桂 吉弥の今も青春 【其の二十九】

おこられる話 おこる話

私はよく怒られた。親から、朝早く起きなさい、ちゃんと片付けをしなさい、宿題出来たんかと皆さんも経験している叱られ方。テレビが大好きだった小学生一年生の時には親がかかりつけの小児科医に相談し、その先生から「そんなに毎日毎日テレビばっかり見てるんやったら、竜作(本名)の目にテレビはめたろか」という強烈な一言もくらった。その時のことを先生は長年覚えておられ、目にはめんでもテレビに出るようになりよったなあと笑っていたそうである。
三年生の頃は人としゃべりたくてしゃべりたくて、授業中もずっとしゃべっていたもんやから一番前に強制的に席替えされて、それでもペラペラしゃべってたら先生がうちの親を呼び出し「竜作君は私の手に負えません。とんでもない人物になるか、人生の落伍者になるでしょう」と告げたそうな。もちろん私は両親から「授業はちゃんと聴かなあかん」とこっぴどくしぼられた。そして私は落伍者ではなく落語家になりました。
だから叱られるとホッとする。ホッとするというのは変かもしれないが注意されると落ち着くのだ。反対にほめられるとお尻の辺りがこそばい感じがして落ち着かない。だからどんな良い落語をやったと自分では思っていても、先輩や師匠方からまだまだやなあと指摘を受ける落語界は私に合ってるのかもしれない。もちろん一番厳しいお客さんの目がずっと光っているし。
「この頃よう出てまんな、頑張ってはるわー吉弥さんめちゃめちゃ忙しいでっしゃろ」とよくお声をかけていただくが、返事のしようがなくて困る。「おおきに!」と一言言うてニコッと笑えばええんやろうけど。やはりほめられるのは嬉しいものの恥ずかしい。

自分の話が長くなったが、いま私は怒ってる。私みたいな怒られるのがイイと思ってるヤツが怒るのだ。日本の大事なことをやらなければならない国会議員に怒ってる。国会議員は選挙で落ちることもある、ほんとに悪いのは官僚だとか組織だ、それもそうだが近頃の国会はひどい。
小学校で習う、国会とは国の唯一の立法機関である。立法府だ法律を作ってナンボだ。この原稿を書いている九月十日、先日終わった第百八十回国会でセンセたちはいったい何をやっていたのであろうか。大事な法案の審議もせずに権力争いに派閥抗争、結局自分たちがいかに国会議員のセンセという権力を保持し続けるかということしか考えていないように見える。そして民主党と自民党の代表選挙、もう結果は出ているだろうが魅力の無い候補者ばかり。それでもマスコミに顔を出しては世論調査の自分の評価にコメントしたりしている。
まずは謝るべきじゃないか。国会がこういう状態になっていることを。日本が近隣の国からああいう態度をとられることを。与党が悪いからじゃない、野党も駄目だからこうなっているのだということをセンセ達は分かっているのか。落語家でも分かりますよ。

このままでは将来こんな怒られ方があるかもしれない。
「こら!あんたいつまで寝てるんや、バイトに行かなあかんやろ。辞めた?なんで?店長と考えが合いませんでした、またそれや。偉そうな理屈ばっかりならべて。仕事もせんとぶらぶらぶらぶらして借金だけ増やして、返すあても無いのによう借りるな。え、将来の子どもに払うてもらう?アホなこと言いな、あんたまだ結婚もしてないやないか。それから、けんちゃんとの約束破ったらしいな。仕事があかんでも人としてはちゃんとしてて。口では偉そうなこと言うて出来へんことなら約束せんとき。最後には友達が一人もおらんようになるよ。もうお母さん情けないわ、なんで二十歳越えた息子にこんなこと言わなあかんのよ。もう・・・あんた・・・そんなことやってたらしまいには、国会議員にしかなられへんで!」

20121003201

KATSURA KICHIYA
桂 吉弥 かつら きちや

昭和46年2月25日生まれ
平成6年11月桂吉朝に入門
平成19年NHK連続テレビ小説
「ちりとてちん」徒然亭草原役で出演
現在のレギュラー番組
NHKテレビ「生活笑百科」
土曜(隔週) 12:15〜12:38
MBSテレビ「ちちんぷいぷい」
水曜 14:55〜17:44
ABCラジオ「とびだせ!夕刊探検隊」
月曜 19:00〜19:30
ABCラジオ「征平.吉弥の土曜も全開!」
土曜 10:00〜12:15
平成21年度兵庫県芸術奨励賞


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目次 2012年10月号