『僕の彼女はサイボーグ』のロケ風景 場所:旧居留地明石町筋(⑥38番館前)

連載 『神戸山手 坂ものがたり』 第三回 

映画が恋した神戸を歩く

村田 壮一さん(神戸新聞社地域活動局)

 

映画やテレビの中で、見慣れた神戸の街が現れてびっくりしたことはありませんか。自分はその場所を「知ってるだけ」だとしても何かうれしく誇らしくて、それを人に伝えたくなったりしませんか。

 スクリーンの中の街は、俳優とともに演技をしているようにも見えます。ラブストーリーではロマンチックに、アクションシーンでは迫力満点に…。もちろん監督の演出やカメラマンの技あればこそですが、もともと街に魅力がなければロケ地には選ばれなかったはずです。
 そんな「神戸の魅力」を探しに外を歩くのはいかがでしょう。神戸ロケの誘致・支援活動をしている神戸フィルムオフィスが、設立10周年を記念して「神戸シネマップ」という冊子を作成しました。これから、冊子にある「旧居留地〜南京町コース」をたどってみたいと思います。作品にまつわる話もあるので、時々横道にそれてしまうかもしれませんが、どうかゴールまでお付き合いください。
 三宮駅をスタートしてまず紹介したいのがフラワーロード①。映画「陽気なギャングが地球を回す」(大沢たかお主演、2006年)に防犯パレードの場面があります。そこで市長役の俳優がオープンカーに乗って登場する部分は、なんと神戸まつりの本物のパレードの中で撮影しました。大通りを交通規制してのロケは難しく、それならいっそ…という苦肉の策でもありました。
 東遊園地②でロケをしたのは、阪神・淡路大震災をテーマにしたテレビドラマが反響を呼び、11月20日から映画として公開される「その街のこども」。神戸出身の佐藤江梨子が演じる美夏が「1.17のつどい」に参加するシーンです。
 続く旧居留地は、レトロな建物に高級ブランド店などが入る市内でも指折りのロケ地です。北野武監督の最新作「アウトレイジ」(2010年)では、高砂ビル③が組事務所として使われました。
 「僕の彼女はサイボーグ」(2008年)は、ロケの大半を神戸で行い、その様子が話題になりました。おしゃれな旧居留地の良さを再発見させてくれる作品でもあります。
 浪花町筋のブティック前④には、ジロー(小出恵介)の気を引くそぶりの「彼女」(綾瀬はるか)がもたれかかる街灯があります。このカットがどの街灯で撮られたか、ロケ地を示すフィルムオフィスのステッカーが貼ってありますので探してみてください(12月28日まで貼っています)。
 ジローの誕生日を2人で祝うレストランは十五番館⑤38番館前の交差点⑥では、ボディースーツ姿の彼女が未来から現在に舞い降りるシーンをカークラッシュを含めて撮影しました。大丸神戸店⑦は、彼女がお気に入りのワンピースを見つけるデパートとして使われました。
 ここで「―サイボーグ」の話題をいくつか。十五番館は実際にレストランとして営業していますが、映画に登場したのは外観のみ。内部の撮影には広いスペースが必要だったため、旧神戸工業高校の体育館内にセットが作られました。撮影後、セットはすぐに撤去され、代わりにジローの自宅のセットを外観も含めて設置。自宅から見える夜景は諏訪山の高台から撮って、カットを組み合わせました。また、時空を超えて移動する彼女の、未来のシーンで使われたのが兵庫県公館⑧。風格ある明治建築が架空の世界にリアリティーを持たせました。
 さてコースに戻って、さらに西の南京町⑨へ。雅苑酒家本店は、韓国テレビドラマ「スターの恋人」(2008年)でマリ(チェ・ジウ)らが食事を終えて龍舞が練り歩く街に出るシーンで登場。映画「新宿インシデント」(2009年)では九龍街で、鉄頭(ジャッキー・チェン)が、チンピラに絡まれた女性を助ける場面が撮影されました。
 「新宿インシデント」はタイトル通り新宿・歌舞伎町が舞台の映画です。しかし日本一の繁華街である歌舞伎町での撮影は難しく、ほかを探していたイー・トンシン監督が、中華街や港がある神戸にひとめぼれ。歌舞伎町という設定の撮影は、師走の東門街⑩のクラブや路地で行われました。
 「旧居留地〜南京町コース」の紹介はこれで終わりです。「神戸シネマップ」のほかのコースには、「GANTZ」(2011年1月公開、続編は同年春公開)で二宮和也や松山ケンイチが戦闘シーンを演じた神戸市中央卸売市場本場、「クローズZERO」(2007年)で小栗旬など100人の高校生役が、決闘を前に大雨の中を歩いた長田区・二葉三四商店街などが盛り込まれています。おすすめは映画やDVDを見てから街歩きをすること。冊子を片手にぜひどうぞ。
     ◇    ◇
 神戸フィルムオフィスがロケを実現した商業映画は10年で38本。テレビなどを含めると1600件以上もあります。そのことを、地元の人たちはどう感じているのでしょうか。
 9月30日から10月5日まで三宮・さんちかホールで開いた「映画が恋したKOBE展」(同オフィス、神戸新聞社主催)は、数々の作品を通してオフィスの活動を紹介するものでした。「―サイボーグ」で綾瀬はるかが着たワンピースやボディースーツのほか、各作品の台本、絵コンテ、ロケ写真、メイキング映像、さらに幅7メートルのロケ地紹介マップなどを展示。約6200人もの方々に見ていただきました。
 スタッフの一員として準備、運営に関わった私にとってうれしかったのは、映画ファンに負けない「神戸好き」の人々の思いの熱さです。畳3枚分もある寄せ書きコーナーには「生まれて18年間、神戸に住んでいてよかった。自慢できる町です」「神戸の町がたくさんの人たちの心に残っていくことがとても幸せです」という声がぎっしり。女性2人組が「ここ、神戸で撮った映画を展示してるんだよ」と話しながら会場に入ってくださる風景にも出会いました。
 海も山もあり、和洋中の趣があり、流行に敏感な街や気安い下町がある神戸。この街で映画が作られるたびに、人々が自分のことのように口伝えで広げ、街はもっと華やかに元気になる…。それが本当の街の魅力なのかもしれません。

⑤十五番館

⑤十五番館

⑧兵庫県公館

⑧兵庫県公館

⑨南京町

⑨南京町

※冊子「神戸シネマップ」の内容とは一部異なります

※冊子「神戸シネマップ」の内容とは一部異なります

「映画が恋したKOBE展」

「映画が恋したKOBE展」

神戸シネマップ

神戸で撮影された主な映画やテレビドラマのロケ地が一目でわかる「神戸シネマップ」。市内の観光案内所や地下鉄駅などで配布しています。詳しいマップが載っていますので、ぜひ作品を見た後、ロケ地巡りを楽しんでください。詳しくは、神戸フィルムオフィスのホームページ(http://kobefilm.jp)をご覧ください。

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目次 2010年11月号