~西宮文化を創造する~

白鷹株式会社 取締役副社長
白鷹禄水苑総合プロデューサー
辰馬 朱滿子さん

地元文化を応援する灘五郷の蔵元たち

―白鷹禄水苑とは。
辰馬 昔から灘五郷では蔵元の当主が学校や文化施設をつくり、地元文化を応援するという伝統がありました。企業の宣伝のためではなく、あくまでも個人としてです。甲陽学院も辰馬本家酒造十三代目が設立し、私の祖父も理事長を務めたことがあります。今でも、各蔵元さんではそれぞれ文化活動に務めておられます。先代もそういった思いがあり、禄水苑の建物を私財を投じて造りました。資料館・製品販売・カルチャー発信の機能を持つ建物です。個人での運営は難しい時代ですから、地域密着型の文化施設として白鷹㈱が運営しています。
―どういう形で文化を応援しているのですか。また地元の反応は。
辰馬 西宮は戦災、震災に遭い、酒蔵地域を中心にした酒の街としての面影を全く失ってしまいました。まずは、昔からの酒造りにまつわる文化を発信していきたいと思っています。また西宮の重要なアイデンティティーの一つに伝統芸能があります。氏神様でもある西宮神社周辺は傀儡師発祥の地であり、門前町として栄え多くの芸能者が集まった場所です。〝酒づくりと伝統芸能の街〟を関連づけて発信したいという思いがあります。そこで、様々な文化イベントや講座を開催しています。正直、万人受けするとは言い難いものが多いのですが、地元の皆さんには非常に興味を持っていただいています。伝統的に文化レベルの高い地域であること、市民の皆さんの意識の高さを改めて感じています。
―特に力を入れているのは。
辰馬 ここ数年、秋には能と文楽の公演を定期的に開催しています。2012年のテーマは、能・文楽・講談で綴る「平家物語」。9月に第一部の能・講談編、10月に第二部の文楽編を続けて開催しました。一つのテーマで1枚の広報チラシという初めての試みでしたが、第一部、第二部どちらも来ていただく方もあり、リピーターや初めての方などで大変盛況でした。現在、今年のテーマを検討中です。

〝旬のお酒〟をご提案します

―さて本業の酒づくりですが、白鷹の清酒は全国で唯一の伊勢神宮御料酒だそうですね。
辰馬 大正13年から伊勢神宮へ御料酒を納めさせていただいています。特にご縁があったわけでも、もちろん営業活動をしたわけでもないんですよ(笑)。創業150年の白鷹は、本家にあたる白鹿(辰馬本家酒造)を始め300年以上の歴史を持つ造り酒屋が並ぶこの地域ではまだ歴史は浅いほうですが、分家当時から初代が、原料から製造方法まで超一流へのこだわりを持って造ってきた清酒です。それを含めて評価していただいたのではないでしょうか。
―和洋中どんなお料理にも合う食中酒の白鷹ですが、特にお勧めは。
辰馬 白鷹は、しっかりした飲みごたえのあるお酒を中心に造っていますので、食中酒として向いていると思います。その中でも、禄水苑では特に季節ごとに合う〝旬のお酒〟をご提案するようにしています。年始年末にお勧めしているのは「生もと純米吟醸 樽酒」。樽の香りが上品で、お食事の邪魔をせず、なお且つ飲みごたえのある純米吟醸酒です。これからの季節、特に立春前後は「寒造りのしぼりたて新酒」が美味しい季節です。燗をするなら、米を磨き過ぎず旨みをしっかり残した「生もと純米 極旨口」。温めても甘く感じず、しっかりした旨みがあります。

〝酒づくりと伝統文化の街〟のこれから

―香櫨園にお住まいということですが、ご自身のこの街への思いは。
辰馬 時間がゆったりと流れ、自然がとても豊か。私も大学4年間を東京で過ごすことがなければ、当たり前過ぎて気づかなかったと思います。その一方で、阪神間の特徴でもあるのですが、特に夙川近辺では阪急、阪神、JRと徒歩圏内に駅があり利便性の良さも抜群です。また、私設の美術館など、文化施設も多く、生活の延長上に文化がある街だと思います。
―これからの禄水苑は。
辰馬 私の中には震災前の酒蔵地域の風景や生まれ育った家が記憶として残っています。禄水苑内の暮らしの展示室や白鷹集古館に展示している品々は、さらに時代を遡るものですが、まさしく私の先祖が実際に使用し、関わってきたものだと思うと、ひとしおの愛着とともに、それらを通して当時の人々の様子がよみがえります。私はこの仕事に携わり、先祖がどのようにこの地域に関わってきたかを知ることにより、更に地域への愛着が深くなりました。目に見えるものは無くなっても、それを思い起こし、語り継いでゆくことが大切だと思います。昔から住んでいる方も、新たに移り住まれる若い方も、積極的にその地域の文化や歴史に触れ、「知る」ことを通してより愛着が深まるでしょう。そこに生まれる世代を超えた文化交流が地域の活性化につながるのではないでしょうか。
禄水苑からの情報発信を通して微力ながら貢献してゆきたいと思っています。

日本酒の"新しい楽しみ方"を紹介するショップ「美禄市」

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袋しぼり生もと純米吟醸 直汲み生原酒 「あらばしり」

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生もと純米吟醸 「樽酒」

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御遷宮を記念したミニ菰樽

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戦前の造り酒屋の暮らしぶりを伝える「暮らしの展示室」

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四季折々に彩りを変える庭園

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江戸末期から昭和初期にいたる蔵元の生活道具を再現展示

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辰馬 朱滿子(たつうま すみこ)

白鷹株式会社取締役副社長 白鷹禄水苑総合プロデューサー
灘の清酒「白鷹」の蔵元四代、辰馬寛男の長女で、西宮生まれ。聖心女子大学美術史学科卒。父が2001年に「灘酒文化の発信地」として私財を投じて設立した「白鷹禄水苑」の構想から参画、その文化施設としての運営に携わる。一方、国指定重要文化財23点を含む辰馬家歴代当主の蒐集品を収蔵する(公財)辰馬考古資料館の企画・運営にもあたり、同館の理事長もつとめる。

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西宮市鞍掛町5-1
TEL.0798-39-0235
FAX.0798-39-0236
info@hakutaka-shop.jp
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