精一杯のパフォーマンスで、大型客船を出迎える消防艇。その大小の取り合わせがまた面白い。

ボイジャー・オブ・ザ・シーズ 神戸港に入港した過去最大の大型客船! Voyager of the Seas

文・写真 上川庄二郎

【神戸港に過去最大の客船がやって来た!】

 ザーンダムが来た時、「平成の黒船(クルーズ船)がやって来る!」として〝太平の眠りを覚ます上喜撰たった四杯で夜も眠れず〟と本誌3月号に書いた。まさにそんな雰囲気だった。
 今度は、アジアのクルーズ大国を目指す中国が、世界最大規模のアメリカのクルーズ船社と組んで、上海、天津をマザーポートに日本にやってくる。
 しかもそれが並みの船ではない。14万t近くもある大型船。乗客定員も桁外れの3840人。横浜発着クルーズも船こそ違え既に催行されている。
 我々が平素見ていて、大きいなあ! と言っている飛鳥Ⅱにして精々5万t、乗客定員も凡そ800人、月とすっぽんほどの違いである。世界には、まだまだこれより大きな20万tを超えるクルーズ船がざらざらある。

【その船の名は、ボイジャー・オブ・ザ・シーズ】

 船の大型化と乗組員の合理化で価格を引き下げ、マス(大衆)向けクルーズで乗り込んできた。いよいよクルーズの世界でもLCC台風がやって来たのである。それでも日本の船社は、ラグジャリー(最高級)指向を捨て切れない。
 さて、日本の港も、これだけ大量の乗船客を、CIQを含め、一度に捌く能力があるのか。船長が記者会見で言ったひと言「イミグレーションをもう少し要領よくやってもらえれば、乗船客はもっと早く下船でき観光できるのだが… シンガポールやマレーシアは手際よくやってくれている」に、胸を突かれた思いがしたものである。神戸港にとっても大きな試練が待っている。

【新聞はそんなことは書かず、褒めそやすばかり】

ところが新聞はそんな機微に触れるようなことは書かない。ただただ賞賛する記事ばかり。
 曰く、娯楽性を重視し、船内はカフェや高級ブティックなどが軒を連ねる長さ約120mの巨大アーケードのほか、劇場やアイススケートリンク、ロッククライミングの壁面もある、と褒めそやす。

【中国人はお金持ち?】

この船は、確かにアミューズメントシップではあるが、本質的にはマス(大衆)向けのクルーズ船でもある。したがって、今回も中国の富裕層ばかりが乗ってきた訳ではない。むしろ安い料金で一週間程度のクルーズを楽しみ、日本にやって来た人たちの方が多い。そんなことから、電化製品や宝石類の売れ行きはいまいちだったと聞く。

【受け入れ態勢の検討が必要だ!】

 訪日客は、今や圧倒的にアジアである。韓国、台湾、中国、香港で400万人、その他アメリカ、ヨーロッパの国々合せて200万人(2009年)。これからも中国からの訪日客が伸びることは確実である。
 これまで来日した欧米系のクルーズ船と違い、大量の中国人乗船客をどのようにして受け入れてゆくのか。かつて経験したことの無い問題を提起していったと云えよう。
 上海発着のクルーズ船で、大量の中国人が日本にやってくる目的は何か、よくよく考えて今後の対応策を立てる必要がありそうだ。
 端的には言葉の問題。それに通貨(クレジットカード=銀聯)の問題。次いで彼らが目的としている日本のスーベニールは何なのか? これらの課題は、金融界と流通業界に知恵を出してもらうしかない。観光立国・ビジットジャパンを目指すうえでも必要かつ必須条件と云えよう。
 これらをうまくビジネスにつなげてゆくとともに、来日した中国人にも満足して帰ってもらわなくてはリピートどころではない。このことを肝に銘じて真摯に取り組んで欲しいものである。
(2012年9月号)

船内中央部を吹抜けにして巨大なアーケードを造っている。

船内中央部を吹抜けにして巨大なアーケードを造っている。

アイススケートリンクを持つ船はそうざらにはないという。

アイススケートリンクを持つ船はそうざらにはないという。

船の中央部には、劇場やカジノが配備されている。

船の中央部には、劇場やカジノが配備されている。

三層部分をを吹抜けにしたメインダイニング。一度に1900人が食事できる。それでも二回交替制だ。

三層部分をを吹抜けにしたメインダイニング。一度に1900人が食事できる。
それでも二回交替制だ。


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