桂 吉弥の今も青春 【其の九】

漫才コンテスト、その後

 

 前回、書かせてもらいましたが、年末に決勝が行われる漫才のコンテストに参加しました。同じ年齢の落語家とのコンビ。二人ともキャリアは十五年を越えてますが、漫才コンビの結成がこの十月なので参加資格のキャリア十年までという規定はクリアしています。一回戦は持ち時間が二分、そこそこお客さんの反応も良く見事合格。そして二回戦、今度は三分の持ち時間、残念ながら通過ならず。どこかでそっと応援していただいてた皆さま、ありがとうございました。
 自分たちでの分析による敗因は数々あります、ありますが、やっぱり一番は漫才のキャリアの無さでした。同じお笑いでも全然違います。その世界でどう過ごしてきたかというのが必要でした。いま考えると当たり前のことなんやけど・・・。 
 具体的に言いますと、二回戦の漫才始まって一発目の掛け合いがお客さんに受けなかった。そこで頭に血が上ったんです。カーっとなってしもたんです、久しぶりでした舞台であがってしまうのは。そこから普通ではありませんで、けったいな間の漫才のまま三分が過ぎてしまったんですねえ。舞台から降りた時に、相方の桂紅雀さんに「あかんかったなあ、ごめんな」と謝りました。
 家に帰ってきて嫁さんに説明したら、彼女が言うんです。「あんた落語で受けへんかっても平気やろ。漫才で受けへんってことに慣れてないんやて」と。えらいこと言うなあと思いました。確かに、落語では少々受けようが受けまいが最後までやりきります。最初お客さんの反応が悪くても、自分のペースでやっていけば絶対に最後には笑ってもらえます。そういうものだと思えるようになりました。それはやっぱり私の落語の年期というものがあったからでしょうね。 
 嫁さん曰く「受けないことに慣れてない」。お笑いのキャリアって、実は困難な場所でやったり、しんどいお客さん達の前でやったってことが大切なんちゃうかなあと思いましたね。そう考えたら若手の漫才師の皆さんはめちゃめちゃ困難な状況で漫才やってはります。
 我々も困難な中で落語してきたので、ちょっとのことでは驚きません、そんな中でも落語をなんとか聞いてもらうことを考えてきました。だから私は落語している時の気持ちは強い。このことに気づいただけでも今回のチャレンジは価値のあるものでした。まあ嫁さんの言葉の力も半分ありますね・・・気づかせてもろてありがとう。
 キャリアって単純にやってる年数ではなくて苦労した年数ということです。吉弥には漫才のキャリアは無かったということです。まあ一回の挑戦で止めてしまうのももったいないので、紅雀さんには話をして、来年に向けて漫才のキャリアをつんでいくか考えます。
 吉弥の落語を待っててくれる人がいてる限り、もっと落語のキャリアをつんでいこうとも思っています。
 ここからはちょっと宣伝です、私の大師匠、桂米朝のDVDが発売されました。よみうりテレビで過去に放送された「平成紅梅亭」の米朝師匠の高座を収めてあるんですが、これがすごいです。七十歳代の米朝の落語は軽くて、聞きやすくて、無駄な力が抜けてて、でもめちゃ迫力がある。びっくりしました。こんな落語を俺はできるんやろうか、また目指す目標が高く高く、遠~くになった気分です。
 落語だけではなく、米朝師匠と一門のトークや私と千原ジュニアさんとの対談もありますんで是非見てくださいませ。サンプルをいただいてビックリしました。この機会を逃すかとばかりに私しゃべっております。私はいい落語を聞くとまず感動して、自分に出来るだろうかと考えてちょっと途方にくれて、でもコツコツやることだよなと頑張る気持ちになるんです。
 今はコツコツと、やっぱり漫才よりも落語だな。

20130305201

KATSURA KICHIYA

桂 吉弥 かつら きちや
昭和46年2月25日生まれ
平成6年11月桂吉朝に入門
平成19年NHK連続テレビ小説 「ちりとてちん」徒然亭草原役で出演
現在のレギュラー番組
NHKテレビ「生活笑百科」 土曜(隔週) 12:15〜12:38
MBSテレビ「ちちんぷいぷい」 水曜 14:55〜17:44
ABCラジオ「とびだせ!夕刊探検隊」 月曜 19:00〜19:30
ABCラジオ「征平.吉弥の土曜も全開!」 土曜 10:00〜12:15
平成21年度兵庫県芸術奨励賞


ページのトップへ

目次 2010年12月号