選手たちのトレーニング指導を行う石原さん

阪神タイガース ベストコンディションを支える

石原 慎二さん
株式会社 阪神タイガース チーフトレーナー補佐
NATA公認アスレティックトレーナー

 

―選手を支えるトレーナーの球団での役割りとは。

石原 トレーナーはトレーニングコーチなどとチームになり、選手の怪我予防を目標にして健康を管理しています。年に数回の筋力測定や体力測定、11月の健康診断のデータをもとに、選手の弱点を見つけると同時に、長所も引き出すのです。
 健康管理を担当する全員がデータを共有し、ほとんどを把握しています。体調不良がどのように技術面に影響を及ぼすかを推測し、コンディショニングレベルを元に戻すためのアドバイスやトレーニング指導をします。

 

―トレーナーとして、プロ野球特有の難しさはありますか。

石原 選手の年齢幅が非常に広いことです。現在、当球団には18歳から42歳の選手がいますが、それぞれ同じ対応というわけにはいきません。選手たちは職業ですから、怪我をしたら〝翌年はない〟厳しい世界です。特に20歳代後半を過ぎると背負う大きなプレッシャーを理解して、入団したばかりの選手とは接し方、トレーニングの指導方法、治療方法などを変えていく必要があります。

 

―今シーズンの金本選手の決断についてはどうお考えですか。

石原 勇気ある決断だと思います。自分のためでなく、チームが勝つためには自分が抜けるのが最善の策だと、自ら監督に申し出ました。誰もなし得たことがない記録を作ってきましたが、自分の意思で断ち切らざるを得なかったのです。私たちの力不足を痛感しています。

 

―選手はポジションによって要求される能力・筋力はあるのですか。

石原 基本的に野球は踏ん張る力が必要なスポーツですから、そういう力がある選手が伸びるのは確かです。しかし、筋力や体力があれば良いというものでもありません。最終的にパフォーマンスです。 
例えば、キャッチャーがピッチャーのようにゆっくり構えて160㎞の球を投げたとしても間に合いません。機敏に動いて120㎞の球を投げるほうが早く到達します。球を取ってから、どれだけ早く投げられるかという技術です。
 ピッチャーならば、どんなに速く遠くに投げられたとしてもコントロールが悪ければ試合になりません。強い、速いだけが全てではないというのが、プロ野球のおもしろいところでもあるのでしょう。

 

―最新のトレーニング方法「SwimEx」とは。

石原 SwimExは最新のものというわけではありませんが、プロスポーツに取り入れたのは12球団中でタイガースが初めてでした。
 コンパクトな流水プールで泳いだり走ったりするトレーニング方法です。足や関節に問題があり、走ったり歩いたりするだけで痛みがある選手の場合、動かないでいると筋肉や体力が落ちてしまいます。そこで、水の中で浮力を利用します。肩まで水につかった場合、頭の重みだけしか感じませんから、体重の約90%が軽減され、体の重みによる痛みは感じなくなります。水の抵抗を受けますから凄い力が必要ですが、痛みを感じないでトレーニングができます。ピッチャーの疲労回復にも利用しています。

 

―若い頃に共感されたという、魚住廣信教授の考え方とは。

石原 私がアメリカで勉強していた頃、たまたま日本で目にしたのが魚住先生の著書でした。「最先端をいっている」と思いました。そこで、アメリカから質問の手紙を書いたところ、お返事を下さいました。理論的なトレーニングが日本ではまだ浸透していなかった時代に、タイガースに教えて下さったのも魚住先生だということです。80年代後半から90年代前半にかけての好調も、最先端をいっていた先生のおかげだと思います。

 

―石原さんはアメリカで勉強され、NATAの資格も取っておられますが、トレーニングに関して日米に違いはありますか。

石原 欧米人と日本人では骨格、筋力が違います。同じトレーニングをした場合、確実に欧米人の方が大きくなります。また、スポーツに関しての生活習慣も違います。日本では未だに中学・高校になっても厳しい練習、練習ですが、アメリカでは中学後半、高校生になればトレーニングに向かいます。そうすれば20歳になった時の体の大きさが変わってきます。しかし基本的に日本人とアメリカ人は違いますから、同じトレーニングをすることだけが正しいとは言えません。
 アメリカ人のような「力」に頼った技術よりも、日本人の「動き」を重視した技術のほうが野球では効率が良いと私は信じています。それはピッチャーの球の回転数に顕著に表れています。回転数の割り合いは、日本の選手を10とすれば、アメリカは8程度です。それは力ではなく、投げる技術に違いがあると言う根拠があります。
 今の若い選手は、トレーニングに対してアメリカと同じような考え方を持っています。これからは、トレーニングをしっかりやって成功する人が指導者になりますから、日本の野球界も変わってくると思います。

 

―今年はちょっと残念な結果になりましたが、今後について課題や希望をお聞かせください。

石原 申し訳ありません(笑)。毎年、「やらならくてはいけないのに、できなかった」という反省はあります。技術が足りなかった、努力が足りなかった…。反省の上にたって、トレーニングのプログラムや健康管理などについて、言い尽くせないほど多くの考えがあります。
 私たちは試合の作戦や選手の起用に携わるわけではありませんが、選手が可能な限り良い状態で試合に臨めるようにコンディションを整えるのが役目です。トレーニングコーチ、トレーナー、チームドクターなど皆が協力し、裏方に徹してチームを支えていきたいと思っています。

 

―来シーズン、期待しています!

 

NATAとは、
「National Athletic Trainers, Association」の略語。医学的な知識をもとにベスト・コンディションを整えるプロフェッショナルにとって、最高の資格として認知されているスポーツ界のトレーナー資格。

 

石原 慎二/大阪府出身。ブリガムヤング大学卒。1993年、阪神タイガース入団。 2004年、チーフトレーナー補佐就任

石原 慎二/大阪府出身。ブリガムヤング大学卒。1993年、阪神タイガース入団。
2004年、チーフトレーナー補佐就任

 

白仁田寛和投手(背番号47番)がモデルをしてくれました

白仁田寛和投手(背番号47番)がモデルをしてくれました

 

SwimEx SX700T 写真提供:日本正規販売代理店 トランズコム(株)

SwimEx SX700T 写真提供:日本正規販売代理店 トランズコム(株)


ページのトップへ

目次 2010年12月号