神戸のカクシボタン 第七回

文 / 岡 力 写真/六楽嶋泰正

「偉大なる書斎を前にして」

2012年に亡くなった直木賞作家・藤本義一先生。
今年4月、芦屋市奥池にある別荘敷地内に「藤本義一の書斎」が完成した。1981年、周囲の景観を気に入り山荘をイメージして建設された別荘。大好きだったゴッホの「黄色い家」を模した棟跡地に今回ギャラリーが増築された。年始や夏になると気心知れた友人が集い語らった想い出の場所。多くの事を学び吸収して帰るこの地を仲間内では、「バキューム共和国」と呼ぶようになった。
「書物などの資料は、放っておくと散る」と生前より記念館の設立を計画。ガラス張りの緑に囲まれた展示スペースには、愛用品を始め多くの原稿を執筆した机が再現されている。ズドーンと天井までぎっしりの本棚。大英博物館をイメージした図書スペースには、著書や資料となった出版物2千冊が並んでいる。数多く手掛けたドラマの台本。ガリ版刷りのそれらを放送局別に精査し紺色(NHK)・赤色(読売)・灰色(関西)・緑色(朝日)・黄土色(毎日)といった具合にハードカバー装丁が施されている。
夫人の藤本統紀子さんにお話を伺った。「最近、電子書籍が流行っていますが多くの書籍に触れ読んだ時の情景がいつまでも記憶に残る活字の良さを知ってほしいです」。帰りがけに購入したポストカードには、「蟻一匹炎天下」の書。暑い夏、その言葉を胸に刻み関西で孤軍奮闘したい。

手にとって閲覧できる図書スペース

手にとって閲覧できる図書スペース

藤本統紀子さん、次女の藤本芽子さん

藤本統紀子さん、次女の藤本芽子さん

20140705902

20140705903

20140705904

■藤本義一の書斎 Giichi Gallery

兵庫県芦屋市奥池11-10
【営】土曜・日曜 11:00〜16:00 入場無料
  ※展示期間は、4月〜10月まで
■アクセス
●阪急バス 芦屋有馬線 
 阪急芦屋川駅、JR芦屋駅、阪神芦屋駅より
 有馬行または芦屋ハイランド行き乗車
 「奥池」下車 徒歩5分

■岡力(おか りき)コラムニスト

ふるさとが神戸市垂水区。著書「アホと呼ばれた’80S」「噂の内股シェフ」「関西トラウマ図鑑」連載「大阪ロマン紀行」(大阪日日新聞)「ハコの十八番」(Whole Earth Magazine Fm Cocolo)
出演「おちゃのこSaiSai」(J:COMチャンネル)


ページのトップへ

目次 2014年7月号