年1月号