神戸市医師会公開講座 くらしと健康 40

がんや成人病のリスクを高めるタバコ
医師と一緒に無理なく効果的な禁煙を

―喫煙にはどのようなリスクがありますか。
楠瀬 タバコが体に悪いことはご存じだと思いますが、実にさまざまな病気と関係が深いのです。タバコといえば肺がんをイメージしがちですよね。確かに肺がんの患者の8割以上が喫煙者で、肺がんになる危険率をみても喫煙者は非喫煙者の10倍以上にのぼります。しかし、喫煙は肺がんだけでなく、胃がんやすい臓がんなどのさまざまながんや急性骨髄性白血病のリスクも高めます。また、肺疾患のみならずメタボリックシンドロームにも結びつきます。高脂血症、高血圧、糖尿病などにも関係し、ひいては心筋梗塞や狭心症、脳梗塞など生命に関わる病気のリスクも高めます。さらに女性の喫煙は不妊や胎児の成長不良、産児の乳児突然死症候群を引き起こす要因にもなります。しかも、タバコは自身の健康のみならず、受動喫煙でまわりの人、特に家族の健康も害しますのでその危険は重大です。

―意思だけで禁煙できないのには、何か原因があるのでしょうか。

楠瀬 タバコにはニコチンが含まれますが、ニコチンには麻薬にも劣らない依存性を持っています。タバコによりニコチンを摂取すると脳でドーパミンが放出され、快感を味わうとともにもう一度タバコを吸いたい欲求が生まれます。そこでもう一本、もう一本…と悪循環に陥りますが、これがニコチン依存症の状態です。つまり、喫煙の習慣はニコチン依存症という「病気」ですので、治療を受けることが大切なのです。治療を受ければ無理なく禁煙することも可能です。

―治療はどのようにおこなわれますか。

楠瀬 まず問診票に応えていただき、本数、喫煙年数などからタバコへの依存の度合いなどを診ます。次に呼気中の一酸化炭素量を測定し、タバコによる有害物質をどれくらい取り込んでいるかを調べます。この値は治療のバロメーターで、禁煙すると着実に数値は下がっていきます。治療は薬を使用しますが、「貼る」「かむ」「飲む」の3つのタイプがあります。かつてはニコチンパッチを貼ったり、ニコチンガムをかんだりという治療が主でしたが、いずれもニコチンを含むものです。ニコチンはそれ自体が有害ですし、ニコチン依存症の根本的な改善には時間がかかります。そこで最近はニコチンを含まない飲み薬での治療が主流になってきています。この薬は脳内でのニコチンの作用をブロックしますので、ニコチン依存症の改善にも結びつきます。1日2回服用し、2週間ごと経過を見ながら12週間継続します。早い人では4週間くらいでタバコを吸っても味気なくなる、吸いたくなくなるなどの効果が出ますが、再び喫煙するおそれもあるのできっちり12週間続けます。しっかりと飲み続けることがポイントです。

―飲み薬による治療で、どれくらいの方が禁煙に成功しますか。

楠瀬 臨床では成功率が約6割といわれていますが、実際の治療現場での実感では8割くらい成功しているのではないでしょうか。しかし、禁煙に成功しても再び喫煙の誘惑に負けてしまう患者さんがいることも事実です。

―健康保険は適用されますか。

楠瀬 治療に対し、基本的に適用されるようになりました。
 治療における自己負担は保険適用で、薬代を含め、約1万2千〜1万8千円です。しかし、保険適用にはブリンクマン指数(1日の喫煙数×年数)が200以上などの条件があります。また、禁煙に失敗しても初診から1年以上経過しなければ保険適用されません。

―治療はどの診療科に行けばいいのでしょう。

楠瀬 一定の要件を満たした医療施設に限られますが、神戸市内では100以上の医療機関で診察をおこなっています。詳しくは医師会にお問い合わせください。タバコもこの10月から値上がりしましたので、この機会に禁煙しましょう。

20101109301

20101109201

楠瀬 直孝 先生

神戸市医師会理事・楠瀬外科医院院長


ページのトップへ

目次 2010年11月号